【オンライン】364話:敵の一手、僕等の一手⑧




 監視としてエーコーさん達には二人の様子を見てもらい、僕等はこれからの方針についての話し合いをすることになった。


「やることは、かわらないんだよな?」


〈攻めて来たのは向こうだしね、何もしないとグランスコートが危なくなるだけだもん、それにエーコーさんの森だって危ないでしょう。多少なりと敵国の情報を貰えるなら、やりようはあるんじゃないかな〉


「信用に置ける人物とは、言い難いでござるがな」


 そこはもう割り切って、ミカさん達の力を借りるしかないだろう。

 それで信憑性があるなら信じても良い。


「ボクらはしっかりと守りを固めつつ、相手を追い詰めるんだよね? それでラコスは落とせるの? 流石に無理じゃない」


〈渓谷を熟知しているラコスとの戦闘は控えるよ。どうしてもって時だけ戦うって事で良いと思うんだよね。下手に刺激しちゃうとせっかくの繋がりも無くなっちゃうもん〉


 なんとか半数の人達を味方に出来れば、きっと勝手に裏で手を引いている人達を追い出す切っ掛けになるんじゃないかって思う。あんまり敵国の人達とは上手くいっていない様子だから、こちらに引き込む手を尽くしていくしかない。


「消極的じゃねぇか。そんなんで勝てるのかよ?」


 ボウガさんやイーゴさん、グランスコートの重要人物達がカミルさんに連れられて、ホームの追加設備で作った一室、会議室に全員が集まった。


「戦うのはラコスから先の大地にある大国だからね。手前にある小国で無駄な戦いをしたら、消耗して不利になるのは我が国ですよ」


 カミルさんが補足説明的にボウガさんにいう。

 それを聞いてボウガさんは考え込む様に顎を指先で擦り出した。


「ラコスは今の所は友好都市国家ですから、すぐに攻め込んでは来ません。いまこの時を利用して、内から崩そうというのがスノー様の考えですよ」


 アンさんは全員に飲み物を用意しながら、今までの情報をまとめた資料を配る。


 この二人は本当に仕事が早い。優秀な人達で嬉しく思う……普段は抜けていたり、変な方向に全力を注ぐ事もあるけどね。


 アンさんってはちゃっかり自分達のお菓子も確保して、カウンターの方に持っていったのを僕は見逃さなかった。まぁ、別にコレだけの仕事をしてくれてるから、別に良いか。


「だから最近は妙に警備が厳しくなったのか……俺達も気ぃつけねとな」


「ですね、スノーさん達ばかりに頼っていてはいけませんからね。私の友達も快く手伝ってくれるでしょう。最近になって進化しましてね――」


 自分の庭に居るデンドロ達を褒めちぎる一人話を始めたので、全員が白けた目でイーゴさんを見てため息を付いている。


〈どうせ、向こうの王様は僕等の事を利用する気でいるんだし、僕等も利用させて貰おうと思ってるんだけど良いよね〉


「何をするつもりだよ」


 大国に挑むには僕等はまだまだ力不足なのだから、攻めて数の暴力差を埋めるために内部分裂を積極的に図っていくしかないだろう。最初に向こうがやろうとしていた手を、僕等がお返しするだけの話だ。


「タイミングを合わせて、ボク達も攻め込むってこと?」

「上手くいくでござるか?」


〈別に合わせる必要はないよ。勝手に相手が僕等の動きに乗りたくなるように立ち回れば、勝手に便乗して動いてくれるんじゃないかな〉


 最終手段として座敷童ちゃんに協力を仰ぐかもしれないけど、それは本当に奥の手だ。


 それにもしかしたら、敵さん達は僕等とエーコーさんの事は知っていても、幽霊達と仲良くなったという情報は知らないんじゃないかと思う。






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