【オンライン】127話:イベント騒ぎは大騒ぎ(二日目)



 僕よりも朝早くからティフォが居た。何故か部屋の隅に隠れているのが気になるけど。


「昨日は大変だったな」

〈疲れらよ〉

「ティフォっちも大変だったんじゃないの?」

「頼む、昨日の事は思い出させないでくれ」


 ティフォが髪をクシャクシャにしながら、恐怖に震えている。


〈何があったのさ〉

「聞くな」


 まぁお互いに色々と大変だったという事で、これ以上は聞かないであげよう。

 ほぼ強制的にエーコーさんに拉致られ、投石器の説明をしている所にアズミルに話を聞いたらしいボウガさんが、瞳をギラギラと輝かせて同じ説明を二回もすることになった。


 ついでにこっちに手伝いに来てくれていたヴォルマインに住む鍛冶屋さん、ゲームキャラであるタムさんもアズミルが話しをして加わり、試行錯誤を繰り返している。


 アズミルがこの二人を寄こしたのは、絶対にティフォを独り占めしたいからだ。

 逃げる訳にも――というか逃げられないので、仕方なしにずっと付き添いながら細かい所から、最終的にどうなるのかを色々と聞かれていた。


 木の調達はエーコーさんが行い、加工をボウガさんが担当、組み立てから細かい部品の調整をタムさんが取り組んでいる。


 この三人に捕まってしまったために、初日の後半はもう終わってしまったのだ。

 シュネーはというと、その時間でモフモフな蜂さんグループと仲良くなっていた。絶対にあの三人の迫力が怖くなって逃げたんだ。


 昆虫類が大好きなテイマーのお姉さんに手伝って貰いながら、交流していたらしい。


〈昨日は結局どこまで仲良くなれたの?〉

「ふふん、蜂蜜もらえたよ」

〈ズルくない?〉

「しょうがないね、スノーが居ると小型のモンスターが警戒しちゃうんだもん」


 自慢げに語るシュネーが憎らしかったので、何処にも逃げられない様に今日はしっかりと胸元に抱いてやる。


「スノーさんや、なんか苦しく感じるの気のせいかな?」

〈気のせいだよ〉

「抱きながらタイピングなんて面倒なことをする必要は無いのでは」

〈問題ないから大丈夫、それより逃がさない事が大事だからね〉

「根に持ち過ぎじゃないかな!」


 シュネーには別に僕のスキルは関係が無いらしく、少し離れた位置では普通に小型モンスター達と仲良くなれる事が判明してしまった。


 シュネーは仲間だと思っていたおに、裏切られた気分だよ。

 部屋の隅が明るくなって光の粒子が人型に集まっていく。

 ログインしてきたガウとケリアさんが大体同時くらいに出現した。


「今日も早くからおはよう。森の攻略に乗り出すんだからワクワクするわね」


 ケリアさんはログインした体で準備体操を丹念にしている。


「昨日の内にジャンシーズの連中が踏み入ったせいで、森の中は鬼達がうじゃうじゃと闊歩しているそうでござるよ」


 ガウは挨拶よりも先に情報提供をしてくれる。

 相変わらずに情報をキャッチするアンテナは高性能である。


〈こっからは中隊が増えてくるから、真っすぐには掘り進んで行けそうにないよね〉

「そうでござるな、強引に伸ばして行くのは無謀なんだな」


 嵩上げした部分を防壁にしているから、その分が掘り進んでいる先に敵が集中する感じだから、下手すると数が多すぎて押されてしまう。


 逆に招き入れて一掃する罠を仕掛けやすくもある。

 その為の仕掛けは、今日くらいボウガさんが持ってきてくれるだろう。

 ゲーム内の数日はリアル時間で言えば、明日というニュアンスになる。


「スノー、帰って来てんだろ? 例のブツを持って来たぜ」

「さぁ、早くその竹を使った威力を見せて貰いたいのう」


 マイホームの扉をノックするボウガさんの声とエーコーさんの声が聞こえてきた。


「タイミング良いわね」

「きっとスノー姫がログインしたら、何かしらで知らせが届くのではござらぬか?」


 二人はそんな事を言いながらもドアを開けて、ボウガさんを笑顔で迎えてくれる。


「ほれ持って来たぜ」


 木を竹で挟んだシンプルなモノだが、ゲーム内の木や竹が現実のモノと同じなのか解らなかったから色々な種類で試しに作って貰ったのだ。


 硬くしなりにくい木に、柔らかくて硬さに欠ける木など。

 エーコーさんに手伝って貰ってもらった。

 竹はリアルのモノと質感も同じで、扱いは変わらないようだった。


〈ボウガさん的には一番しっくりきたのは?〉

「少し硬いがしなりもある、やはり三種類の木を合わせたコイツが一番だな」


 圧力と木をくっつける接着剤で板状にしたものを手に取って見せてくれる。


「威力も申し分なかったぞ」



 本当に楽しそうにエーコーさんが語る。


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