第197話祭屋光の暴走5
「というわけなのよ。淡雪ちゃん、どう責任取るの?」
「え、これ私のせいなんですか!? 頑張って勉強までしてマッサージしてあげたのに!?」
「そうだそうだ! 淡雪ちゃんは悪くないぞー!」
非難の目を向けてくるちゃみちゃんから私を庇うように、光ちゃんがその視線を遮る位置まで移動する。
「光ちゃん……そうですよね! これは私不可抗力でしたよね!」
「うん! 心配しないで、淡雪ちゃんは光が守る! ちゃみちゃんの冷たい視線は光のものだ!」
「……ん?」
「さぁちゃみちゃん! もっと通学路の途中に地面に横たわるセミ爆弾を発見したときみたいな迷惑そうな目で光を見てくれ!」
「ごめんね光ちゃん……本当にごめんね……」
「あ、あれ? なんで淡雪ちゃん泣いてるの?」
改めてドMを楽しむ光ちゃんを目の当たりにして自分でも分かった。これはもう不可抗力とか関係ない、私の責任だ……というか、責任逃れしようとしても罪悪感でできない。
「落ち着いて淡雪ちゃん。私もね、怒っているわけじゃないの」
「そ、そうなんですかちゃみちゃん?」
「光ちゃん本人が楽しそうならそれが全てじゃないかしら? というか、私もなにか言える立場じゃないというか……最近暴走気味だったし」
「ちゃ、ちゃみちゃん! ありがとう!」
すごい! 同期をドMに調教した変態に対してなにも言えない人がこの世に存在するんだ!
感謝の裏側で一瞬そう思う私もいたが、立場が逆になった場合、多分私もなにも言えないので口にすることはやめた……。
「そう! 光ね! 今すっごく楽しいし体も楽なの! いつもは一日中なにかしてないと落ち着かないんだけど、淡雪ちゃんにマッサージされた日は物凄い満足感があって、自分でもびっくりするくらいぐっすり寝られたんだよね!」
「ふはははは! どうですかちゃみちゃん! これが天才マッサージ師淡雪の実力ですよ!」
「急に調子に乗り始めたわね……あと貴方は天才マッサージ師じゃなくて天才サディストよ」
「さ、サディストちゃうわい! 別に私光ちゃんを踏んで喜んでたわけではないですからね!?」
「え、そうなの? 私てっきり今度は足でも舐めさせてやろうかとか計画しているのかと思っていたわ」
「計画してるわけないでしょ!? そんなことしたら光ちゃんのファーストキスが私の足になっちゃうじゃないですか!」
「ふあぁぁん!?(ビクンビクン!)」
「こら淡雪ちゃん! そんなこと言ったから光ちゃんが喜んじゃったでしょうが!」
「えええぇぇ!? 今のどこにそんな要素が!? 事実を言っただけでしょ!?」
「今のが無意識……冗談のつもりだったけど、淡雪ちゃんは本当に天才サディストなのかもしれないわね」
「いやいや、私にそんな趣味はないですから……」
ほんと、あのマッサージも偶然のものであって、私にそんなS要素を期待されても困るんだけど……。
「それにしても、配信に復帰した光ちゃんが今から恐ろしいわね……淡雪ちゃんがたまに罵倒でもして満足させてあげてね」
「なに私に全投げしようとしているんですか? ちゃみちゃんも一緒ですよ! 同期の絆、見せつけてやりましょう!」
「罵倒! 罵倒良いね! やってやって! というか今やって!」
罵倒というワードに食いついてきた光ちゃんを見て、どうしようかとちゃみちゃんと目を合わせる。
正直同期に罵倒とか心が痛いのだが……そんなにサンタさんを待つ子供のようなキラキラと期待した目をされては断るのもきつい……。
「ちゃ、ちゃみちゃんからどうぞ!」
「ええぇ!? なんで私!?」
「ほら! 罵倒って言いだしたのはちゃみちゃんなんですから!」
「そんな、私罵倒なんてしたことない……えっと、えっと、」
「カモンちゃみちゃん!(ワクワク)」
「ひ、光ちゃんの……ば、ばぁーか!」
「小学生かな?」
もはや罵倒とも言えないレベルだったちゃみちゃんにツッコミを入れてしまう。
全く、これじゃあ光ちゃんもがっかりだよ。
「はぁ……はぁ……!」
「あれ? でも意外とよかったみたいよ?」
「まじかよ、コスパの良いドMだな」
それでいいのか光ちゃん……根が純真なうえにまだドMになりたてだからかな、かなり低レベルな罵倒でも喜んでくれるようだ。
「ほ、ほら! 次は淡雪ちゃんの番よ!」
「淡雪ちゃんから罵倒……はぁ……はぁ……!(ワクワク)」
「あー、ええっと、そうですねぇ……」
必死に頭を回転させる――のだが。
やばい、なにも思いつかない!
というか善良の塊みたいな存在である光ちゃんを罵倒するなんて私の良心が痛む!
なんかさ、偏見かもしれないけど普通ドMキャラってなにか罵倒されるに値する欠点とかを持っているものじゃないの? なんでこんないい子がドMになっちゃったの!!
どうしよう……あっ、もうこれでいいや!
「光ちゃんの……へ、変態!」
「あら、変態がなにか言ってるわ」
「って変態が言ってますね」
「はあああぁぁぁーーッッッ!!(ビクンビクン!)」
結局その日は罵倒にハマった光ちゃんのお願いで、一日中罵倒に付き合うことになり、罵倒される側は喜ぶのにする側は精神が擦り減るという謎の時間を体験したのだった。
ちなみにその日の夜、今日のことをましろんに報告したら、
「なんであわちゃんはライブオンのライバーを事あるごとに堕天させるの? あわちゃんキュ〇べぇなの? 僕たちは魔法少女でも魔女でもないんだよ?」
と呆れられてしまった。全部偶然なのに!
……あっ、光ちゃんかたったー更新してる。大事なことじゃないとSNSはダメってなってるはずだけど、どうかしたのかな?
祭屋光@ライブオン三期生
今日は一日中淡雪ちゃんとちゃみちゃんに罵倒されて超超超楽しかった!
「いやあああああぁぁぁぁそれは言っちゃらめえええぇぇぇ!!!!」
その後、急遽ちゃみちゃんと枠を取り、リスナーさんにもなにがあったかを説明して誤解は解けたが、『喉の壊した同期を一日中罵倒したド畜生』と弄られることになったのだった……。
なんで最後に私とちゃみちゃんまで罵倒されてるの!?
【あとがき】
次回、1周年と1ヵ月記念コラボで光が復帰します。
そこで、復帰を祝うコメントがズラーって流れるのをやりたいので、よろしければ応援コメントの方で復帰を祝うコメントの提供にご協力いただけるとありがたいです。
おかえりなどは勿論、ネタに吹っ切れているものなどなんでも大歓迎です。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます