【オンライン】235話:恋のライバル認定(13)
〈ねぇここの施設ってモンスターしか使えないの?〉
「基本的にはモンスター達だけでござるな」
〈モンスターと一緒にトレーニング出来た方が楽しそうなのにね〉
スポーツジムって基本的には一人で淡々とトレーニングをするのが普通だけど、友達や常連さんとお話しながら、一緒に鍛えるのも醍醐味だと思う。
それはこの世界でも同じなんじゃないだろうか、一緒になってテイムしたモンスターと親睦を深めながら鍛えていく方が、色々と効率も良いんじゃないだろうか。
「そのアイディアは良いですね。一緒に汗を流し鍛える姿をスクリーンショットに収めるのも、また私の使命ですわね」
「何故、普段は機械音痴なのに自分の欲望が絡むと使い方を覚えるのが早いのか、不思議で仕方ないんだな。拙者は一度も説明してないんだな」
ガウ的にはティフォを守ろうとはしてくれていたようだけれど、フー先輩の方が立ち回りが上手かったようだ。きっとガウは教えないと踏んで、初めから当てにせずに使い方を教えてくれそうな人に聞いたのだろう。
――もしかすると、この世界に来た時に会える【乙女】や【双子】といった誰かに、ご教授をお願いしたのかもしれない。基本的な動かし方やシステムは説明書にも載っているが、写真の撮り方なんかは【コードギア】の使い方になってくる。
「う~ん、困りました。特典で頂いたポイントは全て使ってしまいました」
しょんぼりとしてしまうフー先輩。
そんなフー先輩に入り口の方から救いの明るい声が聞こえた。
「そういう事なら、もうすぐ始まるお祭りを頑張ってみると良いかもしれませんね」
声の主はカミルさんだった。
「お祭りって言うと、ハロウィンナイトの事だよね」
シュネーがカミルさんの方を向いて普通に喋りかけると、少しだけ驚いた顔をして僕とシュネーの顔を何度か視線が行き来する。
すぐに咳払いをして「失礼しました」と言って、いつもの調子に戻る。
さすがは受付嬢だけあって、内心では気にしながらも表には出さない様に気を付けているようだ。それでもカミルさんらしく、視線と仕草は僕とシュネーを追ってしまっている。
物凄く興味津々で、特に僕を見る目が輝いている気がする。
子供が新しいオモチャを見つけ、すぐにでも触って遊びたい感じが見て取れる。
「コチラが近々にあるお祭りで、新しく入ってきている渡り人さんでも楽しめるよう、各場所で行われるお祭りとなります。私が此処へ来たのも、スノー様にお話と説明としに馳せ参じた訳でしてね――」
それと言うのも、今回のお祭りは各所の街中で行われるというものらしい。
もちろん、街や村を出たすぐの場所。初心者でも歩き回れる外のフィールドでも遊べる、軽い感じの模様しモノもあるという。
〈……各町って言う事は、グランスコート内でもお祭りをするんですよね〉
「そうです。ファーマーであるお二人には、何かしらの出し物……町全体で行うハロウィンらしい内容を行って頂きたく思います」
そこで出されるのが、イベントで使える特殊ポイント。
ハロウィンらしい装飾に、お着換えセット。ゴースト系モンスターが出現する特殊フィールドの設置など、多種多様なイベント専用の施設が数多く取り揃えられたパンフレットを渡された。
「色々とありますね。この人魂幽霊なんて可愛いね」
「私はこっちが気になる?」
「カボチャの馬車でフィールド移動が出来るっていうのも面白そうだよ」
「ボク的には遊び場が気になるかな」
シュネーに手渡されたパンフレットに皆が群がって来た。
〈ちょっと~、僕も見たいんだけど〉
「はは、ほらこっちに来いよ」
ティフォが優しく僕を抱き上げて見せてくれる。
〈ふぅ、ありがとう〉
「気にすんな」
何となしにティフォの動きに身を任せてしまう。
コレでようやく落ち着いて見れると思っていると、何か冷たい視線が突き刺さって来た。
「やはり、油断ならない人みたいですねスノーちゃん」
パンフレットを覗く素振りをしつつも、僕のすぐ耳元で囁くようにフー先輩が言う。
〈あの、フー、さん?〉
「ふふふ、貴女には負けませんわよ。こんな所で新たなライバル登場とは思いもしませんでしたが、気を抜いていると鳶の様に得物を攫われてしまいそうです」
〈き、気のせいだと思うな〉
なんで僕と樹一が付き合わないといけないのさ。
誤解だと言いたいが、フー先輩の雰囲気に飲まれて体が言う事を聞いてくれない。
「あれ、お前って幽霊とかダメだっけか?」
いま皆が開いているページは確かにオバケコーナーだけど、震えている理由は違うよ。
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