64話

「さくら、帰ろうぜ」


「…」

あれ。聞こえてないか?


「さくらー、さくら。帰らないのかー?」


「へ、あ! ふーくん、ごめんね。ぼーっとしてた!」

おっと? から元気…だな。


「なんかあったか?」


「ううん、何もないよ〜。帰ろ?」

…おかしいよな。でも、本当にぼーっとしてただけってこともある…のか?




「それで、智がさぁ…」


「…」

うーん、やっぱ変だよな。


「さくら、大丈夫か?」


「あ。ごめんね! 智くんが?」

聞こえてはいたのか。


「さくら、何かあったなら言ってほしい。俺にできることはしたいから」


「…」

やっぱ何かあるのか…。言いたくないことってこともあるか。


「言いたくないことなら大丈夫。でも、言いたくなったら教えてくれるか?」

無理に言わせるのも嫌だけど、さくらが悩んでいるのも嫌なんだよなー。


「…ありがとう。ほんとはちょっとあるけど、今は言えなくて…。言える時に言うね」

さすがにうまくかわせないと思ったんだろうな。さくらが自分で考えたいことなら無理強いは良くないよな。


「そっか。無理には聞かないけど、困ったら頼ってくれよ?」


「うん! ありがとう!」


…ん? 待てよ、女子なりのお悩みとかで俺には相談できないとかだったらゆみさんたちにって思ってたけど…。俺に関する悩み…とかだったら…。いやいや、そんな訳ないよな! 今だって一緒に帰ってくれるし…無理させてないといいな。…いや、俺も悩んでたら良くないし。さくらの悩みが解決するように願おう。

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