【オンライン】130話:イベント騒ぎは大騒ぎ(二日目)



「あぁ、それはねイベントだからじゃないかしら?」


 ティフォの執拗な攻撃に耐えかねて、隠し事をしようとした僕から事情を聴き、ケリアさんに聞きに行くと、あっさりと答えが帰って来た。


「検証しないと分からないんだけどね、基本的に戦闘が出来ないファーマーは町の住人に経験値が配られていくんじゃないかって話があるのよ。スキル能力は上がるけどパラメーターは幸運値しか上がらない。その分のポイントは何処へ向かうのかって感じね」


「もちろん、住民達が個人的に戦闘に参加して成長していく事は確認されているんだな、ただ住み着いたモンスターの場合も同じかと言われるとサッパリ分からないんだな」


 罠に嵌めて倒したポイントは優先的に所有者へ向かうが、ファーマーである僕に配られたポイントは統合して仲間全員に分配される。


 それは自身が管理する町にも別途ポイントの経験値として配られるかもしれない。


「護衛対象というか、基本的にファーマーは戦闘に参加しないのが普通だからね~、この辺は曖昧な情報しかないのよ。

 ジャンシーズなんて過保護に守られちゃってるし。

 ヴォルマインの人は変り者で戦闘には全く興味ないって人柄でさ。

 フォレストヒルの二人は例外だけど秘密主義というか、ファーマーが中悪くっていっつも戦争を起こしてるから、なんともいえないのよね~。此処はホント気楽よ。良い意味で」


 ミカさんが色々と情報を提供してくれる。

 出来たばっかりの町と呼べない集落状態ですからね。


〈……ねぇ、気のせいなら良いんだけどさ。なんか人数が増えてない?〉


 意識して数えていた訳ではないのだが、昨日よりもプレイヤーの人数が増えている。


「あぁ~アイツ等は大丈夫だ、気にするな」


 ティフォが遠い目をして、それ以上の詮索はするなという雰囲気を漂わせている。

 イベント前に森で助けてくれた人達もチラホラと見える。


「というより、此処に露店を開いてる人達まで居るのが物すごっくボクは気になるんだけど、アレはほっといて良いの?」


 シュネーが一番気になる一画を指さして言う。


「大丈夫じゃないかしら、ある程度は戦えるでしょうし。物流関係はああいった人達が居てこそだからね、激しい戦いの地にアイテムを求める人は一定数は居るのよね」


〈逞しいね〉


 戦闘が激しい真っ只中に堂々と露店を開くあたり、相当に度胸があると思う。

 精魂逞しい人が此処に居着いてくれたら、それはそれで嬉しい事だ。


「商品はそれぞれ、料理と武器屋に素材の買取から制作まで色々とあるんだね」

「いらっしゃい。試食でもどう? 食事の大事さが分かるぜ」


 料理を食べれば、その料理に応じだパラメーターが上昇するといものだ。

 焼き鳥を渡されて、一口食べてみる。


〈ありがとうございます。ただ、気を付けてくださいね〉

 意外にも美味しい。

「ほれ、嬢ちゃんにも」

 シュネーにも少し小さめの串を用意してくれている。

「ありがと~」


 嬉しそうに受け取って、すぐさまかぶり付いている。


「まぁ俺達の事は心配しなさんな。多少は戦えるさ」

「生産職の耐久と逃げ足は舐めちゃあいけねぇよ」

「アイテムも豊富だからね、色々と違った戦い方が出来るんだぜ」


 ケリアさんとは違ったタイプの戦闘って事かな。



   ※※※



 色々と雑談をしているとカンカンカン――、激しく鉄板を鳴らす音が辺りに響いた。


「そろそろお出ましの様ね」

「先ずは左右から責められない様に一回は押し返さないとな」

「その後にワザと正面の守りを開けて、引き込み作戦でござるな」


 皆が準備運動を始めている。


 あるモノは伸びをしたり、ストレッチをして。武器の手入れを念入りにしている人もいる。テイマーさん達はモンスター達と話し合っている様子だ。


 スパイクちゃんはなんかシャドーボクシングをしていて、ヤル気十分と言った感じだ。


〈じゃあ僕達も最終確認しようか〉

「ラジャー」



 シュネーが敬礼して、それに習うかの様にニンフィも何故か背筋を伸ばしている。



 僕等の仕事は状況把握と、高い所から危なそうな場所を教える役目だ。



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