【オンライン】233話:恋のライバル認定(11)




 本当に面倒見が良いんだから。

 最初は面倒くさそうにしながらも最終的には仲良く遊んでしまっている。


 スパイクが坂から転がって来るのを優しくキャッチして、手元で少し体を伸ばし、もっと転がしてという感じで丸まって坂の方に鼻先を向ける。


 手の中でクルンと方向転換して、転がしてくれるのを待っている姿は確かに可愛らしいし、出来れば僕がやりたいんだけど、スパイクはティフォにやってもらいたいんだろう。


 僕が近付いたら首を傾げて、丸くなるのをやめてしまう。


〈ティフォ、何時までもスパイクを可愛がってないで訓練所に取り掛かろうよ〉


 半分くらいは嫉妬交じりにティフォを次の作業に誘う。


「そうだな、しっかり休憩も出来たし次の作業に移るか」


 僕が少しだけ不貞腐れていると、ニンフィが気遣ってくれているのか、綿あめみたいな体を丸くして、目の前で転がろうとしてくれている。


 ただ寝る時以外は地面に居ないニンフィには、転がるという感覚が解らないみたいで、丸まった体を浮かして、モコモコと伸び縮みして、跳ねている様にしか見えなかった。


〈ふふ、もう大丈夫だよ。ほら行こうか〉

「ふぃっ!」


 空中でぽよぽよ跳ねながら、訓練所を設置する場所まで皆で移動する。


「なんだ? スパイクのマネかニンフィ」


 スパイクも一緒になって丸まり、蹴鞠の様に跳ねてニンフィに対抗意識を燃やしている。


〈以外に嫉妬深いよね、スパイクちゃんって〉


 何時もという訳じゃあないけど、独占している時のスパイクちゃんはとことん我儘になる気がするんだよね。アレは誰に似たんだろうか、それとも元からの性格なのかな。


「いやいやスノー、誰にでもソフトタッチの優しい小悪魔のせいだとも言えるよ」

「我が姉の最大の長所であり短所ですね」

「将来は女泣かせな人になりそう?」

「ああいうのにならないように、しっかり私達が教えていかないとね」


 女子四人が何か良からぬ話をしている気がする。しかも話の内容的には僕の事っぽい。

 視線が自然と僕に集まってるし、獲物をロックオンした鷹みたいに鋭い気がするもん。


 全身には鳥肌が立っちゃっているから、そっとティフォを盾にしようしたんだけど――、

「どうしたんですか? スノーちゃん?」

 ニッコリと目の奥が笑っていないフー先輩に止められてしまった。


〈……何でもないです〉


 あの四人よりも、今はこの人の方が怖いです。


「訓練所は岩場が多い川の近くで良いんだよな?」


 そんなやり取りがあったとは気付いていないティフォがマイペースに振り返って、行き先を指さして確認してきた。


 さっきまでの雰囲気から一瞬で朗らかな陽気に変わった声で、ティフォに笑顔を見せるフー先輩の変わりように、今や恐怖しかない。


〈……女の子って怖い〉

「今はスノーも女の子だよ」


 シュネーの鋭いツッコミに何も言い返せない。


 確かにそうだけど、こうもあからさまに男女での違いが垣間見える瞬間てないと思うんだよ。僕にはあんな感じなれそうにないんだけど。


「むしろ、アレくらいは普通だと思ってください」

「……使い分けは大事?」

「そういうムーンちゃんは出来てない人だと思うんだけどな~」


 彼女達もお互いにああいう感じの牽制をしているのだろうか?

 知りたいような知りたくはないような変な感じだ。




「むしろ、スノーは調教される方だよね」


「ですね、可愛らしいヒヨコちゃんみたいに刷り込みで覚えさせていけば、私達の好みに仕上がっていくでしょう」


「抜け駆け禁止?」

「攻めるのはアリなんでしょう? まだ恋愛同盟は継続だけどさ」

「当たり前よ、凶悪な魔王、もといラスボスが居るんだから。しっかり私達で守らないと」

「ほとんど、意味合いは同じだと思う?」

「お姉さんがそんな人だって想像出来ないんだけどさ」

「ん~、強敵である事は間違いないんじゃないかな。常に尻に敷かれてた記憶だったから」




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