閑話.後藤高治の逆襲はなしよ。
(永禄3年 (1560年)3月中旬から4月初旬)
家中における人望も厚く、力を付ける
後藤家を守護代、進藤家を又代にすると
近江守護の六角家が神輿にされる?
直感的に
もちろん、そんな事はない。
六角家は管領代として幕府の全軍を預かるので彼らの軍権を掌握できる。
決して、他の守護のように名誉職になる訳ではない。
守護代になる後藤家や又代の進藤家の持つ軍を自由に使える。
それどころか、尾張の守護代である織田家すら配下になると聞かされた。
格の違いをいずれは知ると期待されていた。
それに実行されるのは奥州征伐と九州掌握を終えた2年後か、3年後と聞かされた。
漏れなく全国の諸将が公方様に頭を下げた後だ。
学ぶ時間はたっぷりとあった。
そこまで聞かされても
父の
まだまだ引退は遠い。
後藤家が守護代になると、近江の仕事はすべて引き継ぐ事になる。
何よりも守役である
『おもらし暴露事件』
お栄とのお見合いで暴露された失態は
筆頭家老の後藤家との確執は家督争いで致命傷になりかねない事件であった。
しかし、
もうしかすると悪運であり、悪魔が憑りついていたのかもしれない。
間を置かずに、
結果として、
そして、『永禄の変』が起こると現公方の
なんと六角家の嫡男でありながら
これで六角家の家中での地位が一気に引き上がった。
そして、公方様の使者として
こうして
夢までに見た近江守護だ。
浮かれて皆を集める。
だが、
“守護職を保留し、伊勢侵攻を取り止める”
使い者からそう聞かされて、
そして、
まったく無警戒で部屋に入って行った。
「
油断して
「織田家と通じていた
城内には家臣らの屋敷があり、後藤家に同調した者が騒ぐかもしれない。
城に戻って来たばかりの
「気でも狂ったか?」
家老に誑かされている可能性がある。
抵抗する者は容赦なく斬れと命じられていたので
おそらく、助からない致命傷を負ったと思われた。
その後、遅れてきた
多くの家臣が屋敷から逃げ出し、自領へと散った事で
三日後に陥落し、
もちろん、
近江の武将はどこもかしこも頑固者が多かったからだ。
◇◇◇
後藤家の屋敷は
支城に
それを守る家臣らが自領に逃げたので、
その支城の1つである
「何だと? 父上と兄上が討たれたと申すか?」
「
「兵を集めよ」
「お待ち下さい。すでに
「では、どうせよ申すのか?」
「ここは一先ず、某の城である
「判った。従おう。
だが、村に配置した代官が抵抗したのだ。
「奉行に問い質し、その許可を貰ってからでないと認められない」
「阿呆か、その役方頭の
「私に言われても困ります。代官からそう伝えよと申されただけでございます」
「判った。そのまま中立を保て」
使いを見送りながら
返事を出してきた代官はまだ領主を立ててくれている方なのだ。
息子の
「父上、拙うございます」
「どうした?」
「
「勝てるか?」
「
その意味を即時に理解する。
そうだ、
それでは世話になった後藤家への裏切りだ。
近江武士の意地だ。
そんな事はできない。
「父上、
「ここよりマシであろうが大差ない」
周辺に赤井氏や吉田氏、高野瀬氏などがおり、互いに争って勢力が拮抗している。
代官が抵抗するのは同じであり、どう情勢が転ぶか判らない。
それに
城に近い事に変わりはなかった。
「では、
「問題は一族衆か」
特に山奥の
「この際です。
「それしかないか」
そして、
また、予想通りに
「
「
「いやいや、某はまだまだ若輩の身でございます。織田家を訪れた時にお世話になった事は一生忘れる事はございません。これからも敬わせて頂きます」
「それはどうか」
「いえいえ、これからもよろしくお願い致します」
「判りました。そこもとの兄君に嫁がせておりました娘をそのまま貰って頂けますか?」
「よろしいので!?」
「あれもその方が喜ぶでしょう」
「これからは
この儘、兄から弟へ近江の守護代候補との縁を繋げておく事に意味があった。
さて、織田家の援軍は後藤家や蒲生家の救援を目的としていた。
この時点で
ゆっくりと
信長の意図は長門守に手柄を立てさせる事だ。
本隊を追い越して
「まず、足固めからはじめしょう」
「城を取り戻すのではないのですか?」
「すでに織田家の本隊が向かっております。後藤家に従わせる者らに誰が主人かを判らせてやりましょう」
「判りました」
ゆっくりと腰を落ち着かせ、周辺を確実に掌握する。
そんな戦略を取っていたので本隊が敗退したと聞いて慌てた。
「どういう事だ。負ける要素などどこにもないだろう?」
兵を分けて散開させていた事を後悔する。
再度、集結した頃には
「
「
「しかし…………」
「
先戦で浅井家と六角家を天秤に掛けた家は酷い状態であった。
二度と六角家に逆らえないように派遣した代官に兵を付けた。
もちろん、兵は領地から上がる銭で賄う。
代官の家臣は村々に派遣され、その長の一族から妻や子供を人質として、嫁や養子として取られた。
娘を代官の家臣の嫁として人質に取られた。
また、主家である
一方、丸山城の
山手から攻める部隊以外には作戦の内容が知らされていなかったのだ。
六角の兵も本気で攻めているので物見も気が付かなかった。
「
「時期を見て兵を送る。それまでは中立を保つように言っておけ」
「判りました。公式にはこちらの誘いを断って中立を保つと言って寄越したとしておきます」
「それでよい」
それ所か、じわじわと反旗を翻す者も現れた。
「慌てるな。鉄砲も火薬玉も十分にある。簡単には落ちんぞ」
織田家から支給された鉄砲と火薬玉があり、食糧など支援物資は十分にあった。
さらに遊撃隊として、
「ははは、他愛も無い。やられる為にやってきたのか?」
一時停戦だ。
「
「焦るな。すぐに取り戻す」
通過が終了するまで停戦を命じられた。
これで京に織田方の兵がいなくなり、公方は京を空にして近江に兵を送る事ができる。
その一部が佐久良城と日野城、そして、甲賀の里に向かうのは必定である。
「ご、五万以上の大軍が押し寄せてくるのですか?」
「鯰江城を奪還しても守り切れまい」
「どうするのですか?」
「どうするも何も佐久良城を守り切らねばならない」
「五万を相手にですか?」
「全軍がこちらに来る事もない。一万、多くとも二万は超えん」
東から西方向に張り出した低丘陵に建てられた佐久良城は山城であるが、それほど堅固ではない。
主郭の周辺に土塁を巡らせ、高低差を利用した掘があるくらいだ。
一万以上の大軍に攻められては一溜まりもない。
「時間がない。急ぐぞ」
「何をされるのですか?」
「城を改修するのだ。二万人が攻めて来ても簡単に落ちぬ城にする」
「そんな事が…………」
「鉄砲や火薬の力を甘く見るな。人と火薬は使いようだ」
周辺の村人を避難させ、同時に土木工事で城を強固にする。
六角家の新兵器である小大砲 (大鉄砲)が使われる事も用心するように
一方、日野城 (中野城)は佐久良城より1里 (4km)も奥に入った場所であった。
しかも段丘を利用して築かれ、城の周囲に水堀を巡らし、日野川を天然の外堀に見立てて造られた堅固な城であった。
汗水を流している間の時間が過ぎた。
こうして、天下分け目の戦いの前哨戦がはじまろうとしていた。
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