第12話清楚配信1

「ぅぉぉ(ry」


ましろんとのコラボ配信から翌日、私は相変わらずベッドで悶えていた。

まさかのまさか、配信中に素面での配信を約束させられてしまったからだ。

というかましろん絶対内心楽しんでたでしょ! 酔っぱらいを誘導するとは卑怯だ!

まぁおそらく体の心配をしてくれたのも事実だと思うけどね、今朝スマホ見たら「これからは最低週2回は休肝日を設けること」ってチャット来てたし。

うぅ……でもどうしよう……今更どんな顔で清楚配信なんてしたらいいの……

でもやるって言った以上やらないわけにはいかないし……

しばらく悩んだ後、このまま悩んでいても一人ではどうにもならないと思ったので、急遽鈴木さんにアドバイスをもらいに行ったのだが。


「え? まさかこれから毎日ストゼロ飲んで配信する気だったのですか? 自分の肝臓使ってストゼロ味のフォアグラでも作る気です?」


とドン引かれてしまった。解せぬ。


「せめてなにかいい配信プランないですかね……?」

「うーん、そうですねぇ…………ゲーム配信とかどうです?」

「あ、それいいですね! 適度に難しいやつとかだと熱中して羞恥を忘れられそう!」

「そうですね! じゃあそれで方向性は決まりで、いいゲームありそうですか?」

「あ……私貧乏なのでゲーム買うお金とかないんですよね……」


ガックシとうなだれてしまう。

怪我の功名か、収益化で生活が安定しそうなラインの人気には来ているんだけど、その肝心の収益化が追い付いてない。

今みたいに配信でできることも縛られてきちゃうし、早くどうにかならないかなぁ。

運営さん! お願いです私を見て!

……あ、飲酒配信は見なくていいですお願いですからセンシティブ認定はやめてください。


「あ、私無料でできるゲームでおすすめなの知ってますよ」

「え、ほんとですか!?」

「はい! 『クリアしようと思えばとても熱中できる』ぴったりのゲームです!」

「じゃあ配信の始めに少しマシュマロ返してからそのゲームやります!」

「え、マシュマロ返答の時間作るんですか? 来てるのストゼロ関連ばかりなんでしょ? 素面で大丈夫です?」

「なんとかやります! せっかくリスナーさんたちが考えてくれた質問なんですから!」

「相変わらずそこらへんは律儀ですねぇ」


よしっ! 鈴木さんにいいことを教えてもらったし、今日の夜は頑張るぞ!

今日こそ清楚返上の時! 見てろよリスナー!

……あ、清楚挽回だった…………




「――皆様こんばんは。今宵もいい淡雪が降っていますね」


しんしんと優しく雪の降る背景に、心音淡雪のアバターを表示する。

どこか儚げなアバターに雪がマッチして幻想的な雰囲気を醸し出している。

まぁでも……


コメント

:え、誰?

:ストゼロの使い魔の配信って聞いたんだけど間違えたかな

:あっ第二人格のストゼロに体の主導権奪われた人だ!

:むしろあっちが本体じゃね?

:草

:もうこの時点で草

:清楚(羞恥プレイ)配信キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

:この瞬間を待っていたんだ―!!

:自己紹介だけで笑いをとる女

:雪降るどころか地面草で緑一色やで


この有り様なんですけどねー!

いや、予想通りではあったけどコメント欄ネタだらけや。

私の配信は大喜利会場に変わってしまったようだ


「こほん! なんだかいつもとコメント欄のムードが違うようですね。私は皆様に楽しい時間を過ごしてもらいたいという思いが第一にありますので、その為ならどのような変化も大歓迎です。『ですが!』今日の私は清楚なのであしからず」


コメント

:草

:りょ!

:ですがの圧力で大爆笑

:画面の前では顔真っ赤なんやろなぁ

:もう『今日の』私って言った時点でバレバレで草

:久々にあわあわで萌えた


「さて、まず二日間配信が出来なかったこと、誠に申し訳ございません。淡雪が降らなかったもので皆様の前に姿を出したくてもできませんでした……」


コメント

:は?

:は?

:は?

:草www

:なるほど、そういう感じでいくのか笑

:これは策士

:あれ? おかしいな? 3ヶ月間引き絞られ続けた弓矢が満を持して放たれた瞬間を見た気がするんだが

:俺は3ヶ月の間、密かにシャカシャカ振られていたストゼロが開け放たれた瞬間を見た覚えがあるぞ!

:絶対無理があるだろ! 大丈夫? ストゼロ飲む?

:淡雪降らなかったどころか吹雪やったでー!


「は、ははは。なんだかコメント欄が盛り上がっていますねぇ、不思議です。さて、今日は最初にマシュマロを返した後無料のブラウザゲームではありますが、ゲーム実況をやっていきますよ!」


コメント

:お、ゲームええやん!

:ゲームタイトルなに?

:この状態でマシュマロ返すのか、楽しみすぎる

:ゲーム気になる!


「ふふっ、なにをプレイするかはその時のお楽しみということで、まずはマシュマロの方、頂いてしまいましょう」

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