人間側 酒場で潰れるとある冒険者のぼやき

今日は大変な目にあった…。


親の反対を押し切って村を出たのが一年前。ギルドに登録し薬草集めや簡単な魔物退治に何回も挑み死にを繰り返し、やっとまあまあな日銭を稼げるようにはなった。ようやく我慢していたお酒を飲めるようにもなった。やっぱりお酒はクエストで疲れた体を癒す最高の薬だぜ。


そんな酒も、今日は美味くない。理由はあれだ、つい最近ギルドがクエストを出した『ゴブリンの洞窟ダンジョン』。ゴブリン程度ならば幾度も相手しているし、最近は怪我を負うことなく倒すこともできる。だから、調子に乗って仲間達と共に意気揚々と足を踏み入れた。



元からあった自然洞窟を拡張して作っただけらしく、魔王軍や魔女、魔族達が持っているダンジョンよりも造りは粗雑。灯りこそ必須だったが、出てくるのはゴブリンやら小さいスライムやらの雑魚ばかり。こちらもパーティを組んでることもあり、時間は掛かったものの最奥に進むことが出来た。


流石にちょこちょこ傷を負わされて、俺達も苛立っていた。ゴブリン如きが、せめて使った回復薬代ぐらいは回収してやるってな。



そんな時に丁度宝箱を見つけた。どうせゴブリン達が俺達から盗んだもの、奪い返してやる!と全員で顔を近づけたのが悪かった。


「「「え…?」」」


思わず全員でそう声を漏らしちまったさ。だって…入っていたのは宝じゃなくて鋭い牙と真っ赤な舌だったんだもの。あれが噂に聞く『ミミック』って奴だったんだろうな。持ってた灯りに反射して意外と綺麗に光ってたよ。一瞬、これ売れるのかなって思っちまった。


その後?おいおい、聞かなくてもわかるだろ…。揃って頭からガブリ、骨ごとバキバキ食われたよ。


次に気づいた時は教会の復活魔法陣の上。持っていった武器や鎧、アイテムを全て失くしたあげく、高っかい蘇生代金まで支払わなきゃいけない羽目になっちまった。おかげで仲間全員揃って金欠だ。



気晴らしに残った金で酒を飲んでるが、気分は晴れねえ…。もうダンジョンには行きたくねえよクソッタレ…!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る