【オンライン】119話:イベント騒ぎは大騒ぎ(一日目後半)
「どうも、初めまして。ティフォナスお姉様とはリア友なんです。だから警戒しないでアズお姉ちゃんでも、ミル姉ちゃんでも好きに呼んじゃってください」
「お姉様とか言うな」
第一印象は元気の良いフレンドリーな女の子できたな。
元々の性格が明るい子ではあるんだけど、猫の皮を被った内側を知っていると自分としては違和感が拭えないというか、何と言うか。
僕とシュネーを見て、一瞬だけガワを脱ぎ捨てそうになっていたけれど、何とか持ち直したようだ。暴走した際に止められるのは、きっと小鳥ちゃんくらいだから助かった。
本名は西願寺(さんがんじ)杏(あんず)ちゃん。
チラチラと捕食者の様な目でオレ達を見てくるは何とかならんかね。
「所でさ、この子は誰様ですか?」
「手ぇ出すなのよ。色々とあってスノーは今喋れないんだ。だから会話はチャットになる」
ティフォの説明で心配そうな瞳をオレに向けてくる。
根は本当に良い子なんだ……根っこ部分はね。
「可愛いぃね~」
「もう撫でるなぁ、スノーの髪の毛が減っちゃうでしょう」
もう蕩けきった表情で僕の頭を撫で続けている。
シュネーがペチペチとアズミルの手を叩きまくっている。
ぷりぷり怒るシュネーにも抱き着いて。
「あぁ~妖精さんだよ。ちっちゃ可愛いよ~」
「放せぇ~~~~」
「もう化けの皮がはがれ始めているんだな」
ガウがじっとりとした目でアズミルを見ながら言うと、気恥しそうに咳払いをした。
姿勢を直して最初から清楚な姿だという感じに、無理やり持ち直す。
「こほっ、何処にも属してない根無し草なアズミルと、ちょっと何時まで隠れてるの?」
「お前のせいで入るタイミングを逃したんだ。謝れ、この暴走娘」
中年と言った感じだろうか、無精ヒゲが似合う感じの男性が顔を覗かせる。
「アナタが私にアポを取って来た人ね」
「あぁそうだ。ペッパだよろしく頼む」
お互いに握手を交わして、微笑んでいる。
「時間省略の為に単刀直入に言うとだな、今回のイベントに俺達テイマーグループをグランスコートである、この集落から参加させて貰えないかと思ってね」
〈グループって事は他にも何人か参加するんですか?〉
「えぇそうよ。少なくとも十人くらいのテイマーが一緒にプレイしたいって感じね」
「全員がテイマー職なの?」
シュネーが聞くと二人とも頷いて答えてくれる。
「元々がメイン職テイマーの集いって掲示板で駄弁ってる感じだからね。そちらのお嬢さんにも色々と教えてあげられる事も多いし、どうだろう」
しょうがないんだろうけど、ペッパさんはケリアさんやガウの方を向いて喋っている。
〈自分達にとっては凄く助かりますけど……良いんですか?〉
小首を傾げながら聞くと、何故かアズミルさんが鼻を抑えながら震えてだした。
ペッパさんは戸惑いながら、ガウやケリアさんの方を見ている。
「ここのリーダーは、この子よ」
「見た目に騙されない方が良いでござるよ。少なくともイベントの攻略は一歩くらいリードしているのであるからな」
自慢げにいうガウとケリアさんが少しおかしかった。
「一歩リード? え、嘘でしょう」
「それは、本当の事なのか?」
目をパチパチさせながら驚いた表情で僕を見てくる。
〈運が良かっただけとも言うけどね〉
恥ずかしくなって思わず顔を逸らしながらチャットを書いた。
「本当じゃぞ」
ニンフィを抱いたエーコーさんが顔を覗かせて登場した。
僕も抱っこしたいんですけどね、なんか最近はずっとエーコーさんに抱かれている。
物凄く機嫌が良くなるから、まぁ仕方ないんだけどさ。
エーコーさんも混じって、軽く今までの事を説明してくれる。
僕が言うよりも、第三者からの方が信じられるだろう。
「――という感じじゃな。それに小鬼共の小隊リーダーに取り巻きをもう多く捕らえとる」
「確かに俺達の知り得た情報でも、そこまで事は知らないな」
「通りで情報屋でその辺の事を聞こうとしたら、結構な値が吹っ掛けられるわけね」
ちゃんとその辺の事を考慮してくれてるんだ、あの情報屋さん。
「それで、良いのだろうか?」
〈僕は問題なしです。実際に人数不足で後々になると手詰まりなるのが見えてました〉
「スノーがそういうなら、俺も問題なしだ。性格と俺の事を抜けば、強力な味方だしなアズミルは……良いか、スノーに変な事したら叩き出すからな」
「GⅯコールは御免よ」
「拙者も問題なしなんだな。テイマーはこの土地には良く合ってるとも思うし」
「ボクもスノーが良いならオーケーだよ」
「えぇ、私も異論はないわね。ただし、スノーちゃんを蔑ろにするようなときは、私が皆にお仕置きをするって事をちゃ~んと伝えなさい」
ズイズイと歩み寄ってペッパさんの眼前まで顔を近付けて、ドスの聞いた声で言う。
「わ、分かった」
「大丈夫だよ、その時は私も一緒になって皆を叱っちゃうからね」
すごっく良い笑顔なのに明るい声の中に妙な圧を感じる。
「じゃ、じゃあ仲間にも声を掛けてくるよ。すぐに皆を集めるから待っててくれ」
ペッパさんは二人の迫力に押されて、逃げる様にその場を後にした。
「もう、そこまで怖がらなくても良いじゃない」
「酷い人ですよね~」
あの一瞬を自分が味わったなら、ペッパさんと同じ感じになるだろうな。
二人に気付かれないように、周りの四人で視線を合わせながら、「何も言わない様に」という繋がりが生まれた瞬間だった。
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