第4章 2
優子の目には喰らうモノを圧倒しているように見えた茶々であったが、実際にはなかなかにギリギリの戦いを強いられていた。
喰らうモノは喰らってきたモノに擬態する。しかも喰らったものを適当に継ぎ接ぎするので同じ姿をしているモノはほとんどいない。
例え姿が似ていようと全く違う戦法をとる喰らうモノたちを瞬時に観察し対処するのは相当に骨が折れる作業だった。
だが、泣き言を言っている暇はない。
とにかく優子を守るためには派手に暴れて喰らうモノ達の注意を自分に引き付けるしかない。
「ああ、茶々も何かズバーンって強い必殺技があればなぁ」
経験を積んだ勇者は、それぞれに独自の技を編み出すことが出来るが、新人の茶々には未だそういった技はなかった。
その代わりに茶々にはやや特殊な大地操作という異能があるのだが、こちらは『一度に発現できるのは一つのみ』という制限があった。
そして、その異能は今は優子とティアーネが籠る土のかまくらに使ってしまっているため使用不能という状況である。
「泣き言なんて言っている場合じゃないか!」
虫、小動物を単純に巨大化したモノから、果ては山に捨てられていたモノだろうかタイヤの姿をした喰らうモノまでいる混沌の戦場を茶々は剣を振り回し撹乱する。
そんな茶々の背後から『タイヤ』が勢いをつけて突進してくるのを気配で察した茶々が腰の入ったフルスイングで剣を振りぬく。
「ぬおおおおおお、根性~!」
勢いに負けそうになるも根性で押し切り『タイヤ』を他の喰らうモノに対する砲弾にして数体を倒すことに成功するが、未だ敵の数は減る様子を見せない。
いや、むしろ戦いの気配を察した喰らうモノ達は本腰を入れて数を頼みに茶々と優子たちがいるかまくらに向けて攻撃を開始し始めた。
「この、お前たちの相手はこっちだっ~!」
ガンガンと優子たちを守っている土壁に体当たりを繰り返す喰らうモノたちを引き離そうとするが、茶々の前に別の個体が現れ進路を塞ぐ。
幸いと言うべきか、敵は数を重視し質の方はそれほど高くない。
この周囲にいる喰らうモノのほとんどは力の源となる核すら持たない『使い捨て』の尖兵ばかりだ。
だが、それでも数が多ければ倒すのにも突破するのも難しいし、例え生命れ力は低くても攻撃能力は核がある個体とそれほど違わない。だから決して油断できる相手ではない。
「ああ、もう!師匠みたいにこいつら一気に薙ぎ倒せたらいいのに!」
ここにいないリョウならば。
きっと無人の野を征くが如し、目の前の敵を一瞬で屠っていくだろう。
だが、ここに師リョウはいない。
「とにかく一体でも多くの敵を倒すしかない!」
行きつく答えは脳筋だが、今の茶々にはそれしかできない。
一気に敵の群れに飛び込み当たるを幸いに剣を振り回す。
その光景を優子が見ている事に茶々が気づくことはなかった。
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