9話 これ詰んだでso。

 はぁ…いくら登ってもつかない…。


「おーい。全然つかねぇぞ?」

「おかしいな…もう既に6は登ってるはずなんだけど…」

「どうしてなんでしょう…」

「わかんないけど、今はリズを信じよう。」

「はい!」

 まさかぐるぐる回らされてるだけなのか…?そんな不安が頭をよぎった。

 7つ登った所でまた光を照らす。リズのスキルを欺けるほどの技術が人間側にある事は考えにくいが、ここまで来るとその可能性も考慮しなくては行けなくなるな…。


 いや! リズを信じなくてどうするんだ。こういう時こそ仲間を信じるべきだ。


「このまま行き続けるよ!」


 8つ目への壁が開いた時、一筋の光がさした。


「やっと…」

「地上だー!!!」

「やりましたね!」


 良かった。リズを信じて。この罠…作った人間はかなり頭のキレる人間だ。人間がギリギリ諦めるレベルの階層を作っている。最低限のお金で最大限の効果を発揮するものだ。はぁ…敵にそんなやついるとか詰んでるだろ…。


「どうしたんだ? 黙り込んで」

「なんでもない。行こう!」


 罠の可能性もあったので触手を張り巡らせ充分な警戒をして行ったが、何も無く、おそらく城じゃないか? と言う場所に出た。牢から出てこれるやつがいることを想定していないのか、はたまた違う理由なのかはわからないが、ここにも警備がいない。一息つく。


「牢から出たけど、魔法は使えるか?」

「いや、無理だな」

「そうか…」


 城の中でもスラスケが使い物にならないことが確定した。


「とりあえずリズの光の道でリズの母親を探そう」

「そうだな」

「おそらくだが、今日がパレードだと言っていた。警備は想像を絶する程強固にされているだろう。でも大丈夫だ、人に対しては対人用の、魔物に対しては魔物用の警備のはずだ。どこかに絶対穴はある」

「なんかいつにも増して頼りがいがあるな」

「本当です!」


 そんなこと言われると…照れる。実際人に対しては対人用、魔物に対しては魔物用で明確な違いがある。もし魔物の中身が人間だったら? 答えはひとつ、対応策はない! はず。基本的に魔物は馬鹿だから結構なめた罠を置いてたりするもんだ。


「あんまり期待するなよ…」

「じゃあ光の道を照らしますね!」


 いや、待て。ここでそんなもの使っていいのか…? もし警備にバレたら? リスクが高い。相手に驚異となる人物がいる可能性がある以上最安全策をとるべきだ。


「いや、光の道は照らさないで行こう。」

「どういうことですか?」

「今までは警備がいなかったからよかったけど、よく良く考えればたまたま運が良かっただけだ。もし人間が居れば確実にバレる。」

「確かに」


 ではどうするか? 今いい案を考えようとしているがなかなか思いつかない。魔力探知が使えればいいのだがあれはおそらく魔法の分類に入る。


 コウモリが使う超音波は…? センサーがもしあればそれでバレる可能性がある。実際に超音波を探知するための道具もあった。腐敗蝙蝠デッドバッドを討伐する際よく用いていたものだ。


 はっ! なんて単純なことな気づかなかったのだ。念話を使えばいいじゃないか?!


「リズ! 母親に念話を飛ばせるか?」

 おそらくそれをすること自体はできるはずだ。問題は…

「飛ばしましたが返ってきません…」


 やはりな。もう既に死んでいる可能性があるから仕方ない。どうする…完全に詰まってしまった。


 こんな時にナビがあればな。ナビ……いやいや…ここは異世界だぞ?無理だろ。……ナビって言葉で行けるか? いや、ナビを知らないリズがそれを言っても発動しない可能性が高いな。物は試しだ。一応試してみよ。


「リズ、『母親のところまでナビ』でスキル使ってみて」

「分かりました。」

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