第454話 計画ねりねりしましょう!

 ジョージアに春物ドレスを見せに行こうと、子ども部屋に行くことにした。

 廊下を歩いているとイチアから声がかかる。



「アンナリーゼ様!」

「あら、イチア。どうかしたの?」

「はい、先日話を聞いていましたアンジェラ様のお誕生日の件で、どうするか話を

 したいと思っていたのですけど……お時間はどうですか?」

「そうね……もうすぐだものね!わかったわ!時間をとるから……1時間後ぐらいに

 執務室にきてくれるかしら?」

「わかりました。セバスや何人か集めておきますね」

「うん、よろしくお願いね!」



 私は話が終わったと思っていたのだが、イチアの方は終わってなかったようだ。



「アンナリーゼ様、その春のドレス、とても素敵ですね!髪にも瞳に合っていて。

 見るものを魅了しそうです!」

「本当?ふふ、ナタリーにそう伝えておくわ!ナタリーの新作なのよ!」

「そうでしたか、あのご婦人は、本当に素晴らしいものを次々と考え出す。

 あれほどの方が、世に出てなかったのかと思うと……勿体ない話ですね」

「えぇ、本当ね!今では、ハニーアンバー店の稼ぎ頭のグループでもあるわね。

 ナタリーの存在は、私にとってもアンバー領にとっても大きな存在よ!もちろん、

 イチアもね!」



 にっこり笑いかけると、少し頬を赤らめ、そんなことないですよとはにかんだ。

 では、後程と去っていくイチアを見送り、再度、子ども部屋を目指す。



「ジョージア様、いますか?」



 子ども部屋をこっそり覗くと、ジョージアとアンジェラ、ジョージがベッドで川の字になって寝ている。

 真ん中で大の字になっているアンジェラを見てクスっと笑い、ベッドに腰掛ける。

 少し揺れたことで、ジョージが起きたようで、うぅ……と気が付いたようだ。



「ママ……」



 うっすら目を開け焦点の定まらない目で私を見つめている。



「おはよう、ジョージ」



 頭を撫でてやると覚醒したのか、私に抱きついた。

 お昼寝の時間には最近毎日本を読んであげていたが、今日は視察へ出ていたので代わりにジョージアが読んであげていたらしい。

 よくよく見るとお気に入りの本を抱いて、ジョージは寝ていたのかさっきまで寝ていたところに本が下敷きになっていたようだ。



「今日は、ジョージア様に本を読んでもらったの?」

「うん、でも、ママがいい!」

「……下手でごめんな……」



 ジョージアも起きたようで、横になったままこちらをみて苦笑いしていた。

 確か、アンジェラにも読み聞かせはジョージアがしていたと思うのだが……下手なのかとクスっと笑ってしまった。



「上手い下手の問題じゃないんですよ!ジョージは私に読んでもらいたいんです。

 そうでしょ?」



 もうすぐ2歳になる息子を抱きかかえる。



「なるほど……いわゆるアンナを巡るライバルということかい?」

「あらあら、ものすごく手ごわいライバル出現ですね?ジョージア様」

「確かに……アンナは忙しいけど、子どもたちへの愛情は俺への比じゃないからね。

 おかえり、領地はどうだった?」

「ただいま戻りました。うーん、これから畑の方が忙しくなるので……大変ですね。

 同時進行でいろいろとしているので、人手がたりません。

 かといって、これ以上人を増やすわけにはいかないので……ちょっと、やりくりを

 考えているところですよ!」



 ベッドに座り、私にキスをするジョージア。それをみて、ジョージも同じようにおねだりしてくるが、ジョージアが阻止をしている。

 そんな二人が可笑しくて、愛おしくて仕方がない。

 少し騒いでいたので、うちのお姫様も起きたようだ。



「アンジェラ、起きた?」



 ぼーっとした目で私をとらえ、おあよ……と言っている。どこまでもマイペースな我が子は、大物な感じでのそのそと私たちの方へ来てべたっと私に抱きついた。



「ここにもライバルが……」

「大変ですね?ライバルが多いって……」

「あぁ、本当に大変だよね。それで、それは、春のドレスかい?見せて!」



 目ざとく見つけてくれたので、私は二人を剥がし、その場に立って見せる。



「ママきれ―!」

「先に言われた……うーん、そうだね、アンナにしてはちょっと変わった雰囲気の

 ドレスだね?

