第2章ー暴食の魔妖芯・餓鬼武者編。
第四転-不思議な闇商人『神様屋』
「いらっしゃいやせ」
「おぉ! やっと見つけたぜ!」
「おや? あっしに何か御用で?」
「アンタが路地裏で高額のコロコロ鉛筆を破格の値段で売り回ってるっていう噂の闇商人さんだな! ずっと探してたんだよ! オレにも鉛筆も売ってくれ!」
「どうやら一つ誤解があるようですな」
「誤解? なにがだよ」
「商品という物は買い手が選ぶものじゃありゃあせん、商品が買い手を選ぶものでありやす。あっしはただ仲人を務め、その仲介費として代金を頂いているだけのこと」
「商品が買い手を選ぶものだって? はっ、馬鹿馬鹿しい!」
「あなたが何かを求めている時、その何かもまたあなたを求めている。それが世の常というもの……」
「こ、これは……っ!」
①ハングリーグリズリー(時価300,000円)
②サキュバスプリンセス(時価550,000円)
③ヴェノミースネイク(時価700,000円)
④ゾンビマスター(時価800,000円)
⑤パンデミックモスキート(時価1000,000円)
⑥ワールドシーク(時価1300,000円)
「すげぇ……どれもこれも入手難関の激レア鉛筆ばかりだ」
「ここは一つ、余興と行きやしょうか」
「余興?」
「今からこの①から⑥までの数字の書かれた鉛筆をあなたに転がしてもらって、出た数字と同じ鉛筆をあなたに差し上げましょう。ただこちらも商売でね、仲介費として500円だけ頂きましょうか」
「500円で好きな激レア鉛筆が手に入るってことか!? そんなのやらない理由が無いぜ!」
「先に二つだけ注意事項をいいですかい?」
「おう、なんでも言ってくれ!」
「一つ目は返品も返金も一切受け付けないってこと、いわゆるノークレームノーリターンってやつでさぁ」
「もちろんだ! むしろ後で返せと言われたって返さないからな!」
「ヒヒヒヒ……あなたとはいい取引が出来そうです。そして二つ目……これが一番の重要事項でしてねぇ……」
「勿体ぶらないでくれって……ペンシリストは鉛筆ほど気が長くないんだから」
「ヒヒヒヒ……これらの鉛筆はねぇ、生きてるんですよ」
「は? 鉛筆が生きてるってどういう意味?」
「言葉通りの意味とだけ」
「変なの……あぁもうはいはい、全部分かったからやるぞ? コロコロール!」
コロコロコロ。
①ハングリーグリズリー。
「き、来た……っ! 時価30万は下らない激レア鉛筆……ハングリーグリズリー!」
「おめでとうございやす。どうやら
「やったァァァァァ! ほら500円!」
「丁度お預かりになりやす。ではハングリーグリズリーのコロコロ鉛筆と、こいつはおまけだ」
「おいこれ! ハングリーグリズリー専用のバトルキャップじゃないか……っ! これも15万程の値打ちが付いた激レアバトルキャップだぞ……とてもおまけに付けるような代物じゃ……」
「おやおや、お気に召さんと?」
「いや……頂こう! これで俺は最強のペンシリストだ! ハーッハッハッハッハ!」
「毎度あり……ヒヒヒヒ」
***
「路地裏の闇商人だァ?」
「そうなんだよ、おじさん知ってる?」
「知らんな」
ズルズルズルズル。
「正体も何もかも不明なんだけどさ、高額のコロコロ鉛筆を破格の値段で譲ってくれるらしいんだけど、そのお代に命を取られちゃうんだって」
「はぁ……ホントガキってその手の話題好きよな。いいねぇ夢を見る暇があって」
ズルズルズルズルズルズル。
「っていうかさっきからズルズルうるさいんだけど何それ?」
ズルズルズルズルズルズル。
「んー? うどんのうどんマシマシのうどんカラメのうどんトッピングだよ?」
「つまるところただのうどんじゃん! 洒落た言い回ししてんなよ!」
「は? ちげーから。うどんはうどんでも賞味期限が一か月過ぎたやつと一週間過ぎたやつと昨日が賞味期限のやつだから麺のコシも風味も全然違うんだぞ。まったくこれだからお子様舌のガキンチョは……」
「なんでもれなく賞味期限切れてんだよ! そして何当たり前のようにそんな生ゴミ食ってんだよ! もっと人としての自覚を持ってくれよ頼むから!」
「仕方ねーだろ。スーパーの特売に買い溜めし過ぎてこの様なんだよ。食費も馬鹿になんねーし食い物粗末にしたら罰が当たるだろ」
ズルズルズルズルズルズル。
「前から思ってたけどなんでおじさんの冷蔵庫は冷凍うどんと卵とめんつゆしかないの! 料理のレパートリー限られ過ぎるだろ!」
ズルズルズル……ゴクッゴクン。
「ごちそうさまでしたっと。それで話戻っけどその悪質な転売屋の被害者はどれだけいるんだ?」
「悪質? 何がだよ。高額な激レア鉛筆をタダ同然の値段で売ってくれるんだぜ? 俺達ペンシリストの間じゃ『神様屋』なんて呼ばれてるくらいだよ」
「馬っっ鹿だねぇ……大方そいつは本物そっくりに作った海賊版作って売り捌いてるってオチだろ。みんなそいつに騙されてんだよ」
「そうかなぁ……」
「仮に本物だとしたら割に合わねーだろ。儲けも出ねーしどうみても裏があると見たね」
「確かにそうだよな……じゃあ何が目的なんだろうな神様屋は。まさか噂通り本当に命を……っ!」
「まぁいずれにしても海賊版売って儲けようなんてクソ野郎は同じ転売屋として放っておけねー。捕まえてとっちめてやんよ」
「さすがおじさん! カッコイイぜ!」
ぎゅううううううう。
「あーもう暑苦しい! それになんか今日のお前妙に汗臭いんだよ引っ付くな!」
「今日体育の授業あったからね。どう、興奮した?」
「するかボケがァ!」
「まぁいいからほら……暗くなっちゃう前に早く行くよ!」
「え、今から行くの?」
「うん! どうせおじさん暇なんだし良いだろ?」
明日は早朝から日雇いのバイト入ってんだけどなぁ。
とんだ安請け合いしちまった。ガキの相手なんてするもんじゃねーな。
まぁいいや、適当に付き合ってとんずらこいちまおう。
「はぁぁぁ……そんで、その神様屋とやらはどこにいるんだ?」
「同級生が言うには隣町の駅の路地裏で現れるんだって!」
「なるほどな。ましろ、お前に折行ってお願いがある」
「なんでも言ってくれよ! なんでも聞いちゃうよ!」
「あのさ」
「電車賃貸してくんない?」
「は?」
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