第22話 冒険者を見守るの会

 魔王討伐のため、序盤の森へと戻った3匹は、人間と魔王が交戦しているのを見つけた。


「人間は死んだらどうなるのてすか?」


「システムはよく分かんないんだけど普通に生き返るんだよね、教会で」


「それズルくないか?」


「んー、人間の特権かな?」


「生き返るとかズルすぎるだろ。」


「僕にいわれてもどうしようもねーよ」


 草むらに隠れて猪王キングボアと人間が戦う姿を眺める。


 ――ブオォー!!


「きゃっ!」


「うわっ! うるさっ。なんだ?」


「うっ。これが『仲間を呼ぶ』のスキルだ。HPが半分になるとこれを使う。これを乗り越えられればあの冒険者は勝てる」


 いきなりだとやっぱりこの鳴き声にはびっくりするな……これは仲間を呼ぶ以外にも相手を怯ませる効果もある。仲間を呼ぶ方はわりかし大丈夫なのだが、この怯ませる効果がかなり危険だ。怯むのは一瞬だが、戦闘ではその一瞬が命取りになる。

 懐かしいな、僕もしっかり対策をして挑んだんだっけ。人間はステータス閲覧できる者が限られてるからHPを確認するのが結構大変だったなー。


 このスキルの対策は至ってシンプルだ。『耳栓』をすること。ただそれだけ。戦闘するのに五感のひとつを無くすのは賢いこととは言えない。しかし、人間も念話ができる為、指示は通る。あとは戦闘中の『音』なのだが、ボス戦に他の魔物が割り込んでくることは滅多にないのと、この猪王キングボアは序盤のボスなのでわりかし攻略しやすく設定されていたため聴覚が無くても戦えた。


「あの冒険者達全然ビビってねーぞ?」


「しっかり対策してるんだろうな」


「対策ってなんですか?」


「耳栓だ」


「んだそれ? 大丈夫なのかよ」


 大丈夫なもんは大丈夫なんだよ。実際見てみろ。怯んでないだろ?


「てかさ、アイツらが倒してしまったらどうするんだよ?」


「ボスは新しい敵が入ってくればすぐに現れるから大丈夫」


「ふーん」


「どういう原理なんですか?」


 そう『どういう原理なのか』これは前世でもこのゲーム内で論理厨に度々話題にされていた。ボスの設定は、魔物が進化したもの、となっているのに何故すぐに湧くのか、と。


それに対し運営はシカト。


この謎の答えは僕も知らない。


もしかしたら、何かの伏線かもしれない、ネタバレの恐れがあるから運営も答えないんだ。っていう意見もあったけど多分違うわ。


「僕もそれは知らない」


 しばらく見ていると………。


 ――ドスドスドスドス。


「何だこの音?」


「あの冒険者達は終わったな。もう仲間が来た」


「大丈夫なんですか?」


「んー、例外はあるけど、仲間が来る前に倒さないとほぼほぼ死ぬかな」


 例外というのも、経験値を効率よく集めるためにわざとそのスキルを使わせる。という裏技的なものがあったのだ。そういうことをする連中は大抵強力な魔法使いをパーティーに入れている。しかしこのパーティーにはそれらしき人間が居ないから死ぬだろう。


「んじゃ、アイツらが死んで魔王が油断してるところ狙おうぜ」


 まぁ、敵を倒すのにはそれが一番いいし、当たり前に使われる策なんだけど。スラスケにしてはまともなこと言ってるし。

でも、お前本当にそれでいいのか? わざわざリズには黙って見ててって言ってるんだぞ? なんか引っかかるんだが。


「それはズルくないか?」


「何言ってんだ? 弱ったところ狙うのが戦う時の基本だろ」


 ぐぅ………間違ってはないんだけどさぁ…そうなんだけどさ。お前がそれいうのは納得いかない。


「まぁわかったよ。」

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