第171話ライブオンオールスターコラボ・監禁人狼4

一回目の議論パートからしばらく経ったのだが、今のところ穏やかにゲームは進行していた。

途中人狼側からの妨害で何度か孤立するメンバーが出るシーンもあったが、基本的には私、光ちゃん、有素ちゃんの3人で変わらず固まって行動し、未だにこのチームに死者は出ていない。

脱出ゲージも調子よく溜まっており、これなら全滅前にゲージが溜まって勝っちゃうんじゃないか? そう思ったとき、再び画面表示されるは『緊急議論』の赤い文字。

画面が切り替わり、再び話し合いが始まる。

今回の被害者は――


【山谷還・死亡】【昼寝ネコマ・死亡】


この2人だ――。


「これは……一気にやられたね」


一回目の議論の時に比べ、ましろんの声にも緊迫感がある。

私たちから見ると穏やかそうに思えていたゲームプレイの裏では、2人も知らないうちに殺されていたのだ、ゲームだと分かっていても背筋がぞっとしてしまう。


「……もうこんなところに居られるか! 聖様は逃げるぞ!」

「僕も気持ちは分からなくはないですけど、露骨なフラグ立てるのやめてもらっていいですか聖様?」

「うるさい! さぁシオン、一緒に国外へ逃げよう!」

「聖……えへへ、なんかそれって新婚旅行みたいだね! でも、この状況でどうやって?」

「それは勿論――コントラバスケースさ!」

「スーパーエコノミークラスだね! でも聖と一緒なら悪くないかも!」

「聖様はコントラバスケース以外の移動手段を知らないんですか? ちゃんとお金払って行ってください。あとシオン先輩、色ボケするのやめてもらっていいですか? 減ってきたとはいえこの人数を僕一人で捌くのは無理があるんですよ」


全くこのカップルコンビは……ましろんに苦労を掛けて困ったやつらだぜ。

仕方ない、このシュワちゃんがましろんのツッコミに加勢してやるかな。


「ねぇねぇましろん」

「うん? どうしたのシュワちゃん?」

「私もあの2人に負けたくなくてヴァイオリンケースポチっちゃった。今度一緒に入って沖ノ鳥島行こうね」

「バカなの? ヴァイオリンって楽器見たことある? あれを収納するケースに人が入るわけないでしょ。あと行き先もっとなんかなかったの?」

「ねぇねぇ淡雪殿」

「うん? なぁに有素ちゃん」

「私も淡雪殿に喜んでほしくて、ゴンちゃんをポチっちゃったのであります!」

「おい」

「なんでありますかましろ殿?」

「有素ちゃん、世の中には多数のゴンちゃんがいると思うけど、この会話の流れで出てくるゴンちゃんはまずいんじゃないの? どこに出品されてたのそれ?」

「メ〇カリであります」

「思った以上に表のラインで売られててびっくりだよ。もしかして僕の想像してるゴンちゃんと違うゴンちゃんなのかな?」

「レバノンから発送と書いてあったのであります!」

「決定打じゃん。十中八九僕が想像してるゴンちゃんだよそれ。明日の新聞の一面はおかえりゴンちゃんに決定だよ。ほら、シュワちゃんも黙ってないでこの困った後輩に何か言ってよ」

