月から日まで七日で終わる(7)

 迎えた翌日。幸善達は早速ショッピングモールに向かい、そこで二手に分かれることになった。幸善と牛梁はショッピングモール内の変化を探り、冲方達は双子を調べる謎の男の映像を入手後、その行き先を調査するために動き始める。


 失礼ながらも、この人は口が軽そうだと思った人を中心的に、幸善と牛梁はショッピングモール内で聞き込みを進めるが、そこで手に入る情報は幸善達が知っているようなものしかなかった。特に多かったのが、不審物が発見されたという話なのだが、これはあくまで奇隠がカマキリを隠すために作った話であり、それくらいは幸善と牛梁も把握している。

 他にもトイレがまとめて故障したとか、従業員用の控え室の一つが使えなくなったとか、雑談としか思えない内容の話が出るばかりで、それが本当に双子と関係があるのか判断に困るものばかりだ。


 仮にそこで双子の目撃情報が重なると、それは関わっていると断定できるのだが、目撃情報は一つも出てこなかった。


 取り敢えず、トイレの故障は場所的にカマキリの出現位置と重なることから、それ絡みの故障だろうと判断し、急に使えなくなったという控え室の方を調べてみることに幸善達を決める。


 そのための許可を取る必要があったので、牛梁がQ支部に連絡し始める。その間、幸善は完全に暇になった。

 少し店でも見て回るかと思い、牛梁が連絡している近くの店を少し覗いてみる。特に欲しいものがあるわけではないので、雑貨屋や服屋に入っても、何かを買おうという気にはならなかった。


 それよりも、千明に頼まれたチケットを入手できるかどうかの不安の方が高い。もう少しで予約が始まるのだが、そこからは完全に運だ。その運を買えるのなら、今すぐ買いたいと思ってしまった幸善は開運グッズに目を止める。こういう物も役に立つのかと思いながら、幸善は真剣に購入を検討し始めた。


 しかし、これらを購入しても持ち運べないと思い、持ち運べるものを買うか、一度牛梁に断って家に持って帰るかと真面目に考え、幸善は連絡を終えたかと牛梁の様子を見ようとする。


 そこで幸善の近くに立ち、幸善を何とも言えない表情で眺めていた人物と目が合った。


「頼堂…こんなところで何してるんだ…?」

「せ、先生…」


 自分のクラスの担任である七実ななみ春馬はるまのその表情に、幸善は苦い顔しかできなかった。七実は軽く幸善が見ていた物に目を向け、心配した様子で指を差してくる。


「それを買うのか?」

「いや、ちょっと考えていただけで…」

「そういう物を否定はしないが、ギャンブルはやめておけよ?」

「いや、大丈夫です。そういうのじゃないですから」


 あらぬ疑いをかけられそうになったので、幸善は千明にチケットをせがまれ、それが手に入るように開運グッズを頼ろうかと考えた経緯を説明した。流石に本気でギャンブルをしようとしていると思ったわけではないと思うが、七実はその話に納得してくれる。


「そういうことか。まあ、確かにそういうことなら、買ってみるのもありだな」

「俺もそう思ったんですけど、どういう物を買うべきかとか悩んでしまって」

「それじゃないか」


 店頭に並んだ商品の中でも、一際大きな水晶を指差して、七実が微笑みかけてきた。一番大きなお札が数枚必要な数字が下には書かれており、幸善は七実の正気を疑った。


「あんなのそれこそ、ギャンブルにハマっている人くらいしか買わないんじゃないですか?」

「それは違うな、頼堂。ギャンブルにハマっている人はあれを買うくらいなら、同額をそこに突っ込んでる」


 力説する七実に幸善が言葉を失っていると、ポケットに突っ込んでいたスマホが軽く震えたのが分かった。何かと思って取り出してみると、冲方からの連絡が入ったようだ。


「どうした?」

「いや、ちょっと連絡が…」


 一瞬、七実の目の前でスマホを取り出す行動に、没収の二文字が過ったが、冷静に考えると今日は休日であり、ここはショッピングモールだ。スマホを持っていても、教師が咎める理由にはならない。


 そのことに安心して、幸善がスマホを見てみると、冲方達が謎の男の写真を入手し、既に調査に向かった旨が書かれていた。先に牛梁に送ったそうなのだが、いつもならすぐに返信してくる牛梁から返信がなかったことで、一応幸善にも送ってきたらしい。牛梁は今、Q支部と連絡を取っている最中なので、それも仕方ないことだろう。


 それらの文字の後に、一枚の画像が添えられていた。監視カメラの映像を切り取ったと思われる画像で、全体的に荒かったが顔は十分に確認できた。それが謎の男のものらしいのだが、それを見た幸善は少し固まった。


 その写真に異常さを覚え、幸善はゆっくりと顔を上げる。七実が不思議そうに自分を見ており、幸善の視線に気づくと、「どうした?」と聞いてくる。

 それを見てから、幸善は再びスマホの画面に目を落とした。


 そこにはハッキリとが映し出されていた。

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