 ナタリーのデザインだから、似合ってはいるけど、少し大人な雰囲気だね」

「ダメですか?」

「いや、いいんだけど、いつもと違うって意味で……そろそろ、可愛らしいアンナは

 卒業ってことかな?

 まぁ、淡いピンクのドレスをきている分には、まだまだ可愛らしいアンナでは

 あるけどね!」



 可愛らしいをやたら強調され、私ももう2児……3児の母になったのだから、少しくらい大人な雰囲気のドレスを着てもいいじゃないかと睨んでやる。



「私、もう大人ですからね!いつまでも可愛いアンナでは、いられません。

 それと、今から打ち合わせですから、執務室に来てください!デリア!」

「はい、アンナ様」



 後追いでついてきてくれていたデリアを呼び、子どもたちをリアンにお願いしてもらい、私は私室へと向かう。

 デリアにドレスをいつもの服へと着替えさせてもらい、私は執務室へと足を運ぶ。



 扉を開くとすでにジョージア、ノクト、ウィル、ナタリー、セバス、イチアにリリーが席についていた。



「すみません、遅れました!」



 そこに、三商人が加わる。



「私も今きたところだから、大丈夫よ!さぁ、座って!」



 みなが集まったところで、私はいつもの席に座ると、直前に迫る子どもたちの誕生日会について話をすることを伝えるとおのおの反応があった。

 まず、ジョージアは去年、そんな催しをしたことを知らなかったので、羨ましそうにしていた。

 次に、ノクトはそんなおもしろいことをしているのかと、口元を緩ませている。

 最後に、去年も参加した者たちは、もう1年たったのかと驚いていた。



「今年は、私たちが主導で何かをすることはせず、あくまでお祭りをしましょうと

 呼びかけるだけにします。ただ、それだけだと、おもしろくないので、今年も料理

 は振る舞おうと思うの。お金はとるけど……ボンゴレを振る舞う予定よ!

 そうすれば、貝も集まって、お金も少しだけ集まって、いいかなって。

 あと、領地以外にも近隣の領地へは声をかけたらどうかしら?当日、警備は必要に

 なってくるけど、領地外からのお金の流通は、私たちからするとおいしい話では

 あるのよね……」

「警備は問題なくできるだろう。近衛もいるし。ただ、参加できない奴らには何か

 差し入れが欲しいところだな。じゃないと、不公平だと言いかねない……」

「わかったわ!警備をしてくれる近衛や警備隊には、特別手当を領地から出すわ!

 ただし、多くは出せないから、少しの手当と現物支給のボンゴレと葡萄酒の小瓶

 1本で許して」



 十分だとウィルが頷けば、ノクトも頷いている。



「で、貝はやっぱりバニッシュ領から仕入れるのです?」

「うーん、今考えているのは……我が領にも海があることがわかったの。食べられる

 貝もあることがわかったから、それを近衛にとってきてもらおうかと思っている

 ところ。土木工事に行く班にお願いしようと思っているのだけど……いいかなぁ?

 でも、結構な量がいるから、3日程行ってもらわないといけないのよね」



 私は、子どもたちの誕生日会の概要を伝え、みなから意見をもらいだいたい形になった。

 あとは、領地外へのお知らせをしないといけない。



「あと、領地外の商人が商売するときには、領主に商売許可をとった上で、売り

 上げの5パーセント場所代を払うようチラシには明記して。逸脱した場合は、罰金

 を課すと書き込みましょう。

 くれぐれも、アンジェラだけの誕生日ではなく、ジョージの誕生日でもあるよう

 にしてください。同じ日に生まれた子どもなのですから!」



 私の言わんことを理解してくれたのか、頷く一同。

 これで、とりあえず私の仕事は終わりだ。あとは、必要な人材が必要なところへと分けられていく。

 滞りないか、確認するだけで優秀な友人や侍従たちが責任持って進めてくれるに違いない。

 今年は楽しく参加だけできそうで何よりであった。

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