「ありがとウサギ、さよなライオン、カカカカカ〇〇〇・○○ン」

「ダメダメダメダメ全部ダメ! 最後とか強引すぎるし発言もアウトだよ!」

「ゴゴゴゴーンでありますな」

「僕もうむり、ツッコミリタイア……」


ふっ、我ながら華麗なツッコミだった、華麗過ぎてツッコミ過ぎたことを言ったかもしれない。 


「大丈夫ましろちゃん? 疲れちゃった?」

「あぁ光ちゃん……今の僕にとっては君だけが救いだよ」

「おお! そんなこと言われたら光も頑張っちゃうぞ! 任せてましろちゃん、ここからは光がツッコミを引き受けるよ!」

「本当? いいの?」

「ふっふっふ! この光に全てお任せあれ! ましろんも絶句のツッコミを見せちゃうよ!」

「ありがとう光ちゃん……それじゃあシオン先輩の代わりにここからは僕が場を仕切っていくね? それじゃあみんな、議論に戻るよ」

「なんでやねん!」

「       」

「どうよましろちゃん! 今のツッコミ完璧だったでしょ? あれ? ましろちゃん? おーい!」


ましろんが本格的にノックダウンしたところで、流石にやばいと思ったのか色ボケからシオンママが帰ってきた。


「あ~こほん! みんなしっかりして! まだ人狼が2人生きていることは確定している。そろそろ特定への行動を起こさないと負けちゃうよ! だれか吊らないと!」

「確かにそうでありますな、淡雪殿へ勝利をお届けしなければ……とりあえず私と淡雪殿と光殿は固まっていたので人狼が入り込む余地はなかったと思うのであります。最初も上に向かっていたので、この3人はシロで進行してもいいと思うのであります」

「ふむふむ……そう考えると、今回の殺害されたメンバーは2人とも開幕マップ下に行ったんだね」

「はいはいはいはい! 私はエーライちゃんが怪しいと思います!」


状況を纏めているシオンママに、大きな声をあげて個人的に一番怪しかった人物を主張する。

開幕の行動や議論中に見せた候補をバラつかせるような言動、今考えると怪しいとしか言いようがない。


「んーそれはどうかなぁ……」

「どうしてですかシオンママ!? この中だと一番怪しいでしょ!?」

「それがね、実は私と聖も警戒して見張ってたんだけど、怪しい行動はなかったんだよねぇ。むしろ協力的だったくらい」

「ほ、本当ですか?」

「うん、それは聖様も思ったよ。じっくり視姦してたけど変な点はなかったと思う、全身いやらしくはあったけど」

「カップル組の先輩の言う通りなのですよ~! 私が最初の議論の時にマップ上の人も警戒すべきと発言したのは、本当に特定が甘いと思ったからなのですよ! 私はプレイヤーなのですよ~!」 

「うーん……エーライちゃんは完璧にシロとは言い難いけど、今即吊りするほどではないとシオンママも思うかな」


ぅ……これはこれ以上追求しても無駄かな……いい線いったと思うんだけどなぁ……。

あれ? でも、エーライちゃん以外で怪しい人となると残っているのは……。


「――もしかして、ましろん?」


これしか選択肢ないんじゃ……。


「いや待った、確かにこの状況で疑われるのは分かるよ。でも違う、僕は本当に違う。僕はエーライちゃんが人狼とみてネコマ先輩か還ちゃんと行動してたんだけど、強制ミニゲームとかドアの閉鎖とかで分断されて、気が付いたら一人になっていたんだよ」

「うーん……愛しのましろんの言うことだから信じてあげたいけど、これは流石に……」

「本当なんだよシュワちゃん! そもそも、カップル組だって開幕に晴先輩を殺るのは十分すぎる程可能だったはず。そういえばさっきちらっとシオン先輩とエーライちゃんは見たけど、聖様はいませんでしたよね? なにしてたんですか?」

「隣の部屋のミニゲームをやっていたんだよ。ゲージ満タンにして勝てそうな気配があったからね」

「確かにそんなシーンもあったけど、すぐに聖は合流してたよ! 聖はプレイヤーだと思う!」

「そうなのですよ! 更に言うと、2人が人狼なら一緒に行動していた私はもうとっくに死んでいるはずなのですよ! ここでましろ先輩は吊るべき! 怪しすぎるのですよ~!」

「……そんなの、エーライちゃんとカップル組のどちらかが人狼の可能性もあるし……」


反論するましろんの声がどんどん小さくなっていく。

これは……最初に吊られるのはましろんで決定かな。かわいそうだがそういうルールのゲームだ。

そう思い、投票のボタンに手をかけようとした、その時だった。


「むぅ……光は段々何がなんだか分からなくなってきたかも……ねぇ、ちゃみちゃんはどう思う?」


今まで静かに話を聞いていた光ちゃんがそう言ったとき、この空間の時間が数秒ピタッと止まった。

ちゃみ……ちゃん……?


コメント

:!?

:これは……?

:流れ変わったな

:一方、ハレルンはせっせと編み物をしているのであった

:監禁人狼は一部の他の人狼ゲームと違って死んだプレイヤーはやることないからな……

:人狼側は死んでも妨害できるんだがなぁ……

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