【オンライン】174話:イベント騒ぎは大騒ぎ
大鬼の動きを封じている太い木に巻き付けたロープと太い蔦を編み込んだ枷だったが、メキメキと音をさせて、もうすぐ壊れる寸前だ。
「それじゃあスノーちゃんや、儂等はこの辺で先周りしとるから、後はよろしくね」
息切れをしていたティフォやアズミルは、もう準備万端という感じで屈伸をしたり足を伸ばして、何時でも走れるよう備えている。ニンフィも僕とシュネーに甘えながらも、何時でも全速力で飛べるという感じに息巻いている。
ボスの顔は最初に見た時よりも更に赤くなっている。
「完全にキレちゃってるね。それも頭の血管までいっちゃってるよ」
〈それにしても、なんで僕を狙うかな~。そこまで酷いことはしてないと思うんだけど〉
一瞬だけ皆の声が「えっ⁉」という感じで揃った。
「いや、確かに直接お前が何かしたって訳じゃあないけどな」
「結構にエグイことをしてるじゃない。なに、天然なの? この子。ちょっとティフォお姉様、どういう教育をしてるのよ! こんなに可愛らしい子なのに」
「ティフォと言うよりも、大本はユキ姫のせいなんだな。この子の師匠はユキ姫だから」
師匠というか、本人なんですがね。
「良い事スノーちゃん。リアルで貴女は本気になっちゃダメよ! 貴方と同い年の子に此処まで用意周到な手で攻めたりしたら、周りの子は再起不能になっちゃうからね」
全員が僕の言葉に対して一斉に否定してきた。
別に僕が全部の事を考えた訳でも無いのに、偶然な出来事が重なっただけだし。
「おい、遊んでる暇はねぇんだろう。なんでそんなに余裕そうな事をしてんだお前等!」
「ほらもう立ち上がっちゃいましたよ」
青年二人組が後ろを指さして、一足先に逃げ出していた。
大鬼は鼻息を荒くして、今には巨大な棍棒を振り下ろそうと高く掲げている。
それを見上げている僕は、挑発するように口端を上げてニヤついた笑顔で笑う。
〈それじゃあ最後の追いかけっこといこう。ニンフィ! GOッ〉
僕の掛け声で全員がその場から飛び退いた。
少し遅れて大鬼の棍棒が誰も居ない地面を叩きつけ、砂塵が舞う。
ニンフィは真っすぐに飛び、砂塵と突き抜けて木々の間を縫うように飛んでいく。
僕に攻撃が当たらなかった事で、更に暴れ出して所かまわず棍棒を振り回し始めた。
「うわっ! 危ないな⁉」
「はっ! ティフォさん。その大丈夫ですか?」
「あ、あぁ。助かったよ」
盗賊の青年は先に逃げたと思ったのに、振り回された棍棒から庇うようにティフォの盾になりつつも、しっかりと攻撃の範囲外まで退避している。
「さっきの借りはこれでチャラですね」
ニコニコと微笑みながらティフォの両手を握ろうとした所を、アズミルに阻止される。
「早く逃げるよ、お姉様!」
「あぁ、わかってるぞ? どうしたんだ」
アズミルに半ば強引に手を引かれて走り出す。
「青春だね~」
シュネーはティフォ達のやり取りを遠くで見守りつつ、全速力で逃げながらもニマニマとオジサンみたいな野次馬根性で、しっかりと観察することは忘れない様だ。
〈シュネー、オジサン臭い反応はしなくて良いの、見なかったことにしてあげなさい〉
「はいはい、分かってま~ス。ニンフィ左にちょっと上昇気味に逃げて」
小さい木々などもうお構いなしに、横から強引に攻撃を仕掛けてきた。
〈あっ⁉ 退路が塞がっちゃう〉
「だから、余裕ないくせして、どいつもこいつもふざけてっからそうなんだよ!」
横から飛んできた木々をネグが一刀両断にして、逃げる道を確保してくれる。
「あら~、私が居るから大丈夫だったのに~」
「拙者も忘れてほしくないんだな」
「よせよせ、カッコ付けたい年頃なんだから。そっとしておいてやれよお前ら」
何だかんだ、助けてくれるし。やっぱり根は優しいのかな。
「黙ってろよ!」
顔を赤くして悪態を付きながら、手短な枝を拾ってケリアさん達に向かって投げる。
〈ありがとうね〉
「ふん、真面目にやりやがれ」
それだけ言い残し、そっぽを向いてまた先に走って行ってしまう。
まぁ確かに気を引き締めていかないと、次はなさそうだね。もう大鬼だってなりふり構わず、力任せに攻撃を仕掛けてくるようになってしまった。
体力が四分の一くらい減った事も理由にあるのだろう。
永遠と起き上がろうとするたびに、罠で拘束して、タコ殴りだもんね。
僕だってそんな事をされたら、堪忍袋の緒が切れると思うし。
アレは見ていて可哀そうだったな。
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