36.クウの本性
クウは"
"
「あ……」
鈍重そうな巨体にそぐわない、凄まじい速さの
そんな棒立ちのフェナの身体が、"
剣を持ったクウが、溜めた"輪"の力で自分の身体を吹き飛ばし──フェナに体当たりしたのである。
「きゃっ!」
フェナはクウの衝突によって、後方に飛ばされ転んでしまう。フェナは反射的に体勢を立て直し、すぐさま"
攻撃を終えた"
「あ……。ああっ……」
フェナの顔が青ざめる。"
クウの腹部からは、大量の血が
「い、嫌──。クウ──!」
"
「クウ──! クウっ──!!」
フェナの悲痛な叫び声が響く。
クウは目を閉じ、眠った様に動かなかった。
◆◆
清潔なシーツの敷かれたベッドの上で、クウは目を開けた。
「──はっ」
直前の記憶を
クウは自分の身体を触る。腹部には──今しがた"
「あれ……まさか……。そんな……!」
クウは、この上なく暗い表情になる。クウは今着ている自分の服が──
「う、嘘だ……。じゃあ、あれは全部、夢……?」
クウは震える両手で、自分の頭を
「そんな……いきなり、何で……。嫌だよ……嫌だあっ……!」
クウの目から、
「じゃあ、最初から……僕は……。やっぱり、僕は……。ううっ、うう……。うああっ……!」
クウははっとして、鳴き声を
「待てよ……おかしい。入院して以降、僕の身体は──こんなに動かせない
クウは突然、ベッドから立ち上がった。体に何一つ、不調は感じられなかった。
「どうなってるんだ……? 分からなくなったぞ。僕は──」
クウは力を込めた自分の左手を、じっと見つめる。──
「──"輪"! これは──"輪"だ! じゃあ、僕のイルトで過ごした出来事は──!」
「
不遜な口調の、クウには聞きなれた声が聞こえた。
クウは病室──と思わしき空間の、窓辺に近づいて窓を開ける。窓の向こうに──ある人物が浮かんでいた。
「──フェナ?」
うっすらと緑色を含んだ白い長髪を
衣服は──何も着ていない様に見える。
「人間──いや、"クウ"よ。案ずる事は無い。この場は貴様の意識、その
「神様──。 今度はフェナの姿に? ──どうして?」
「そんな
フェナの姿を取った神は──瞬時にクウの背後に移動すると、クウの背中に優しく手を
「人間はやはり面白い。
フェナの姿をした神の手が──
「新たな生を
「二つの才能──ですか」
「そうとも。
クウの背中に、紫色の"輪"がはっきりと浮かび上がった。
「さあ、
クウの意識が、再び遠くなっていった。
◇◇
「クウ……。クウっ……」
「
フェナもドルスも、新しい傷が
ドルスが岩場から顔を出し。周囲を警戒する。──"
「俺達を見失っているが……ここを出ればすぐに見つかるだろう。まだ、動けないな」
ドルスの状況報告を、フェナは聞いていない様だった。心ここにあらずといった
「──
「フェナ、お前……」
「そんな男は、今まで誰もいなかった……。やっと、会えたと……思ったのに……」
フェナの目から涙が落ち──閉じたクウの
「──ふっ」
「えっ……?」
「──いつまでも、寝ていられないな」
信じられない事が起こった。
クウが──地面に片手をついて、動き出したのである。
「クウ──!」
クウは立ち上がり、ドルスとフェナに背中を向ける。その背中に──紫色の
先程クウが"
「フェナ。ドルスさんと、ここで待ってろ」
「く、クウ……?」
「心配しなくていい。すぐに"
クウは何の前触れも無く振り返ると、フェナの両肩をがっしりと掴む。そして、フェナの負った傷の一つ──首筋にかぶり付いた。
「クウ、何を──? あっ──!」
クウは、フェナの体表の血を、皮膚ごと吸い上げる。フェナは
「吸血鬼の
掴んでいたフェナの身体を、クウはやや乱暴に突き放す。──クウの背中の"輪"に宿る、紫色の光が少し強さを増す。
「──"
その言葉を発したクウの全身から──紫色の煙が
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