【オンライン】129話:イベント騒ぎは大騒ぎ(二日目)



 とりあえずグランスコートに住む皆で協力して、大掛かりな仕掛けを作っていく。

 ただ、今は敵の方も一時的に引いているのか、まったりとした時間が流れている。


「起動スイッチは何処に設置するんだ?」

〈一つはすぐ近くで、誰かが踏める様にすれば良いんじゃないかな?〉

「それでは、その役目は拙者が承ろう。やっと本領を発揮できるんだな」


 ガウのプレイスタイルは良く解らない、盾役なのに避ける盾だもんね。

 真っ正面から馬鹿正直に攻撃を受けるという事を極力しない。避けたり逃げたりしながらもカウンターで相手の動きを封じていく戦闘スタイルだ。


 きちんと自分にターゲットを集中させているけれど、仲間は狙い難そうだと思う。

 あんな真丸とした体形でスピードタイプで、身軽に動くのには本当に違和感しかない。

 そんなガウを上手く使って戦うティフォも変だと思う。


「他の連中が使えないっていう所が、ちょっとだけネックね」

「グランスコートに属していれば、基本的には起動スイッチを扱えるのよね」


 ミカさんとケリアさんが少し唸っているが、誰でも使う方法も無くはない。


〈誰でも使える……というよりトラップとして仕掛ければ、一応は使えるよ〉

「威力が分からないんだから止めとけ」

「下手したら一撃で死に戻りよ。あんなのが大量に降り注いだら恐怖モノよ」

「先端恐怖症になっちゃうね」


 殆ど真っすぐに飛んでくる事を想像した人達が震えあがっている。


〈ねぇ、僕が惨いことを考えたみたいに見えるからさ、この話は止めよ〉

「前を警戒してたら、左右から、逃げたら上から石が降ってくる。その上、戻る時には長い溝の落とし穴でしょう。逃がしてあげる気が無いよね」


 引き込み入れたらウサギさん達が穴を塞いでる板を外して、慌てて引き返そうとしたら次々に落ちていく感じになる。


〈それは僕が考えた訳じゃないよね〉


 どうしてそうなったと言いたい。

 アレはウサギ達が勝手に作ってしまったのだ。まるで畑の畝みたいにしてしまったが故のトラップ、ダイチお爺ちゃんが教えた猪を追い返す為の罠だ。


 教えたのは僕じゃなく、ダイチお爺ちゃんという事になる。

 つまり、僕には何の思惑も無い。


「何言ってるのよ、落とし穴を伝授したのはスノーちゃんじゃない」

〈アレは、ウサギ達に何か一つでも勝てる要素だったからで、勝手に奴等が覚えたの〉


 というかさ、あのウサギさん達ってば頭良くない。魔物って基本的に知能指数高いの? いや小鬼達はお馬鹿さんだから、そうとも言えないのかな。


 進化すれば……知能は劇的に高くなっている……ん? あれ? 進化してるのか?


〈あの一つ質問があるのですが〉


 アズミルや他のテイマーさんに向かって、僕の不安を投げかける。


「な~に~?」

「何でも相談してくれ」

「どんと、頼ってよね」


 ティフォに聞いても良かったが、此処に集まっているテイマーさんの方がベテランさんだし、皆に聞いた方が正確な情報が得られるだろう。


〈モンスターって進化するんですか?〉

「そりゃあ、するだろう」

「そうね、ただ条件はまだ分かっていないわよ」

「テイムした子が進化したりするんだけれど、確定してる情報は無いのよね」


 色んな所で皆の手伝いなどをしているウサギさん達をジッと眺める。

 ラゴスというのは種族の名前だ。

 初めの状態が野ウサギだったと仮定すると、今は別の言い方になってたりするのかな。


 ……気になる、物すっごい気になる。


 バリスタの組み立てに集中していたティフォの裾をクイクイと引っ張る。


「ん、どうした?」

〈ウサギさんを何匹か連れてきて、出来れば色違いとか、何か特徴が違う子を〉


 良く解らないような顔をしていたが、すぐにウサギさんを数匹連れて来てくれた。


「何するんだ?」

〈調べてみようかと思って〉


 ピンク色のウサギさんをティフォに落ち着かせてもらって、観察する。

 種族はやっぱり【ラゴス】となっている。が、次の文言が色々と伸びている。


《野ウサギから進化した個体。一段目、薬学ウサギ、育てた野菜などから薬の成分を生み出す事が出来る。癒しの乙女なウサギ》


 最後の説明は居るのか? というか一段目ってなにさ。

 次は茶色いウサギさんを抱いてもらう。


《野ウサギからの変異進化した個体。土属性の恩恵を強く受け過ぎた土ウサギ、好戦的で土魔法を扱える。農具を用いて戦う事もできる。好いたモノには一途に従う、ナイトウサギ》

 ……なに、変異進化って。


《外的要因を強く受けた時に進化先が強制的に変化してしまう》


 よし、何も見なかった事にしよう。というか何時の間に進化したんだろう。


「おい、どうしたんだよ?」


 ティフォが物凄い半目で僕をジットリと見てくる。

 視線を合わせられなくて、スーッと横に目がいってしまう。


〈別に、なにも、なかったよ〉


 言い終わるとすぐにティフォが口元を鷲掴みにして、ムニムニと揉まれる。


「嘘をつくなよ。あからさまに動揺してたろうが」

〈ボクは、ナニモミテイマセン〉

「見てたよな」


 シュネーを必死に見て、助けを求めた。



「見てたね、きっとウサギさんを調べた図鑑に何か書いてあったんじゃない?」


 簡単に裏切られてしまった。



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