第207話シュワシュワ雑談配信5

「コラボカフェ! いいねそれ! メニューとかどんなの出るだろ? 各ライバーに対応したものが出るとしたら……還ちゃんがお子様ランチとか? そんでエーライちゃんは……フグの刺身? いや、カツ丼か?」


コメント

:カツ丼は草、捕まってんじゃねーか、

:気持ちよくなれるサラダとかでしょ

:お脱法ハーブ生えますわ

:還ちゃんは一周回ってお子様ランチに馬刺しとか入れてきそう

:シュワちゃんはストゼロで間違いなし

:ストゼロで煮込んだストゼロとストゼロのストゼロ和え、ストゼロ風~春めくストゼロにストゼロの香りとストゼロを添えて~

:シュワちゃんがストゼロを添えるだけで満足するはずがないので、ストゼロ"に"添えて の間違いだな(錯乱)

:それはコラボ先を間違えてないか……?

:ストゼロ以外ならゲロしか思い浮かばん

:食品衛生法違反不可避

:厨房にいるシュワちゃんが注文が入るたびに吐くぞ

:3日で死にそう

:光ちゃんは激辛とか? 

:ほとんどのメンバーが食品なのか怪しいもの出てきそうで草  


「いいねぇ、なんだか最近ライブオンの規模の膨れ方を見るにありえなそうな話じゃないって思えてくるからすごいところまで来たなって思うよ。あっ、そうそう聞いて! この前私がコンビニで買い物してた時にライブオンの話をしてる人たちを見たんだよ!」


コメント

:おお!

:その人たちが羨ましい……

:一緒の空気吸ってみたい

:その人たちもまさか本人がいるとは思わなかっただろうな

:なんて話してた?


「男の人二人組でね、最近好きなVの話してて、片方の人が『お前ライブオンって知ってる? 最近ハマってんだよね』って言ったらもう片方の人が『あっひゃっひゃ! お前マジかよあっひゃっひゃ! ライブオンとかあっひゃっひゃ! まぁ俺も見てるけどおほーーー( ◜ω◝ )』ってサルみたいに爆笑したんだよね。危うく殴り掛かるところだったど」


コメント

:この流れでまさかのマイナス?の話なのかwww

:あっひゃっひゃ!(煽り)

:おほー言ってるってことは笑ってる方シュワちゃん推し説ありそう

:見てるやつが『とか』呼びする箱

:世間からのライブオンのイメージが分かるwww

:あわちゃんバレなかった?


「バレはしなかったよ、変装してたから! そもそも二人とも会計中だったから私の方向すら向かずにコンビニ出ていったしね。でもさ! あっひゃっひゃはないでしょー!? ライブオンの面々見てみなよ! 皆かわいいでしょうが! 癒されるよねとか応援したくなるよねとかどちゃシコだよねとかあるでしょうよ!」


コメント

:あっひゃっひゃはだめでどちゃシコはいいのか(困惑)

:シュワちゃんにとっては最上級の褒め言葉だから

:どちゃシコとかあっひゃっひゃ! ¥50000

:草

:草生えたけど俺も誰かとライブオンの話するときこんなノリだったかも

:かわいさを犠牲にしてるのは君たちの方なんやで……

:かわいければなにをしても許される説の限界に挑戦してる女


「もう、これからは皆外でライブオンの話するときは褒めたたえるんだよ、分かった? ……あははっ!」


 ほぼほぼ冗談とはいえ不満げに話をしていたはずが、最後の最後で私まで笑ってしまった。

 やはり人はなんだかんだ誰かとの繋がりを感じたときに幸せを感じる生き物だと思う。

 雑談はリスナーさんとの会話による繋がりが最も感じられる配信スタイルだ。話している内に自然とこちらも楽しくなってきてしまう。

 そのこと自体は話も弾むため良いことなのだが――でも、ことこの瞬間に関しては、楽しくなりすぎて油断してしまったかもしれない。

 それは、配信も終わり間近に差し掛かり、有素ちゃんがこの前配信内でご家族の衝撃エピソード集を紹介したという話題について話していた時のことだった。

 丁度コメント欄に有素ちゃんも居たため話題自体は盛り上がったのだが――


「やっぱりあのお泊りの時ですら片鱗でしかなかったんだね……えっとなになに、シュワちゃんの家族はどんな人? ――あっ」


 普段は申し訳ないと思いながらも絶対に拾わないコメントを――私は盛り上がった勢いのままに拾ってしまった。

 一瞬にして脳内が真っ白になり、酔いが急激に冷めていく。


「あー……まぁそうだなぁ、うーん…………えー……あっ! もう配信も終わりの時間だね! この話はまた機会があったらね! えーそれじゃあ皆今日もありがとう! バイバーイまたねー!」


 結局私は数秒どもった後、配信時間を言い訳にして強引な流れで話を配信ごと終わらせた。

 ……………………。


「うがあああぁぁぁーー!! なにをやっているんだ私はーーー!!」


 そして数秒の虚無の時間の後、頭を抱えて椅子から床に崩れ落ちた。


「なんで拾っちゃうの私!? てかせっかくリスナーさんが書いてくれた質問なんだから拾ったんならそれはそれで喋れよ! 喋れないにしてももっといいやり方あっただろ! もうそこそこ配信者長いんだぞ! あーーーーもうほんとばか!!」


 強烈な自己嫌悪に襲われる。最近は配信でライブオンらしい放送事故はあっても失敗したと感じることはなかったので尚更である。

 明確になにか事件が起こったわけではない為、流石に今のが原因になってSNSで騒がれるようなことは起きないだろうが、それでも自分にとってはトラウマレベルの失態だった。


「しっかりしろ!」


 両手で自分の頬を叩き、気合いを入れ直す。うん、もう二度と同じミスはしない!

 そう誓い目を閉じて上がった心拍数を落ち着けていると、やがて時間と共に胸中に吹き荒れた嵐は止んでいった。

 それでも――


「家族かぁ……家族って、一体なんだろうなぁ……」


 胸中の空を覆った雨雲が完全に過ぎ去るまでは、もうしばしの時間が必要そうだった。

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