第201話 お掃除隊の今後

「さて、明日の話をしましょうか!」




 私たちは、休憩で一息入れてから次の話をすることにした。




「明日、集まりそうなのは、ざっと50人に届かないくらいかしらね?」

「こちらでも募集をかけましたが、今のところ10人いるかってところです……」

「そっかぁ……まぁ、領主が先導したものじゃないからそんなものかもね?」




 私達は、少しため息をついて、引き続き話し合う。




「まず、領地を守るのに、そんなに人出が入らないからクビ切ってきたの。

 もし、しれっと、詰所にいるようだったらそれなりに厳罰は致し方ないって

 言ってあるから、たぶんこっちに来るんじゃないかな?」




 私を見てみんなが頷く。

 領主ではない私ができるのか?と誰も問わなかった。

 信頼されている……ってことでいいのだろうか?ちょっと、不安になる。




「それで、どういう話していたの?」

「それぞれの割り振りについて話してました。

 商人たちは、それぞれ住んでいる町での清掃監督をすることにしました」

「残るは、6つの町村ってことね……」

「7つではないのですか?」




 ビルのいうことは、もっともである。

 しかし、アンバー領にも例外はあるのだ。




「私の農場がある村は、今回の清掃をしなくてもいいでしょ?

 ビルのおかげであの村は、清潔が徹底されているもの!」

「あぁ、あの村は、確かアンナリーゼ様が買われた紅茶関係のところでしたな」

「そうよ!テクトは、行ったことがあるかしら?」

「もちろん、ありますよ!

 確かに、あの村は、アンバー領と言え異質ですな!」

「そうね、あの村は、村長に任せておけば、特に問題ないわ!」

「では、あと6つの町村はどうしましょうか?」

「ナタリーのとこの女性たちをおくるつもりだけど、たぶんそれじゃダメね。

 女だからってちゃんということを聞いてくれないと思うのよ……」

「でしたら、男性の監視員がいるということですか?」




 ここに来るまでも考えていた。

 ただ、任せられる人材が、今のところ誰もいない。

 ウィルたちは、もう少ししたら返すつもりなので、最後まで手伝ってもらうわけにはいかない。

 仮にも、演習で来ているのだ。

 ウィル曰く、セルビアの中隊長になったときの練習の為らしいが、セルビアなら人望もあるからなんの心配もいらないだろう。

 でも、期間を決めてきているので、そこは守らないといけないと思う。




「そうね……案が全くないのよね。

 いっそ、私が……回ろうかしら?

 隊員たちを連れて……そしたら、誰もサボらなくない?」

「アンナリーゼ様がですか?」

「そんな恐れ多い……」




 私は、腕を組んで考え始める。

 別に公都の屋敷に戻ったところで、これと言ってすることはない……

 セバスとウィルとエリックは、仕事があるから帰ってもらわないといけないが、腕っぷしだけなら私だけでも十分だ。




「恐れ多くはないわ!

 私だって、アンバーの一員だもの!

 これくらいしたってバチは当たりませんよ!

 エリック、悪いんだけど、屋敷に戻ってナタリーにあと1ヶ月くらいこっちにいても

 いいかと動かせる女性陣が何人いるか聞いてきてくれる?」




 かしこまりましたと、すぐに動いてくれる。

 馬で行けば、あっという間なので、すぐ帰ってくるだろう。




「アンナリーゼ様、僕は残ってもいいですか?」

「セバスとウィルとエリックは、こちらに残らず、仕事に戻って頂戴。

 パルマは、こっちに残って手伝ってほしいわ。

 後は……デリアが欲しいわね……」




 私の言葉で、喜んだのはパルマだけだ。

 ウィルとセバスも戻ってくれという私の言葉に沈んだ顔をする。




「今は、あなたたちの出番ではないのよ!

 あなたたちは、優秀なんだから、もっと後で活躍して頂戴。

 あと、ナタリーをこっちに置くから、社交界での噂話は、任せたわ!

 社交界で必要な情報は、ジョージア様、ソフィア、ダドリー男爵、

 公世子様、あと黒の貴族を中心に噂話を集めてほしいの」

「ジョージア様とかはわかるけど、なんで、黒の貴族?」

「黒の貴族がローズディアの社交界へ出た日に合わせて私も出るからよ!

 アンバー領で、お茶会を開くためにお誘いしないと!」




 私は、ウィルに向かってにっこり笑う。




「何か、企んでいるな?」

「そんなことないわ!

 確かめたいことがあるだけよ!それに、いいお友達になれそうなのよ!」




 私のいいお友達という言葉に、ここに揃う一同が驚いている。

 黒の貴族と言うと、これまた、噂の絶えない男性だ。

 隣の領地であるバニッシュ領には、興味があった。

 個人的には、エール・イーナ・バニッシュにも興味があった。

 少し話しただけだったが、とても魅力的な男性だと感じた。

 きっと、おもしろい話の一つや二つできるだろう。




「投資に興味があるんだって。

 アンバー領に投資してもらいましょ!ってことよ!

 それには、とても、魅力的なアンバー領にしないといけないから……

 領地を整えて、まずは、隣の領地領主である黒の貴族を落としましょう!」

「なるほどね。

 じゃあ、俺らが持てる姫さん直伝誑し込みでご婦人たちから聞いてくるわ!」

「お願いね!!」




 ウィルとセバスにお願いしておく。

 セバスは、苦い顔をしている。

 心の中で、あれをするのか……?と思っているに違いない。


 でも、きっと、二人とも優秀なので難なく噂話の収集はしてくれるだろう。




「次だけど、住むところは確保してくれているってことだったんだけど、

 次は、この仕事を手伝ってくれる人の食べ物の確保について。

 お金は、私が出すわ!

 給金の代わりだものね!

 それに隊員たちをクビにしたから、資金は浮いたから……




 私は、頭を抱えながら、叫んで沈んでいく。




「あぁーーーーっ!

 エリックにディルも呼んできてもらえばよかった……」




 うぅ……やらかしたと頭を振っている。




「ディルさんに、なんかあんのか?」

「えぇ、領地のお金の管理をこちらでさせてもらえるようジョージア様に

 うまく調整してほしいと思って……」

「それなら、俺が今から行ってきてやるよ!

 俺、ここにいても役に立たないし」

「じゃあ、ウィルお願いできる?」

「あぁ、任せておけ!

 ディルさんに、領地のお金の管理の権限が与えられるようジョージア様にうまく

 取りなしてくれって言ってくればいいんだな!」

「さっすが!」




 じゃ!っとウィルも私の伝書鳩のように出て行ってしまう。

 私の大穴だらけの話でも、ポンポンと汲んで動くウィルに商人たちは驚いている。




「ウィル様って……伯爵位ですよね?」

「そうね?

 いいのよ!顎で使っても文句言わないもの!」




 そんなことを言えるのは私だけなので、さすがはアンナリーゼ様と皆が口々に言う。




「じゃあ、明日から、私がお掃除隊を連れて町村を一つずつ回るわ!

 で、あなたたちのところは、回らなくても大丈夫かしら?」

「はい、なんとかします」

「手が回らなかったら、私も隊を連れて回るから連絡頂戴!」




 かしこまりましたと3人の商人は、返事をしてくれるのであった。




 そのとき、エリックがナタリーの返事を持って帰ってきてくれた。

 待ってましたと私は、エリックの話を聞くのである。

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