21.宮殿へ
「……聞いておかなきゃいけない事があるんだけど」
「何かしら?」
フェナは自分の長髪を指で
「君を
「そんなに身構えなくていいのに。──質問の答えとしては……首筋に牙を押し付けて、私が
「そしてその後、僕は急いで首を
「そうはならないわ。あなたの血は何て言うか……栄養価の高い物質を、無理に一つのボトルに
「
「それが私の長所の一つよ。──悪魔を
フェナは
「それで、どうなの? 私を手に入れたくなったかしら? ──あなたは私に血を分け与え、私はあなたに私自身を
「それに、なし
「こちらこそ──クウ。うふふ」
二人は、極めて自然な笑顔でお互いに笑い合った。
「──けえっ、昼間っからイチャつきやがって。てめえら、来る場所を間違えてんじゃねえかあ? ああ?」
クウとフェナが後ろを見る。
ジョッキを持ったノームの男が、酒臭い息を吐きながら二人を
「ここは男と女が
クウが、フェナの手を引いて立ち上がる。
「店に入った時から、こうなった場合はどうしようか考えてたんだ。僕の結論は──相手にしないのが正解。さあフェナ、すぐにお会計して、とりあえず外に出よう。──あ、すみません。お会計をお願いします」
クウが、近場にいたエプロン姿の女性に声を掛けつつ手を上げる。酔っぱらいの男が、ジョッキを持っていない方の手で、クウの手首を
「おい、待てこの野郎。無視してんじゃねえぞ、コラ」
「うわ、止めて下さいよ。──財布が取り出せないですって」
その様子を見て、フェナが動く。ノームの男にずいっと顔を近づけると、怖い顔で
「下らない
見事な
「あなた、どうせ
「このクソ女──!」
確実に余計な一言である。
男の怒りの炎に、
「フェナ──!」
すかさずクウが、男を真横から突き飛ばす。男は空中に投げ飛ばされ、離れた場所で飲んでいた男数人が座るテーブルに見事に
「えっ? ……嘘でしょ」
クウは
店内が、何とも言えぬ空気に包まれた。
クウはアールマスに貰った硬貨の袋を──そっと店のカウンターに置く。そして、フェナの手を引いて
「──ああ、やっちゃった」
額に手を当て、絶望的な表情で下を向くクウ。
「フェナ、あの人は大丈夫かな?
「大丈夫よ。──何度か振り向いて見たけど、あの男、何か
フェナは腕組みをしながら言う。
「クウ、気にする必要はないわ。確実にあっちが悪いもの」
「悪いのは君の口も、だよ。──考えてみたけど、やっぱり変だ。何かおかしい」
クウは自分の両手を見る。
「上手く言えないけど──確実に、何かおかしいんだ。僕、あんなに力が強い
「クウは、自分が思うより
フェナはクウの背中を見る。一瞬だけ──円形に紫色の光が生じた様に見えた。
「──気の
フェナは腕組みを止め、クウを見る。
「それで、これから
「王宮に行こうと思ってるんだ。他に行く当ても無いからね。──さっきの店に、貰ったお金袋ごと全額置いてきちゃったから、もう違うお店で買い物も出来ないし……」
「
「壊したテーブルの
クウは王宮の位置する方角を、自分の目で確認する。
王宮への入り口は、目の前だった。
「あの、すみません」
クウが話しかけたのは、王宮の門の前に姿勢良く立っていた、
「何か用かい?」
騎士がクウを見た所で、クウは──フードを
「大通りの看板を見たんです。"セラシア王女"様が──"人間"をお探しなんですよね?」
「ああ。──ちょっと待ってくれよ」
騎士は全く驚かず、門を離れて行ってしまった。意外な反応に、クウは後方に立つフェナと顔を見合わせる。
数分経って、騎士が戻って来る。騎士は、
「それじゃ、頭をこっちに近づけて」
「えっ……何をする気ですか?」
「そんなの、決まってるだろう」
騎士は銀色の
「あの看板を見て、自分が伝説の"人間"だと名乗り出たのは──君で多分、18人目だな。髪の毛に炭を塗り込んで黒くしたり、"魔法薬"で一時的に色を変えたり、様々なアイデアを色んなヤツに見せてもらったよ。──さあ、君は何どんな方法で変装してるのかな?」
「いや、ちょっ──。痛いし──冷たい──!」
「ああ、ちなみにこの水はただの水じゃない。宮殿の魔導士に
「痛い──! 指が! 指が食い込んでます──!」
クウは情けない声で
「全く変化が無いぞ。こんな
「──騎士さん、その辺でいいんじゃないかしら。
フェナの発言で、騎士は手を止める。
「まさか、君は──本当に?」
クウは無言で腰の"
クウの意識に反応し、剣の刀身が──強い緑色の光を
「それは──まさか、"輪"か?」
騎士は激しく
「こ、これは済まなかった──! 君もいつもの連中と同じで──王宮に入り込むためにイカサマをしているのかと──!」
「いえ、いいんですよ。分かって頂けたら。──へくしゅん!」
クウの
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