【オンライン】121話:イベント騒ぎは大騒ぎ(一日目後半③)



 最後の一人がようやく終わって一息つく。


〈初めの方のモンスターが大体埋まった〉


 ピースガーデンから最初の人が住む場所までの範囲に生息しているモンスター達がエクスクラメーションマークしかなかった絵から、ちゃんと写真や絵付きになっている。

 まだレアモンスターは埋まってないけれど、東西南北のファーストエリアは其々に通常モンスターは全て埋まっただろう。


 その代償は大きかったけどな。

 でも白紙の図鑑に色々と情報が載っていくのは気持ちよかったな。

 モンスター情報を何度もペラペラとページを捲る事が癖になってしまいそうだ。


「スノー大丈夫?」


 傷薬を丁寧にシュネーが塗ってくれている。

 しかし、何故に赤玉なんだろうか、もっと別の傷薬は無かったのかね。


〈問題ない〉

「いやいや、ボロボロだからなお前。見て見ろ自分の体力」


 グシャグシャになった髪の毛をティフォが一生懸命に整えてくれる。

 チラッと自分の体力バーを見ると、赤くなっている。


〈モフモフと戯れるのは、命がけなんだよ〉

「目を逸らすな、顔をこっちに向けろ」


 グリグリと頭を鷲掴みになさるが、あのモフモフタイムは至高だったのだ。


「やっぱり小さい子達には怖がられるのね」

「確かに、アレは嫌われているというよりも怖がられているという方が正しいんだな」

〈可哀そうな目で見ないでくれる〉


 ガウもケリアさんも、物凄い目で見てくるもんだから思わず反応してしまった。


「あぁ~、至高の時間です」


 若干一名は違う反応を示している者もいる様だが、ヤツは無視しよう。

 ティフォもあえてアズミルに反応しないようにしている。


「コホンッ――それで、どうするのかしら?」


〈……以外にも、小さい子達の方が森よりも陣地拡張や、水引作業の方に向いてる能力が多いって事が分かったので、考え直す必要がありそうです〉


 なんか周りがザワザワしだした。


「荷物運びとかじゃあないのか?」

 馬の様なモンスターが仲間の男性が驚きながらも質問してくる。


〈貴方はむしろ前線で一緒に戦ってくれる方が良いと思いますよ? 力とスピードが強いんですから前線で引っ搔き回しながら、敵を誘導して罠に掛けるって戦い方が出来ますし〉


 それを知ってか物凄く喜んでいる。


「わ、私は前線に出なくても良いの?」

〈貴女はウサギさん達と道の整備や、罠を作ってくれた方が助かるんですが……戦う方が良いですか? それだったら別の作戦を考えますけど〉


 彼女はそう言うと、ブンブンと首を振って前線にはあまり出たくないと言う。


「むしろそんな事で良いの! ウサギちゃん達と一緒に作業なんて」

〈えぇ、貴女のお友達は地ならしや、整備の方が向いてるみたいですよ〉


 見た目は小さいリスの様な感じなのだが、技や特性は地属性の魔法使いみたいな能力が殆どだった。簡単な防壁を作るのにも向いていると思う。


「お、俺のは森じゃあ邪魔になるだろう」

 ゴーレムをテイムしている男性が申し訳なさそうに出てくる。


〈むしろ森での活躍を期待したい能力が多いですね。僕も驚いたんですけど、そのゴーレムさんはカメレオンみたいに擬態する事が出来ます。それに体力と防御力があるので、囲い込みや不意打ちで相手の陣形を崩せる戦い方が出来ますよ?〉


「ま、マジでか⁉」


 同じゴーレムだから能力も同じかと思ったら、意外にも個体で違ったりするようだ。

 コレはサーチした個体を調べないと解らない事だった。

 図鑑にも図鑑に書かれている能力は、そのモンスターの平均値。そして覚える技など。

 ここで書かれている内容でミソなのが、【覚える技】なのだ。

 固定能力もあるが、個体によって覚えている技が違う場合があるという事だ。

 モンスターが生まれた場所で覚えている技が決まり、固定能力もそこで決まる。

 ただし、戦いや育て方次第で覚える技もあるという事が分かった。

 他の人達にも同じような内容を伝えていくと、何故か皆喜んでいた。


「やっぱりアナタの傍だと暇になる事が無いわね。その情報を二十万で買う。此処に居るテイマー達からも二万くらい出してもらいなさい」


〈えっと、良いんですか?〉

 心配になって周りにいるテイマーに聞いてみる。


「分かっていなかった情報だしな。嬢ちゃんの人の良さに付け込んでタダでって訳には行かねぇんだよ。その後の奴等が色々と困っちまうからな」


「私はいま持ち合わせがないんだけど……どうしよ」

「後々に何かしらで返して行きましょう、アタシだってこんな事になるなんて思っていなかったら、イベントの為にお金殆ど使っちゃったのよ」


〈僕はそれでも良いですよ〉


 こういう時に金欠って聞くとなんだか、あまりリアルと変わらないんだなって思ってしまい、微笑ましくて笑ってしまう。


「ありが――」

「抱き着くな。スノーへのお触りは非常時やどうしようもない時以外、禁止だ馬鹿者め」


 他の人達もお礼を言って、僕に抱き着いて来ようとしていたようだがシュネーやケリアさんが間に入って邪魔をしている。


「まったく、油断も隙も無い子達ね」

「まだ男性は理性がある分、マシだよね~」


 そういって僕を庇った三人がジト目で男性プレイヤー達を見る。


「あ、あぁ、そうだな」

「そりゃあな~、俺達が抱き着いたりしたらハラスメントで追い出されるかもしれねぇし」

「安心してくれ、そこまで女に飢えてないって」

「あ? おい、お前は後で裏に集合だな」

「え⁉ なんで!」



 なんか違う所で、違う争いが起こっている。



〈とにかく、コレで行動開始だね〉




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