第17話旅に備えて
『ロックロック三体を討伐により全能力が上昇します』
『グリーンワーム三体を討伐により全能力が上昇します』
『ブラウンワーム三体を討伐により全能力が上昇します』
『グリムバード二体を討伐により全能力が上昇します』
『レインフロッグを討伐により全能力が上昇します』
『スキル【
『スキル【研磨】獲得』
【裁縫師】
裁縫技能を付与する。(一段階アップ状態)
服修繕技能を付与する。(一段階アップ状態)
スキル効果により裁縫技能、服修繕技能が一段階上昇する。
【研磨】
武器修復技能を付与する。(一段階アップ状態)
スキル効果により武器修繕技能が一段階上昇する。
あれから一週間と一日が経った。
【裁縫師】は野宿用の掛け毛布を作り終わった時に獲得した。途中で獲得させてほしいと懇願したいが、条件が作製した時とかだったのだろうと如何にも初心者が作製した毛布というシワあり、二重に縫った箇所ありという物が出来た。
それから五回ほど繰り返し作ってようやく満足の行く物が完成した。
【研磨】は村を拠点にするにあたって武器屋に寄って小さな研磨石を購入して宿部屋て聖剣を研磨した際に獲得した。
順調にソリトのレベルも55に上がった。ステータスもレベル不釣り合いな程に上昇している。
スキルは二つだけしか獲得することはなかった。
滞在中は商人が二日に一度一日滞在するので、馬車を引く宛が見つかるまでには困らなかった。
ちなみに宿代は食事込みで銀貨一枚。ソリトの場合は調理させてもらっているので更に一枚払って、【見習い薬師】を獲得してからは薬を主に村で安めに売り、街には薬草を中心に薬を売っている。
品質が悪いので保証はできないと念を押しての売買だ。
この辺りの魔物ではステータスの成長は森の方で討伐したレインフロッグという初めての魔物を討伐して以来見込めなくなった。
ステータス成長は反転してから既に討伐したことのある魔物も全て初討伐と判定されボーナスとして上昇し、その後は魔物のレベルがソリトより低くいか同一であれば二体以上は討伐しなければ成長しない。
逆にソリトより高レベルであれば必ず一体で成長するらしく、また、倒す魔物によって全能力上昇時、上昇するステータスが変わるらしい。
例えば、ロックロックは防御力が高いので防御力を他より成長させるといった具合に違いが出る事がこの一週間で判った。
そして、今はただの金稼ぎになっている。強くなる為には無駄な行動になりつつあるが、生きるための生活面では有難い。
他にも裁縫師で外套や魔物の毛皮毛布を作って売ったり、薬や薬草等物を売っていったお陰で銀貨二百枚まで集まり合計金貨二枚、銀貨二百枚、銅貨五十枚まで貯まった。
あとは馬車を引く馬が来れば良いのだが、遅すぎる。
なので、ソリトは村長の家まで尋ね、ここを離れる事を言いに来た。
「というわけだ。村長、世話になった」
「お、お待ちください、まだ馬車が…」
「その馬車を引く馬が来ないから発つんだろ」
別に急ぐ旅ではない。森があり、山がありで時間が掛かっていると思って待っていたが、遅い。せっかくの村長の好意を受け取らないのもどうかと思うが、ソリトとしては成長の見込めなくなったこの場所からそろそろ離れたいのだ。
「なら、こっちで宛が見つかったらその時馬車を貰うことにする。それで良いか」
「そ、そうですか」
村長がホッと安心した表情で肩を小さく落とすと、次の瞬間姿勢を正した。
「申し訳ありません」
村長も思うところがあったのは間違いない。ソリトは謝罪を直ぐ受け入れた。
「遅れる理由とか分かるか」
「いえ」
「………そうか」
伝えることは伝えた。
後は旅に備えて買い揃える物を買わなければならない。
そうなると出るのは明日が良いだろう、とソリトは予定を決める。
「それにしても、聖女様は何処に行かれたのでしょうか」
村長の何気ない言葉にソリトは
あれ以来、ルティアの姿を街でも村でも見ることはなくなった。
宿の女主人も見ていないらしい。
「聖女だろ。別の場所に行ったんだろ」
「やはりそうですか」
この会話を最後に村長の家を出た。
その後少し歩いた先で止まり、ソリトは一つ溜息を吐く。
何故自分がこんなにも悩まなければいけないのか。それを二つ後ろの家の物陰に隠れて後ろから付いてくる聖女に言ってやりたい気分だった。
ルティアがいなくなったのは事実だ。
だが二日前、何処に行っていたのかふらっと帰ってきた。そして、それからの二日間はずっと何故か隠れて付き纏ってきている。
気付いたのは薬草採取のついでに森で魔物を討伐した後の帰りの道中を付いてくる気配があったからだ。それがルティアとは限らないが接近してくる魔物を気配感知で捉えて身構えた瞬間、後ろからガサッという音がしてから暫く経った後魔物の断末魔が聞こえてきた。
先に宿にも帰っているようだが、女主人は知らぬ存ぜぬという顔でいつも通り仕事をしている。おそらく聞いても教えることはないだろう。
どういうつもりか問い詰めようとその翌日、本気で踏み込み距離をつめたが、またルティアも同時にその場から直ぐに姿を消し、また暫くしてひょっこりと戻って来ては後ろから付いてきてのだ。
