狂乱的バイオロジー
@sekaisaiai
第1話 戦慄の始まり
「地獄へようこそ」
耳元で不快な魔音が聴こえた気がする。気のせいだろうか。
俺は窓越しに灼熱の太陽に晒されて、重たい体を起こす。起床だ。すべての始まりだ。
小鳥が泣きわめくオーソドックスな朝だ。一つ普通じゃないことと言えば、全身が鎖に縛られていることぐらいだろうか。それはそれはしっかりと雁字搦めに縛られて起き上がるので精一杯だった。
少し体を伸ばしただけでギシギシと痛む。
「どうしてこうなった」
「教えてほしいか〜い?」
独り言のつもりだったが、勝手に応答された。
ベットの上で振り返るとそこには魔女がいた。背丈は低く、腰も曲がり典型的魔女だった。紫のとんがりボウシと禍々しい服。もう一度言うが典型的魔女だった。
普通だったらここで「何者だお前」なんて言うが、それじゃあつまらない。もっとイカれた切り返しでいかなきゃユーモアがないだろう。
「結婚してください!」
顔が歪む老婆。とてつもなくいたたまれない空気が流れる。頭大丈夫ですか俺君。
「たいそう余裕ではないか、鎖に巻かれる趣味でも持っておるのか?」
「そうだな、俺はとんだドMらしい」
冗談はさておき、なぜ魔女さんが俺の部屋にいるんだ…。正直滅茶苦茶怖いんですけど。というか、なぜ若い魔女じゃないの。年寄り魔女なんて俺の趣味じゃねーぞ。
「ワシもアンタはタイプじゃないねえ」
「なん…だと?」
ゾクッとするとはこのことだろうか。魔女といえば変身魔法とか攻撃魔法を使うはずだ。しかし、この魔女なんとテレパシーを使う。
いや、本物の魔女なんて見たことないし俺の常識が通用するとは限らないか。
ん?ちょっと待て。さっきのユーモアのくだりとかも聞こえてたってことですか。
前方を見るとニヤついた老婆がいた。なんかすごく恥ずかしいですね。わーい。
「お主、こんなものが趣味なのか」
「いいだろ別に、高校生の俺がミリタリーグッズ持ってちゃ悪いか」
そういってタンスの上のMP18を持ち上げ、眺める魔女。「魔女は杖に飽きたので、短機関銃を持つことにしました」みたいな物語が始まっちゃいそうなんですけど大丈夫ですか。
「たしかに何年もこの杖じゃし、これを新しい装備にしようかのう」
そういえば、特性テレパシーの魔女さんでしたねアンタは。なんだろう俺という人間を見透かされている気がして全く慣れない。
「ほう、ここをこうすれば発射できるのだな」
次の瞬間、とてつもない発砲音が部屋中に響き渡る。何が何だかわからない状況で唖然とする俺。
悪魔みたいな笑い声で銃をもつその姿はこの世のものではなかった。
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