【オンライン】313話:勝負と試合と勝敗の価値(21)




 せっかく同じくらいの人数差だったのに、随分とお客さんの数で差が出てきてしまった。


「向こうは全員がお客さんで迎え入れてるからな」


「舞台を盛り上げる親衛隊的なノリで盛り上げているだかけだもんね。ペンライトだっけ、あの光る棒みたいのを作って振ってるヤツ」


 子供達が楽しそうに遊んでいるモノをシュネーがちょっとだけ、モノ欲しそうに眺める。


「コレって魔道具かしら? 光のクズ石を使って作ったのかしらね」


 ミカさんはペンライトを手元で転がしながら、分析を続けている。


「意外と役に立ちそうよね。松明には及ばないにしても、火を使わない灯りだから、洞窟で火が使えない場所や水中での用途もありそう」


「あぁ~、そこまでは思いついてなかったけど。確かにティフォナんの言う通りだね、コレを作れるようになるのは、色々とメリットになりそう」


「というよりも、ミカ嬢は普通に楽しんできたみていでござるな」


 ペンライトだけでなく、アイドル達のファングッズなんかも買いあさっている。


「あはは、だって~。こういう機会ってあんまりないじゃない。それにまた同じ事があるかも分からないんだから。こういうのはきっちり楽しんでおかないとね」


〈確かに、それは一理あるかも〉


「スノーは行かない方が良いと思うよ。お姉様に捕まったら何されるか分からないもん」


「シュネーに同意だな。公演中のサーカステントには、絶対に近付くなよ。少なくもお前らを守れる護衛を二人以上は付けることが条件な」


 ティフォが子供に言い聞かせる、保育士のお姉さんみたいだった。


〈そこまで過保護にならなくても良くないかな〉


「いやいや、スノー姫は自身の価値を少しは知っておいて欲しいんだな。どうしたって簡単に攫われてしまいそうな見た目に、抵抗する力だってないのでござるぞ」


〈そりゃあそうだけど〉


「ニンフィだって今は居ないんだからね。パニアも牧場の警備や交易路の道作りでスノー傍には居ないんだからね。気を付けるのに越した事はないの」


 ミカさんにまで詰め寄られながら言われる。


「守れるのも、僕じゃあ力不足だしね~」

「むしろ、お前も一緒に攫われてお終いだろう。逆に価値が上がっちまうよ」


 シュネーも一緒だと確かに僕の値段は吊り上がりそうだね。


〈もう、盗賊が近くに居る訳じゃあないんだから、そういう怖い話はしなくて良いじゃん〉


「盗賊じみた御人が居るんだな」


 ガウは僕をジッと見つめながら、テントの方へと視線を移す。


「あぁ、あの魔王とサキュバスを足して掛け算した感じの悪魔な、お前の姉がよ」


 ティフォのイメージがダイレクトに伝わってきてしまい、容易に想像できてしまう。


〈そんな事を言ってると、後でお姉ちゃんに怒られるよ〉


「どうせ今は公演中だからな、気にしなくても大丈夫だって」

「そうでござる、シャープ令嬢にはこういう時でもないと噂話も出来ないんだな」


 少しでも話題にあげると、幽霊みたいに出現してくるからね。

 自分の姉ながら、本当に人間なのかと疑いたくなる。


「普段に私の事をどう思っているかって、こうして近くで聞くまでは分からないモノね」


 さっきからずっとシュネーが喋らないと思っていたが、どうやらお姉ちゃんに捕まってしまい、口を塞がれて助けも呼べない状態にされていた。


「全く、貴方達は注意していても私にスノーを取られてるんじゃあ、護衛としても未熟ね。少しは任せられるほどに強くなって欲しいわ」


〈僕の背後に気配も出さずに近付いて来ないでよ〉


「ぷふぁ⁉ なんでお姉様が此処に居るのさ⁉」

「最終日なんだから、一緒に盛り上がりたいじゃない」


 僕を抱き抱え、凄く良い笑顔を向けてくる。

 そんなお姉ちゃんからは、絶対に僕を離さないという意思が伝わってくるようだ。





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