第170話ライブオンオールスターコラボ・監禁人狼3
「晴先輩を殺るとは……流石のシオンママも許せないよ!」
「晴先輩が居なければ淡雪殿もライブオンも生まれなかったのであります! これは極刑なのであります!」
「にゃにゃ! 自分がここに居ること自体晴先輩のおかげだということが人狼役には分かってないぞ! 早く正体を現せ! 自首すれば今なら許してやる!」
みんなにとっての恩人の死という衝撃で、他方から怒りの声が上がる阿鼻叫喚状態だ。
「……なんでみんな脅しで解決しようとしてるの? これ人狼ゲームなんだよ?」
……流石の冷静さのましろんのツッコミで私も含めてようやくガヤが収まった。
いけねぇいけねぇ、会話が大事なゲームなんだから我を失ったらその分人狼側が有利に傾く、落ち着かなければ。
……そうだ! ここはいっちょ洒落たことでも言って場を落ち着かせますかな!
「これじゃあ人狼役にとっては人狼ゲームじゃなくて心労ゲームってな!」
『……………………』
あの…………。
場を落ち着かせるとは言ったけど…………。
瞬間凍結までさせるつもりはなかったんだけどな…………。
「んん? ごめんシュワちゃん! 光上手く聞き取れなかった! しんろうって言った? 結婚の話? 説明も求む!」
「やめて光ちゃん! これ以上傷口をえぐらないで!」
「ママ心配しないで。なにがあっても還の最ママは変わらないですよ」
「うん、その点は一切心配したことないから大丈夫だよ。むしろこの機会にぜひ変えて頂いて」
「あははははははははっ!! 淡雪殿の言うことはなんでも面白いのであります!」
「私が言うのもなんだけどそれはツボ浅すぎだろ! ドス〇ァンゴかよ全身弱点的な意味で!」
「ウキョキョキョキョキョ! 淡雪君は面白いでゲスなぁ!!」
「おい今の誰だ! ここにはライブオンのライバーしかいないはずなのに聞いたことない口調の奴居たぞ!」
「私だよ私、聖様だよ」
「誰だよ」
「ウキョキョキョキョキョ! 我は聖様でゲス!」
「あ、なんだ聖様か、いつも通り変な笑い方できもいですね」
「なにかおかしくないかい淡雪君?」
ふぅ……なぜかいきなり怒涛のツッコミをする羽目になってしまった……いや私のせいなんだけども。
「えっと、そっ、それじゃあみんなの場所の把握から始めようか! まず発見した人は誰?」
シオンママが気を取り直して場を仕切り始める。とりあえずゲームが進行しそうなのはよかった……。
「にゃにゃ! ネコマだぞ! マップ下のセクター8で死んでたぞ!」
セクター8か……となるとやっぱり開幕にマップの下方面に向かった参加者が人狼な可能性が高いのかな。
「OK、じゃあ下の方面に向かった人は誰がいるかな?」
シオン先輩も同じ結論に至り、候補を絞っていく。
確認したところ候補として挙がったのがましろん、エーライちゃん、還ちゃん、そして報告をしたネコマ先輩の4人だった。
どれもマップ下での目撃証言が挙がっているため、このメンツを警戒した方がいい確率はかなり高そうだ。王道に考えるのならこのうちの誰かが停電中に殺ったか。
「ちょっと待つのですよ~」
一旦警戒すべき候補を特定したと思ったところで、その候補のうちの一人のエーライちゃんが声をあげた。
「停電中に移動した、もしくはテレポートで上に向かった時間は十分にあったのですよ! 上方面に向かった方たちの行動も報告するべきなのですよ~!」
……ふむっ、確かにそれはあるな。流石緩やかな口調に反して意外と切れ者のエーライちゃん、冷静だ。ここで下でも上でも両方での目撃証言が挙がる参加者が出れば、それも当然警戒に値する。
エーライちゃんの発言に文句を付ける人はおらず、最初にシオンママから報告し始める。
「私と聖はセクター3に向かってたよ! えへへ、付いていきたくなっちゃって」
「奇遇だね、聖様もシオンに付いていこうとしてたんだ」
「え、そうなの!? えへへ、同じこと考えてたんだね」
「まぁ当然さ、大好きな人のことだからね」
「「えへへへへへへ」」
あー……吊るか。
「みんな聞いてくれ、完璧な推理が出来た。こいつら彼女持ちだから人狼だわ」
「にゃにゃ! 流石シュワちゃん! ネコマも一切の反論ができない完璧な推理だぞ!」
「シュワちゃん先輩、良い推理なのですよ~! 彼女持ちは狼さんみたいなものですし、やはりここで2人は吊っておくべきなのですよ~!」
「や、やめてみんな! 投票しないで! イチャイチャしてたのは謝るから! 少なくとも私は人狼じゃないから! みんなのママだから!」
「やーい嫉妬してやんの~」
二期生のウキョ田ゲス男くんが何か言ってるけど、これ以上言っても悔しくなるだけだから無視しよう。
「えーっと、次は光だね! 光はシュワちゃんと有素ちゃんと一緒にセクター1に向かってたよ!」
「うんうん、停電が止まった後もこの3人で固まってた」
「淡雪殿を守るために背後を警護していたのであります!」
終始固まっていたはずだからこの中に人狼が居る可能性は低いと思うんだけど……。
「えへへ、光が先頭で仲良く並んで歩いてて楽しかったね! えっと、なんだっけな、運動会のアレみたいな感じ! えーっと、ムカデ……ムカデ……そう! ムカデ人間!」
『ムカデ人間!?』
光ちゃんの衝撃的な発言に再び場がざわつきだす!
