第114話大型新人VTuber3

さて、なんだかしんみりとした空気になってしまったな。できるなら後の話を明るく話したいからちょっと雑談でも挟んでムードを作るか。


「あ、そういえば晴先輩」

「んー?」

「さっきタトゥーの話になりましたけど、もし二期生がタトゥーを入れるとしたらどんなの入れると思いますか? ほら、聖様とか似合いそうですし」

「あー確かに。セイセイはハートに翼が生えたみたいな形のピンク色のやつが下腹部に入ってそうだよね」

「あ~すごい分かりますそれ。絶対入ってますよね」

「うんうん入ってる、間違いない」

「結論、聖様は入ってます」


コメント

<宇月聖>:あれ? なんかいつの間にか推測から決定事項に変わってないかい?

:実際イメージできるし仕方ない

:タトゥーというか淫紋で草

:あれってよく性的なきっかけで光るイメージだけどどうやって光らせてるのかな

:LEDでしょ

:わーお科学

:聖様なら淫紋でも不思議とかっこよさも出せそう

<宇月聖>:ほんとかい? それなら体全身に隙間がないくらい刻み込んでみようかな

:アン〇マユかよ

:この世全ての性欲


「他にはそうだな、ネコマは絵文字みたいな猫のワンポイントタトゥーとか、シオは白蛇とか雰囲気出そうだよね」

「いいですねぇ。まだ日本にはあまり浸透していない文化ではありますが、考えだすと楽しいですね! あ、ついでにエーライちゃんはどんなのだと思いますか?」

「それはもう背中一面に著された迫力満点の龍か虎でしょ!」

「義とか極の一文字とかもシンプルかつ趣があって良しですね!」

「ストファイの豪鬼みたいに天とかどうよ?」

「リアル瞬獄殺を超えたいつでも瞬獄殺ですね!」


コメント

:草

:これは完全に道が極まってますわ

:ついででネタにされる組長に笑った

:解釈一致

:さも当然かのように和彫りにいったなwww

:いつでも瞬獄殺とかチート過ぎるからトレーニングモードだけにしてくれ

:信じられるか? こいつ元は動物園の園長なんだぜ?

:極飼育道


よしよし、段々明るい空気が戻ってきたぞ。ここらへんで元のライブの話題に戻るとしよう。

それからはソロで歌った曲の曲選の理由や、諸々の準備などの裏話などを中心として話題が進んでいき、そしていよいよライブ最後のシーンの話となった。


「さて、いよいよダイヤモンドダストの話に行きましょうか」

「あはーあれいっちゃう? 今でもちょっと恥ずかしいよ」

「だめですよ。あれを語らなかったら皆様から怒られてしまいます」

「ですよねぇ」


コメント

:待ってた

:あれのせいで涙腺崩壊して溺れ死んだわ

:溺死ニキは早く成仏してもろて

:分かる。俺もあれのせいで狙撃されてくたばったもんな

:他殺されてますよー


「えっと、軽く説明するとダイヤモンドダストはライブの最後に晴先輩と私がコラボで歌ったサプライズ新曲になります。事前に晴先輩がこれからはライバー活動に専念して頑張るとの決意表明があったのもあって多くのリスナーの方の記憶に残った瞬間だったかと」

「天才の私でもあの時は流石に緊張したからね」

「流れもそうですけど、曲自体の完成度も高かったですよね」

「そりゃもうめっちゃ気合い入れて作ったからね! あの流れから曲がこけたら一生の恥だよ!」


コメント

:てか当たり前のように作詞作曲してるのほんと天才

:久しぶりにハレルンが才能を正しく使った気がする

:いつもお笑いの為に手の込んだ自爆してるからな

:音源化はよ

:音源化頼むー!


「ふふっ、皆様そう言うと思ってましたよ。任せてください! 今週中に音源用のレコーディングが開始されます!」

「ミュージックビデオも作るから楽しみにしてくれよな!」


どっと沸きだすコメント欄、あの曲を会場だけのものにしておくのは余りに勿体ない、ライブオンも力入れまくりで音源版も作る予定だ。

流れるコメント欄を目で追いながら嬉しそうに微笑んでいる晴先輩。曲を作った人としてはやっぱり求められるのは大きな喜びなのだろう。

ライブも最高だったが、音源版も別のニュアンスで最高を目指して歌おうと心に誓ったのだった。


「作るの大変だったよー。曲名自体はすぐに決まったんだけどねー」

「ダイヤモンドダスト――晴れた朝、それも積もった雪などで極度に冷えた日に見られる、空気中の水分が氷結してキラキラと日の光を反射し、最後に雪として降る現象のことですね」

「そうそう。どう? 私たちにぴったりっしょ?」

「そうですね、これしかないって程に」

「歌は大好きだけど、あんなに歌うのが楽しかったのは初めてかもしれないね」

「私は晴先輩のサプライズのせいで未だにどんな気持ちで歌ったのか思い出せませんよ」

「あはは! あわっち半泣きで歌ってたからね」


当時の情景を思い出しながら二人で笑い合う。

うん、振り返りはこんなところで終わりかな。

ライブの主役である晴先輩に配信の締めを頼む。頷いて了承した晴先輩は、一息吸った後、高らかに口を開いた。


「ライバー活動に専念するということで、これからはライブもバンバンやるよ! コラボも頻度が増えると思う! だから……遅れてきた新人VTuber朝霧晴をよろしく!!」

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