第125話有素ちゃん家にお泊り5

「あっ、有素ちゃん、そこっ……気持ちいい!」

「ここ? ここがいいのでありますか? ふふっ、淡雪殿の弱いところがだんだんわかってきたのであります」

「はぁ……はぁ……気持ち良すぎて体に力が入らなくなってきました……」

「いい、とてもいいですよ淡雪殿、そのまま身を任せるのであります。さぁ次は足を開いてください! もっと気持ちよくなる性感スペシャルコースにご案内」

「あ、それは結構です」

「ちぇー」


お母様の襲撃から数分後、私は有素ちゃんのベッドにうつ伏せに寝て、腰の上には有素ちゃんが馬乗りになっていた。

別にいかがわしいことをしているなんてことはない。まず何をしようかという話になったところ、有素ちゃんがマッサージをしてくれると言ってくれたのでそれに甘えただけだ。当然服もちゃんと着ている。


「んっ……確かにマッサージは気持ちいいですけど、別にそこまで気を使ってくれなくていいんですよ? 有素ちゃんも遊びたいでしょ?」

「大丈夫であります! 今回は淡雪殿の慰労も兼ねているつもりなので、心も体も癒されてほしいのでありますよ。実際かなり体こってますよ、淡雪殿は配信にストイックすぎるところがありますから」

「ありがとう、PCの前にずっといるからどうしてもね。人間運動もしなくちゃいけないですねーやっぱり。……ふふっ、でもこんなにマッサージが気持ちいいのなら有素ちゃんの前ならこっているのも悪くないかもしれないですね。さっきから極楽の限りですよ」

「……それって私の前だと人体をガチガチに勃起させてますっていう男性器がないなりのお誘い文句だったりするでありますか? 服脱ぎます?」

「あ、結構でーす」


色々と台無しだよもう!

ちなみに今後の有素ちゃんの私への対応は顔は隠さないけどキャラはライバーの有素のままということになった。どうやらこれが一番お互いにとって違和感なくコミュニケーションがとれる形のようだ。


「肩以外もこっているのであります。これは全身にうまくリンパが流れていないのかもしれないですね」

「リンパ?」

「はい。というわけでリンパの方流していくでありますねー。それじゃあ服脱がしまーす」

「あ、結構でーす」

「むー、どうしてでありますかー? きっと気持ちいいでありますよリンパマッサージ?」

「別にリンパマッサージを否定しているわけではないですよ。ただ施術師が有素ちゃんだと身の危険を感じるだけです」


相変わらずの極端な愛情? を度々受け流しながらも丁寧なマッサージを堪能し、終わるころには自分でもびっくりするほど体が軽くなっていた。

体の疲れって自分の想像以上に負担がかかるものなんだな、今度家の近所にいいマッサージ屋さんとか整体とかないか調べてみようかな。

さーてーと、次は勿論ー。


「さ、次は有素ちゃんが寝てください」

「え、私でありますか? 私は別に……」

「何言ってるんですか、有素ちゃんも私と同じライバー活動をしているんですから、マッサージを受けるべきです」

「でも、今回は淡雪殿の慰労が目的なので負担をかけるわけには……」

「そもそも私は慰労が目的って言ったことないんですけどね……大丈夫、私がやりたいからやるんですよ。あんまりうまくないかもしれないですけど、痛くはしませんので」

「うーん……」


ここまで言っても有素ちゃんはイマイチ納得がいっていない様子だ。段々とわかってきたけど有素ちゃんはなにか自分で決めたことは簡単には曲げない性格なんだな。

うーんそうだなー。


「それなら、マッサージをしながら何かゲームでもしませんか?」

「ゲームでありますか?」

「はい! ほら、それなら有素ちゃんも疲れが取れるし私も楽しめるしでWINWINですよ!」

「そう……でありますかね? いやでも」

「そう! そうですよ! ほらだから早くうつ伏せになって! ほら!」

「は、はい」


半ばごり押し気味ではあったがとりあえずマッサージの体勢に持ち込むことに成功した。

うん、私ほどではないかもしれないけど有素ちゃんも疲れが溜まっているみたいだな、しっかりとほぐしていこう。


「あっ、気持ちいいでありますね……」

「そう? よかったです、人にマッサージするのすごく久々なので」

「油断すると眠気がやってきてしまいそうです……っと、それでさっき言ってたゲームって何をするのでありますか? こんな体勢ですからできることも少ないような」

「あー……」


やばい、勢いで言ったから正直何も考えてなかった。

なにかいいアイデアは……そうだ!


「今日ってエイプリールフールじゃないですか!」

「え? 今日は4月4日だからそれはもう過ぎちゃってるでありますよ?」

「細かいことは気にしなくていいんです! 今日はエイプリルフール4日目なんですよ! どこかのハジケリストも似たようなこと言ってましたから間違いありません!」

「な、なるほど、了解であります!」

「そこでですね、エイプリルフールにちなんで嘘当てゲームなんていかがですか?」

「嘘当てゲーム?」


私が即興で思いついたこのゲーム、ルールはいたって簡単で出題者と回答者に分かれ、出題者がいくつかの嘘に交えて一つだけ本当のことを告げる。次に回答者は嘘の中からその本当を当てられるかを競うというどこかで聞いたことがあるようなゲームだ。


「なるほど、完全に理解したのであります、それでは有素が出題者やってもいいでありますか?」

「どうぞどうぞ」

「それじゃあ今から上げる三つのうち、本当のことを当ててください!」

「どんとこい!」

「1さっき淡雪殿のマッサージをしてるとき隠れてお股いじってました。2今マッサージをしてもらってる現在進行形でお股いじってます。3実は最初からずっとお股でローター起動してます」

「ぜ ん ぶ う そ で あ っ て ほ し い ! !」


どれが本当だったとしても裏でなんてことしてくれてんだこの子!? 

いやだ、正解を知りたくない! こんなゲームするんじゃなかった!


「まぁ、全部嘘でありますけどね」

「……へ?」


狼狽えて頭を抱えていた私だが、さも当たり前かのように有素ちゃんはそう言った。


「あはは、さっき淡雪殿が今日はエイプリールフールだって言ったじゃないですか。だから嘘つきました、一つ本当のことが混じってるってとこから嘘であります」


…………


「こ、こらー!!」

「キャー!! く、くすぐったいでありますー!!」


やっといいように振り回されたことを理解し、仕返しとして馬乗り状態からのくすぐり攻撃をお見舞いする。

じゃれているうちに有素ちゃんの服が少し乱れてしまってきたので、この程度にしておいてあげようかなと思ったその時だった。


「おーい二人ともー! ママが夕飯なにが食べたいかって言って――――おお?」


最悪のタイミングでお父様が部屋のドアを開けてきてしまった。

その目に映っているのは馬乗りになった私と息と服を乱している娘の姿。

ってこれって――。


「おーいママー! 県内全ての産婦人科に連絡してくれ! 新たな生命の誕生だ!」


完全なるデジャブじゃねーかあぁ!! 

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