「ん? どうしたの皆?」
「ひ、光君? 君たちは3人でムカデ人間をやっていたのかい?」
「そうですよ聖様! 光とシュワちゃんと有素ちゃんの3人で仲良く連結して歩いてました!」
「それは仲良しにもほどがあるんじゃないかい?」
「はい? そうですかね? よく学校の運動会とかでやりませんでしたかムカデ人間?」
「ふむ、光君が通っていた学校には催眠能力者が居る可能性が限りなく高いね。やけに前髪が長くて目が隠れているやつとかいなかったかい?」
「ふっふっふっ、やりますね聖様! 光が催眠術すら使えることに気づいてしまうとは!」
「光君……君の正体は催眠能力を悪用して運動会でムカデ人間を開催するとんでもないド畜生だったんだね、弟子にしてください」
「聖様にも今度その身に披露してあげますよ!」
「ヤバイ、欲を出したせいで敵対してしまった。国外逃亡の準備だ、コントラバスケースを用意しなければ」
「光すごいんですよ! クラスの誰も光のトランプカードマジックを見破れなかったんですから!」
「……ねぇ諸君、これって勘違いした聖様が悪いと思う?」
光ちゃんに聞いても無駄だということを察したのか、今度はシオンママが私と有素ちゃんに詰め寄ってきた。
「2人とも? 何か言うことはあるかな?」
「私は淡雪殿と繋がれるのならムカデでも一向にかまわないのであります」
「私と繋がることに関してだけは異様な万能性を見せるよね有素ちゃん、USBかよ。私は流石にムカデは勘弁してほしいな」
なぜだ? なぜ私は固まって行動するというこのゲームの正攻法をやっただけなのにこんなに冷たい目で見られなければいけないんだ!?
「あ、光間違えた! ムカデ人間じゃなくてムカデ競争だった! ムカデ人間ってなんだよって話だよね、ごめんなさい!」
『………………』
そんなことある? っておそらく全員思ったんだろうけど、あの光ちゃんなら本当なんだろうということで誰も何も言えなかった……。
ムカデ人間が気になった人がいても、調べるのは心臓が強い人だけにしておこうね……。
その後も議論は続いたのだが、初の議論かつ暗闇の中の犯行ということで人狼の特定までは至らなかった。
「あ、やばい! 時間がもうない!」
シオンママの焦った声で時間のことを思い出し、確認するともう議論の時間は15秒しか残されていなかった。
「これで上方面も大丈夫だよね!? みんな報告したね!?」
「大丈夫なのですよ~! ご報告ありがとうなのですよ!」
うん、とりあえずこれで全員の報告が済んだようだ。上方面には怪しい行動をした疑いのあるプレイヤーはいなかったけど……。
このゲーム、人狼役が2人いるってところがいやらしいんだよなぁ。この話し合いの中でも巧妙なコンビプレーがあったのかもしれないと考えると、全てを鵜呑みにするのは危険だ。
「とりあえず下方向に向かった4人を警戒するってことでまた!」
早口でなにを言っているのかギリギリ聞き取れるくらいのシオンママの言葉を最後に議論パートは終了となった。吊られた参加者はなし。
再びゲームが操作可能な状態に戻る。まだ謎な点が多すぎるから、とりあえずはシオンママの出した結論に従って動こうか……。
コメント
:面白くなってきた
:ハレルンを最初に殺ったのはデカい
:なおハレルンは現在大発狂台パンしてる模様
:なんだこの悲しい展開
:とうとう犯人の呪いの藁人形作り始めてたぞ、藁がないから毛糸でだけど
:それはもう呪い関係なしのただのお人形なのでは……?
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