【オンライン】245話:ハロウィン(1)




「さて、今日からイベントが開始する訳だが……配られたお菓子は持っておけよ」


〈ん? なんで?〉

「なんでインしてきて早々にティフォっちが仕切りだしてるの」


 一度休憩してから【チェンジ】でシュネーと体を入れ替えた。どうも、主体としてこっちの大きな体を動かすと、疲れるらしい。


 まぁ何時も僕の頭の上や肩に乗って動かないからだろう。


 今後も定期的にシュネーと体を入れ替えて、自ら歩いて貰おうかな。そういう自分自身もニンフィと一緒に居る時は常にニンフィに運んでもらっている……様な気がする。


「お前らな、ゲーム世界のハロウィンイベントがリアルのお菓子交換や、子供がお菓子を貰える様な唯のイベントだとか思ってるんじゃあないだろうな」


〈仮装して皆で騒ぐ位のイメージしかないね〉


「露店店長たちが嘆いてたよ。自分達みたいな者とは無縁なイベントなど知らないってさ。あれってどういう意味かな?」


 リアルが充実している人達の事を指して言っているんだと思うんだけど……、そうだよね、シュネーそういうのは解らないもんね。


 今の僕は女の子だし、妹と双子ちゃん達が居て、フー先輩やら面倒な会長様に纏わりつかれていた樹一……基、ティフォが何か言っちゃうと嫉妬の炎で消し炭にされちゃうからね。

 下手な事は言えないんだろうな。


 横目でティフォを見るとが、さり気なくも僕達から顔を逸らして空を見上げている。


「こほん、気にするんじゃないぞシュネー。彼等は彼等の価値観があるんだよ。きっと」


 下手なはぐらかし方だな。もっと他に言いようがあるだろう。


 僕がじーっと見ていると。ワザとらしく喉を鳴らし、もう一度だけ咳払いをした。


「今はこの世界のイベントについて説明する」


 もう自棄になって話自体を変え始めた。


〈仮装して盛り上がるだけじゃないの?〉


 シュネーが僕の方にターゲットを変えようとしているのを察し。

 ティフォに話を合わせる様に言葉を繋いだ。


 コイツら逃げやがったなって顔でシュネーば舌打ちしながら、僕とティフォをジト目で見てくるが、僕等は揃ってシュネーの視線を無視する。


「情報によると仮装もしないとダメなヤツも居るみたいだけどな。今回のイベントは俺達プレイヤーは本物のオバケを探す事から始まるんだよ」


「そんな告知なんてあった?」

〈わかんない〉


 シュネーに聞かれて、横に首を振りながら答える。


「はぁ~、お前らな一プレイヤーならば、ちゃんと運営からの告知やら通知には目を通しておけよ。不具合やバージョンアップの情報を見逃すと痛い目にあうぞ」


〈ちゃんと見てるよ〉


「そうだよね、しっかり届いたメールは確認してるよね」


 コードギアに届いたイベント告知なんかもしっかりと目を通した。

 始めた当初に説明書を読まなかったティフォと一緒にしないでほしいな。


「お前さ、変なところで抜けてるよな……イベント告知の画面を横にスクロールしてないだろう。そこにプレイヤーの皆様へって書かれたイベントの内容が書かれてたぞ」


 ティフォに言われて、もう一度だけ確認する。


 そこで確かにティフォの言う通り、イベントのイラストやスクリーンショットが記載されている画面の端っこに小さく矢印が見える。


〈本当だ、横に移動できる〉

「気付かなかったね」


 画面を横にスライドさせると、別の文章が現れた。



《イベントのヒント》

 ハロウィンイベント中に町中、外のフィールドなど特定の場所に出現する幽霊を探してみてください。イベント限定のシナリオが発生するかもしれません。

 幽霊達には性格があり。人気の多い場所に居たり。逆に静かな場所を好んだり。人々が楽しんで仮装パーティーをしている中に紛れて居る事もあります。

 イベントに絡む幽霊モンスターは基本的には友好的です。



 例として、少しだけ半透明な人間がスクリーンショットに何枚か撮られている。


「つまり、今回のイベントは楽しみながらも限定ストーリーがあるって事だ」


 ヒントしかないのは、後は自分達でお確かめ下さいって事なんだろう。


「謎解き要素か、それともただ単にイベント限定のシナリオかは解らないがな。こういうイベントはしっかりクリアーしていこうぜ」


 どうやら、ティフォのゲーマー魂に火が点いているようだ。


〈まぁ、楽しそうだし別に良いけど〉

「かくれんぼしてる幽霊を探し出せば良いんだよね」


 そんな子供みたいな……いや、でも間違ってないのか。


 ヒントに載っている写真は分かり易いけれど。

 街中や人に紛れてるって事は簡単には見つからなさそうなんだよね。


〈……あれ? それよりティフォって幽霊は大丈夫なの?〉


「ふっ、安心しろ。その為にお前らと助っ人たちを呼んでるんじゃないか」


 そう言ってタイミング良く扉の方からノックの音が聞こえてきた。




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