42.地底湖
◇◇
赤の領域。
ドワーフ達は総勢20名ほど。ロフストを始め、皆が強い決意を秘めたような
「ドワーフの皆さん、その
クウは並んだドワーフ達を順番に見ながら言う。ドワーフ達の着ている鎧と斧には、どちらからも鋭い
「もしかして、あの"
「おう、見れば分かるだろ。──"輪"を持った"
「そして私も、その
フェナが腰に
「竜の一部を使ったこの装備があれば、俺達ドワーフでも
「そう言ってもらえると、僕も無茶をした
クウはドワーフ達に背を向け、前方を見た。フェナもクウの隣に立ち、同じ視線を向ける。
クウの眼前には、まるで巨大な
「クウ、こういう景色が珍しいの? ──この一帯は火山なのよ。私の知ってる"賢者"の話では、気の遠くなるような大昔、この山の下に
「火山の
フェナは不思議そうな顔をしている。クウの口からまたしても、イルトに存在しない単語が出たらしい。
「カルデラは、
「その通りよ。──クウ、どうして分かるの?」
「前世での読書から得た浅い知識と──緑の"輪"で探知した、空気の感じかな。この下の空間にある空気が、見かけより少ない感じがしたんだよ。だから、別の何かが満ちてるんじゃないかと思ってね。水とか」
「"人間"って"輪"の力だけじゃなく、洞察力と地理学の知識まで持ってるのね」
「
「私にはそうは思えないわね。──それと、クウの前世の世界に、
フェナはクウに笑いかける。クウには、少し色目を使っているように見えた。
「さてと。クウ、そろそろ行きましょう。──お姫様を探しに、素敵な場所へ」
クウとフェナ、そしてドワーフ一同は、大穴を下へと進み続けた。
道中では何体もの"
今もまた、大穴の
「またか……。"
「おう、クウ。何だ?」
"
「僕たちは今、ガガランダ鉱山──元ガガランダ王国のお城に向かってるんでしたね」
「ああ、そうだが?」
「お城は──本当にこの穴を進んだ先にあるんですか? 進むにつれて視界はどんどん暗くなり、"
「ははっ、暗い所が怖いってのか? "
ロフストはそう言うと、頭上に"
「これぐらいの高さなら、丁度いいだろ。──さあ行くぜ、おめえら」
「えっ、ロフストさん? ──なっ、皆さんまで……何を!?」
ロフストはそう言うと、足場から──大穴の中央に向かって跳び降りた。ロフスト以外のドワーフも、その後に続いて次々と大穴の下の暗闇へと吸い込まれるように跳び降りていく。
穴の暗闇から複数回、ボチャンという水音がした。ドワーフ達の着水する音だろう。
「クウ、フェナ! お前達も来い! なるべく穴の中央を狙って跳ぶんだ! ──俺達は、先に行ってるぜ」
ロフストの声が、穴の下から響く。クウが
「良く分からないし、怖いけど……行くしかないかな。──よし、フェナ」
「私、
クウはフェナの──剣を持っていない方の手を取り、穴の中央に向かって跳んだ。クウとフェナは同時に着水し、
「────っ!」
水中で
体が赤い光が生じ──その部分がどんどん消えていく。
光り出した腕や胴体の一部は溶けたように消え去り、虫喰い状態になっていた。クウの手を握っているフェナにも、同じ現象が起きているのだろう。暗い水中で、クウにはフェナの顔は
クウはフェナの手を握り、フェナの方もクウの手を放そうとはしない。二人は
「──っわあ!」
謎の空間に、突然クウの声が反響する。
赤い光に包まれたクウとフェナは、気が付くと──澄んだ水に満ちた、広い地底湖のような場所の水面に浮かんでいた。
地下と思わしき場所だが、周辺は妙に明るい。まるで電灯のように、外壁の至る所が発光していた。
「ああ、びっくりした……! ──これは一体、何が起きたの?」
「多分、魔法で瞬間移動したのよ。これは恐らく──"
「"ウェゲナー"──?」
「空間と空間を
「つまり、あの湖そのものが──"輪"の魔術師の一部だったの?」
「そうかもね。"輪"の本体は、きっと別にあると思うわ。──さあ、ドワーフ達と合流しないと」
フェナは繋いだクウの手を引きながら、立ち泳ぎで岸に辿り着く。水面から上がると、クウの手を引っ張って岩場の地面に立った。
「──もう。
フェナは不機嫌そうにそう言うと──着ていた黒い
「これでいいわ。──クウ、行きましょう」
「……僕はよくない。何て言うか、目の毒だよ」
「毒? 私、今は毒なんて使ってないわよ」
「いや、何でもない。──僕が
フェナの刺激的な姿を直視しないように、クウは歩き始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます