【オフ】143:連休までの工作と予定



 連休の日まで防衛戦を繰り返して来たけど、大きな被害が出ずに済んだ。

 これも夜中や暇な時間にログインしてくれたプレイヤーさん達の御蔭だね。もちろんゲーム内の住民達の協力があってこそだろうけど。


 防御柵の補強や不意打ちを受けない様に見回りをしてくれていたり、エーコーさんやボウガさん達なんて防衛で相当な戦力になってくれている。途中から増えたモンスター達も色々と手伝ってくれた御蔭で、補給アイテムなんてモノも配られるようになった。


 妖精達は癒しの魔法で皆の傷を回復してくれたり、能力を上昇させるバフなるモノを随時掛け続けてくれたりなどで、常に有利な状態で戦う事が出来ている。


〈樹一の方では何か守っている時に変わった事はあった?〉

『そうだな~、敵の戦術が変わったかな。途中から離れて戦う様になったぞ』

 コードギアをパソコンに繋ぎながら、樹一と通話ソフトを繋いで話している。

「この数日はただ防衛をしてただけなの?」

「村の整備やら施設の拡張とかじゃない?」


 もう毎度のことで違和感が無くなりつつある。

 双子ちゃん達が僕の部屋に常に居る様な気がしてきた。

 まぁ、この二人だけじゃあないんだけどね。


「防戦一方って言うのもねぇ、兄ぃ達らしくないし。なんか密かにやってたんじゃない」


 部屋の中じゃあこの三人にずっと引っ付かれている気がする。


〈小鳥ちゃんは僕達の事を何だと思ってるのさ〉

「え? 敵を驚かせる事が、何よりも大好きな問題児の集まり」


 なんの迷いもなく答えたよ、この子。


『否定が出来ないね』

〈そこは否定しようよ〉


 確かになんの否定も出来ないけどさ。樹一が諦めちゃったらダメじゃあないかな。


「でもさ、本当に何もしてないの?」

「絶対に何か企んでるって。いっつもコードギアを弄ってるもんね」


 双子が揃って僕の顔を覗いてくる。


〈いやまぁ、何もしてない事も無いんだけどさ〉


 初めの二、三日で防衛をしながら嵩上げをして水路を引くなんて出来ないと気付いた。

 じゃあどうやって自分の陣地を広げて相手の領地に侵入するか、そんな話し合いが行われたのだけれど、良い案など簡単には思いつかなかった。


『今ん所は順調に進んでるんだろ』

〈バレてる様子もないんでしょう?〉

『ないな、相手は全然気付いてないね』


 そこで何故か知らないけれど、皆が僕に次の作戦はあるのかって聞きに来る人達が多くいたから、一日掛けて一生懸命に考えた。


「どんな作戦にしたの?」

「敵を一層してもすぐに援軍が出てくるんでしょ?」


 葉月ちゃんと桜花ちゃんが期待した眼差しを向けてくる。

 小鳥ちゃんも二人に続いて僕を見て来るし。

 期待されると物凄く言い辛くなるんですがね。


〈別に穴掘って進んでるだけだよ。崩れない様に柱と天井を作ってね〉


 どの道、水を流すのだって傾斜をつけて行かなければならない。森に近付くにつれて水路の掘る深さが増していく分を穴にして先に掘ってしまおうって感じだ。


 それが敵さんの足元を通るだけって話である。

 穴を掘っているのはウサギさん達で、ハチさんは穴の補強を請け負ってくれている。

 妖精達とエーコーさんによる協力で支柱を立てつつ、今現在は敵が守っている入り口付近を通過している最中だったりする。


『人が入らないから、穴を大きくする必要がないから敵陣の地面が崩れる事がないし。その上、相手方の小鬼達は基本的にジッとしていられないから、穴を掘っている音や振動で気付かれることが無い』


 人はしゃがんで進める程度の広さくらいには、なっている。


 後は攻め込む人数が揃う連休日まで、ゆっくり密かに掘り進めて行ける場所まで進むだけで良い。そこから先は、不意打ちの様にして森とホーム側から敵を挟み撃ちにしたり、掘り進んだ穴の天井を取っ払って、敵陣の地面を落としたりして、一気に自陣を構築する。


 穴を掘った時に出た土で盛土して、エーコーさんや妖精達の力を借りて、同じように道を造っていければ、自陣を広げつつ森の泉まで行ける。


〈本当に上手くいくかな?〉


 天井と支柱の仕掛けはボウガさんが考えてくれているので、ある程度の安心が出来るけど。勢いとノリで決めた様な作戦だったからな。


 作戦決行日が近付くにつれて、どんどんと不安は増していく。


『やってみなくちゃあ分からないけど、現状でそれが一番だって皆が思ったんだから良いんじゃないか? 別に失敗しても誰もお前を責めないって』


「他の人達が良い案を出さなかったのが悪い」

「そうそう、翡翠ちゃんに押し付ける様な人が悪い」


「失敗しても慰めて上がるから大丈夫だよ」


「そうそう、皆でショッピングでも行って息抜きすれば良いよ」

「美味しいもの食べよう?」


 なんだろう、絶対に失敗出来ない気持ちになって来たんだけど。


「お洋服も見に行こうね~ 水着とかも選びたいし」

「ちょっと恥ずかしいけど、一緒に行こうね?」

「私達が可愛い水着を選んであげるから、心配しないで」

〈樹一……一緒に行こうね〉

『まて、そこで俺を巻き込むんじゃあねぇ⁉』


 負けられない理由が増えたな。




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