第78話 秘められた過去③

真奈美は、ふらふらと2,3歩後ずさると、ソファーにすとんと腰を下ろした。

 「この話はまた、別の機会にしよう。今日は帰ってゆっくりと休むんだ。」

 菅ちゃんは立ち上がり、ゆっくりと真奈美に近づいた。

 「いいんです…。いいんです社長。今ここでその話をして下さいませんか?」

 真奈美の目は、さっき見た達夫のその目と同じだった。何かを見ている様な、それでいて全く何も見ていない様な…。僕は、あの明るく知的な真奈美の中に、暗く深い心の闇を見ていた。そしてそれは、小さくなって震えている真奈美を、あたかも地獄の底に引きずり込むかの様な、そんな不気味な闇だった。


 「しかし真奈美、ここでは…。」

 菅ちゃんは、明らかにここに達夫がいる事を気にしている様だった。

 「いいんです社長。これも何かのご縁でしょう。私の事、達夫君にも聞いてもらいましょう。」

 僕達は戸惑いながらも、静かにソファーに腰を下ろした。


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