しかも戻って来た時、逃げた先で何かあったのかすすり泣く声が聞こえてきた。
宿に戻ると女主人が掃除をしていて、所々床がヌルヌルしていた。その日は蛙の肉が調理場にあったのでソリトはルティアに何があったのか何となく察して、今日に至る。
街までの街道を歩いていくと、ロックロックが現れた。
赤い。色違いだ。
剣を抜かず拳で殴った。
後ろに押すことは出来たが硬い。
赤いロックロックは硬さが増しているようだ。殴って倒すのは難しそうなので、今度は聖剣を抜いて斬り付ける。
しかし、弾かれた。
距離を置こうとソリトが踏み込もうとした瞬間、赤いロックロックが自身を高速に回転させて迫ってきた。
既に体勢は後ろに傾いている。
回避は難しい。
「フレイムボール!」
中級威力の初級の火魔法を赤いロックロックに放つ。
しかし、高速回転しているせいか放った火魔法は少し速度を落とした程度で残りは弾かれた。
「それなら」
ソリトは一旦後ろに下がって距離をとって赤いロックロックから少し離れた場所に照準を変えて手を翳した。
「フレイムボール!」
赤いロックロックが定めた場所の一歩前に来た瞬間、火魔法を放った。すると、地面に直撃した火魔法が爆発して、レッドロックロックは爆風と共に空中に吹き飛んだ。
重厚感ある音を響かせて地上に落ち、地面にめり込む。
ただの岩ならあるべき場所に戻ったといったところか。
その間にソリトは赤いロックロックの至近距離まで近づき跳躍し、真上から聖剣を叩き割る要領でぶつけた。
同時に衝撃で十メートル程の範囲にクレーターが出来上がり、ピキピキと赤いロックロックが半分に割れた。
『レッドロックロック討伐により全能力か上昇します』
『武技:鉄槌割り習得』
今ので武技を習得したらしい。
タグを握り内容を確認する。
鉄槌割り
剣撃と同時に衝撃波を相手に直接叩き込む剣技。
効果:防御力貫通
(よっしゃああああああ武技だぁ!)
最近技能系スキルばかりだった為にソリトは大いに喜んだ。
効果は中々に優秀だ。
ただ、上段からの攻撃によるものとなると使う幅が狭まる。
喜びはしたが、今はまだ幅広く使える流星閃だけにした方がいいかもしれない。
「…にしてもおかしいな」
四日前くらいからか。少しずつだが、魔物が減ってきていた。
この静けさに胸騒ぎがソリトの胸の内で密かにしていた。
旅支度を早めにした方が良いかもしれない。
「少し急ぐか」
すると、ソリトはロックロックの素材を持って走って街に向かっていった。
「いらっしゃいませ。おお、あなたはこの間の」
「明日、ここから離れようと思ってな」
「なるほど、どうぞ見ていってください」
馬車がないとなると馬車無し前提で買っていかなければならないので、揃える数は当然少なくなる。それでも今後を考えると旅袋では心許ないのでリュックを買う事にした。
それから、一人用の小さい調理道具や調合した薬に必要な小瓶など幾つか購入した。
その時、前回余り御礼出来なかったということで、銀貨一枚と銅貨三十枚でかなり軽く丈夫な道具ばかりを購入させてもらった。
「そういえば聖女様は?」
ここでもか、と心底思ったソリト。
そう名乗っているだけかもしれないが、別にどちらでも良かったりする。
そのルティアは【癒しの聖女】。
その聖女が以前はいて今はいないのだから疑問に思って当然かもしれない。
ソリトにとってはただの付き纏い聖女なのだが。
「外にいる」
「そういえば、聖女様とのご関係は」
「付き纏われと付き纏いの関係だ」
「付き纏ってません!」
聞こえていたのか扉を勢いよく開けてルティアがソリトに否定を求めてきた。
「と、このように自覚無しの可哀想な聖女だ」
「まさか、未知の病でも!」
「可哀想でもましてや未知の病を患ってなどおりません!」
一週間以上間が空いて溜まっていたのではないというほどに即座にツッコミをルティアはソリトに返してきた。
思わずソリトは拍手した。
「拍手に喜ぶ事ができません」
ソリトは落ち込んでいる今のうちにルティアの背後に回り外套の首根っこを掴み持ち上げて店を出た。
「あのソリトさん、私猫じゃないんですけど」
「首根っこ掴まれてる時点でお前は猫だ」
「にゃーんって違います!恥ずかしいので下ろしてください」
言われたのでルティアを地面に下ろした。
「で、どういうつもりだ」
「………って……け…いだけです」
「ん?」
「放っておけないんです!それだけです!以上です!」
押しきってルティアは一言だけ言い放った。
放っておけないだけ。そこに何故という疑問が直ぐにソリトの頭に浮かんだ。
というか恩返しは何処に行ったのか。
「お腹空きました」
腹を鳴らし、顔を真っ赤にしながらソリトの顔を見て言う。
「飯にするか」
話を一旦止めて、酒場とは別の飲食店に首根っこを掴んでルティアと向かった。
――――――――――――――
蛙といえばこの〇ば。
でも、あんなに大きくはないですので、食べられはしませんでした。
作者の設定上はです。
そこは皆さんのご想像にお任せします。
あくまでこんなイメージかなって思っていただければという例えなので。
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