第135話 5大会議 part3

「確かに今年であったな」

「この間に狼牙族の戦士として精進せねば」

「私も【守護の聖女】としてレベル上げないと」

「良かったですねソリトさん!」

「ソリトが行くならお供しますわ」


 全員各々にダンジョン島というワードで盛り上がりを見せるが、ソリトは初耳で展開についていけていなかった。


「ダンジョン島っ何だ?」

「「「「「え?」」」」」


 そう口にしたソリトにぽかんと目を見開いた視線が集まる。

 ただ一人、リリスティアを除いて。

 彼女だけは苦虫を噛み潰したような表情で頭を抱えていた。

 一呼吸すると、リリスティアがソリトに頭を下げてきた。


「申し訳ありません。ソリト様が知らないのは元国王のあの人が隠蔽していたからと思われます」


 ルティア達の発言からして、普段の場所よりも自身のレベルなどを上げることが出来る島なのだろう。

 私情で回った所で勇者が弱ければ魔族、魔王との戦いで敗北に繋がりかねない。

 だが、グラディールはダンジョン島の存在を教えなかった。

 彼にとって、ソリトは死んでも構わない存在だったのだろう。

 今となってはそれも分からないが、現在の状況にならなければ、ソリトはダンジョン島の存在を知ることすらなかった可能性が大きいのは確かだ。


「チッ、あのクズ王が」

 

 故に、そのクズ王の妃の前でも愚痴のように一言吐き捨てたくなるのは仕方のない事である。


「で、そのダンジョン島ってのは何なんだ?」


 ユリシーラの説明をまとめるとこうだ。

 ダンジョン島はステラミラ皇国の西方面の海の先にある諸島。

 そこにある普段は何もない洞窟が、七年に一度だけそこは島の至るところに魔物の溢れ、城内、草原、砂漠といった場所、迷路構造へと一変した領域となるらしい。

 それをダンジョン、と呼ぶそうだ。

 そこでは時々宝箱が発見されることもあるらしい。

 更にダンジョン内の魔物は経験値が多く、レベルやステータスを短期間で底上げ出来るという。


 この後、支度をして早速今回の件を調べる予定だったソリト。

 今回の件、どうにも自分が無関係には思えなかった。

 逆に大きく関係しているような気がしている。


 ただ、七年に一度数日しか現れないダンジョンはとても魅力的だ逃すのは惜しい。

 頼るようで癪だが、ダンジョン島に滞在する間の情報収集は国やギルドに任せてレベル上げ等に集中する事に決めた。


「うーん……それだと冒険者の多くのはダンジョン島に流れる事になりますね。ギルドが手薄な状態で長期間依頼で開けるのは少々軽率………」

「でしたら、その間は各国の騎士団の探索の小隊を少し増やしましょう」

「そう致しましょう」


 騎士団がカバーすると言えどそこまで人数を探索には割けない。

 だとすれば、三、四日で情報が簡単に集まる事はないだろう。

 少し出遅れるくらいなら尚更ダンジョン島で力をつけるべきだろう。


「あ」


 ソリトはダンジョン島でのレベル上げの前に一つ問題がある事に気が付いた。

 ここ中央都市アルスの防衛戦でドーラはLv.35に達した。

 ソリトは問題ないが、ドーラはランクアップしなければレベルやステータスが上がることはない。

 育てることに決めたのはソリト自身で使い魔の世話は主の役目。

 ならば、強くなりたいと願うドーラのためにもランクアップは必須だ。


「悪い急用が出来た」

「えっ、待ってください」

「じゃあな」

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!」」」」」


 影の中に消えていくソリトを見てルティアを除いた全員が驚愕の光景に叫ぶ。

 気に止めることなくソリトは【影移動】で足元の影から一足で飛びで一階まで移り聖剣、聖槍との繋がりを辿って、ドーラ達の待つ部屋の真下へ到着した。


「あるじ様ー!」


 浮上するなり、気配を感じていたのかドーラが駆け足でやって来るとソリトに飛びついた。


「マスター、話、終わった?」

「ああ」

「マスターさん、お疲れさまッス。おおおお紅茶とお菓子あるッス。食べるッスか?」

「いや、今は…」

「あ、そうッスよね。うちがススめる物なんて食べたくないッスよねって痛い痛い痛い!!」


 ゆっくりソリトの所まで歩いて会話する途中で、卑屈になる聖槍の胸に向かって、聖剣は飛び込むと鷲掴んでそのままぶら下がり始めた。


「もっげる!!もげるッス!!!!」

「むぅ…垂れず、弾力と張りで私を支えてるのに」

「あう…痛い!!ん…でも……聖剣、揉んじゃダメッス。あだっ、変に痛いッシュ〜!!」

「………ドーラ」

「あのデカイお姉ちゃん助けないんよ?」

「そのうち終わる」

「ひでぇッス…」

「分かったやよ」

「分かっちゃ…痛きもち良い!」


 苦痛と快感の混じっただらしない表情をしながら聖槍は聖剣を懸命になって引き剥がそうと必死だが、ソリトはその光景が子どもと大人、母と子が戯れているようにも見えた。


「卑屈駄目。そして乳寄越せ」

「上げられるなら上げてるッス〜!」

「…………マスター悩殺と仮定」

「違うだろ!あとするなよ!?」


 胸の事になると聖剣はアホになるらしい。


「それともかく。ドーラ、ランクアップに行くぞ」

「んよ?…ランクアップ?」

「くっ化け乳め……もみもみ」

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