第541話 ではでは、始まりの夜会まで……
執務室には、所狭しとなかなかの人数が集まった。今回の1番の驚きは、ライズではあるのだが、みんなの驚きは、そのライズを公の寝台へ送ろうかなと言った私の発言が1番驚いたらしい。
私の方はナタリーとセバスに報告をできたので、今日の集まりは終わりだ。
あとは、ナタリーに夜会用の衣装合わせをしてもらえば、今日も少しだけゆっくりできる。
公都にせっかく戻ってきているので、子どもたちを連れてお出かけもしたいなと思っていたので、解散とした。
解散と言っても解散にならないところが、いいところというか悪いところというか……このまま、ウィルとセバスは、今後の打ち合わせしていくらしい。パルマがお茶のおかわりの準備をしていた。もちろん、自分のカップも用意していたので、セバスに城のことを報告するのであろう。
ノクトは、それをおもしろそうに聞き入っているし、私の護衛としてついて行ったウィルは謁見での話をするようである。
ナタリーはデリアとリアンが持っている私のドレスについて、デリアとライズに語りだした。こうなっては、誰もこの部屋から出て行かないだろうことは、容易にわかる。
私は、手すきになったので領地からきた手紙を読むことにした。ナタリーが満足のいくほど語ってくれるなら、私は、それを盗み聞き、自分の話す材料としてしまう。
そんな混沌とした執務室に入ってきたのは、ジョージアであった。
「アンナ、もう、謁見の報告は終わった?」
「はい、一応は……あとは、衣装合わせだけですよ?どうかされましたか?」
「いや、子どもたちと出かけると言っていたから、どうかと思って」
「そうですね、アンジェラたちも楽しみにしていたことですし、ナタリー、衣装
合わせをしたいのだけど、そろそろいいかしら?」
私はナタリーに声をかけると、夢中になって話をしていたことを謝ってくれる。
でも、ナタリーがどんなイメージで私用のドレスを作ったのか、デリアは聞いておかないと着飾るためには必要なことなので存分に意見交換はしてほしい。
この二人がいれば、公爵アンナリーゼはローズディア公国で一際輝けるのだから……私自身もアンバー領やハニーアンバー店の広告塔である。でも、私が指示をするより、私のことを知っている二人……いや、三人に任せた方がいいに決まっている。
「ジョージア様も衣装合わせに来られますか?」
「いいのかい?」
「えぇ、もちろんです!ジョージア様も私のことをよく知る一人ではありませんか?」
少し照れたように優しく微笑むジョージアの手を取り、ナタリーを先頭にデリアとリアンを連れ、執務室から出ていく。
「ではでは、始まりの夜会で……会いましょう!部屋は、このまま使ってくれて
構わないわ!お昼については、ディルにいるかいらないかだけ誰か伝えに行って
くれると助かるのだけど?お願いね?」
私は、私室へと向かい、先程見せてもらったドレスに身を包む。
私の二つ名である青紫薔薇の大輪がドレスを飾る。かなり豪華なドレスに私は嬉しくなった。
いつのときでも、新しいドレスは嬉しいものだ。私のためだけに作られたドレスは、見事に私の引き立て役になっている。
「ナタリー、素晴らしいドレスだよ!アンナが、いつもより輝いて見える!」
「そうでしょう、そうでしょう!今回は、金糸と銀糸も織り交ぜていますから、
いつもより華やかになっています!クーヘンの発案により、試しましたが……
やっぱり、人形に着せるより、ずっといいです!着心地はどうですか?」
「えぇ、問題は何もないわ!着心地もとてもいいし、柄も本当に素敵ね!気に
入ったわ!」
「良かったです。クーヘンにもそのように伝えておきます」
下地の上にレースがあしらってあるのだが、それが素晴らしい。金銀の糸を使っているので、いつも以上に豪華に見える。今までないドレスだったので、最初に着れることに興奮もし何より嬉しかった。
「早く、みんなに見せびらかしたい気分だよ。特に公へうちの奥さん綺麗でしょ
ってね?このドレス生地とレースの相性がとてもいい。アンナが着るから、余計
素晴らしいように見える」
ジョージアもナタリーも私の方を見て、デレっとしていた。
そんな二人を放置し、リアンがサイズの変なところがないか確認していく。ナタリーの採寸もバッチリであるため、直すところはどこにもなかったようだ。
「ジョージア様、着替えてきますから、子どもたちを玄関へ連れてきてくれますか?」
「わかったよ!じゃあ、後で」
そういって、部屋を出ていくジョージアを見送り、私はナタリーたちにドレスを脱がせてもらい、遊びに行くように服に着替える。
今日は、若奥様よろしくなブラウスにスカートを身に着けていく。どこから見ても貴族のご婦人ではなく、町娘だと言われてもわからない程である。
これをとデリアに手渡されたのは、出歩くようの小銭であった。
もちろん、今日は、家族でお出かけのため、ついて来るのはエマだけだ。
今回はネイトも連れていくので、お付として、エマを連れていくことにしたのだが、なんだかデリアがソワソワしている。
「やっぱり、私が付いて行ったほうが……」
「大丈夫よ!エマだって、立派にアンジェラの侍女をしているのですもの!任せる
ってこともエマの成長には必要だからね!」
デリアの肩をポンっと軽く叩いて私は私室を出て玄関へ向かう。
乳母車を押しているエマとどこに行くのかとソワソワしているアンジェラとジョージの後ろ姿がぴょこぴょこしているのが見える。
クスっと笑って、私は行きましょうかと声をかけると、ジョージアと子どもたちは私を迎え入れてくれ、街へと出かけるのであった。
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