第3話 謎の人物からの贈り物。
私の名前は岩佐美希。高校二年生。十六歳。一人暮らしの女の子。
たった今事件が起きた。謎の人物からコンビニのレジ袋を渡された。
その人は全力疾走で走って去って行った。
袋の中には食べ物がいっぱい入っている。おにぎりやパスタ。そして贅沢品のポテチや炭酸飲料。
その人は私のクラスメイトで名前を『すずきいちご』と名乗っていた。
いちご……最後に食べたのはいつだろう……覚えていない。パパとママが生きていた頃に食べた記憶があるくらい。って、いちご違い。その苺とは違うね。
貰ったコンビニの食べ物……食べていいのかなぁ。でも……もったいないから遠慮なくいただきます。
今日は何も食べていない。袋の中にある食べ物の誘惑に負けた。お腹はペコペコ。
最後に食べたご飯は昨日の夜。バイト先の焼き鳥屋のまかない。親子丼とお吸い物だ。まかないは私の大事な栄養源。でも今日はバイトはお休み。夜ご飯は抜きの予定。
お腹が『ぐ〜』と鳴った。もう我慢できない。袋からおにぎりを出し包装を開け——
「——ぱく、モグモグ……ゴキュ。お、美味しい。コンビニのおにぎりはいつぶりかなぁ」
脳に栄養がいくのが分かる。頭が覚醒してきた。
「つ、次は、久しぶりの炭酸飲料。おりゃ」
蓋を回すとプシュと音を出すペットボトル。ゴキュゴキュ——
——ぷはぁ。くぅぅぅ。う、うまし。キンキンに冷えてる。カラカラの喉に染み渡るぅぅぅ。炭酸飲料はこんなに美味しかったの? 忘れてたよ〜。
さてさて、残りは晩御飯で食べよう。ありがといちご。生き延びたよ。
いちごに何かお礼しないとね。貰いっぱなしはダメだよね。でもいちごの家は知らないし……。明日もココを通るかなぁ。
べっ、別に食べ物欲しくて待ち伏せするんじゃないんだから。お礼をしたいだけなんだからね。
除草剤を撒かれた野草は食べれない。図書館で借りた本。別の場所でつかお〜と。
夏のお昼は暑い。着ている半袖体操服とジャージは汗でべっとり。住んでいるアパートにはエアコンなんて贅沢品はない。優しい大家のおばあちゃんに貰った扇風機だけ。
今日は贅沢に威力大で浴びよう。タオルを濡らして首に巻こう。
素っ裸で過ごしたいけど……外から丸見えだからそれはダメだね。カーテン閉めたら暑いし。
……ん? 袋が冷たい。こ、これは……あいしゅだぁ。カップのアイスクリームだぁ。
と、溶けちゃう。急いで帰って冷凍庫に入れないとぉ。そして夜に食べよ〜。
いちご、ありがと〜。
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