【オンライン】105話:イベント騒ぎは大騒ぎ
「ねぇ、俺達は何をしてるんだろうか?」
「嫌ですね~、コフさんを誘き寄せているんじゃないですか?」
「馬の魔物でしょう? コフさんを誘き出そうとしてないかな?」
「確か先頭を走ってる個体に付いて他の子達も走るのよね?」
『その解釈だと先頭を誰よりも速く走ってるのはコフさんって事になるよ』
解体屋に隣接している牧場の出入り口付近で、オレ達は少し離れた位置から切り株の上に置いた、特製ニンジンパフェをジーっと皆で眺めている。
現実の馬にパフェ丸々の砂糖なんて病気になっちゃうだろうけど.
流石は魔物だな。
『リアルに近い魔物って、なんで好物も同じ感じなんだね?』
「そうだね、嫌いなモノも一緒なのかな~?」
オレとシュネーの疑問に、すかさずガウがカンペを取り出した。
「ふふん、そういう所もゲームの面白さでござるぞ。勉強にもなるんだな」
「普段全く役立たない、そんな知識が増えていくだけな気がするが?」
「そこは気にしちゃダメよ~。でも弱点だってリアルから引用出来るモノだってあるのよ」
「例えばどんなの?」
何と言うか、こういう知識を披露する時の樹一や雷刀って、どうしてこう得意げなニヤついた顔が滲み出してしまうのだろう。
オレも似た感じなのかな、もしそうだったら気を付けねば。
「そうね~、虫系のモンスター何かが分かりやすいわよ」
「火系統の魔法や攻撃が弱点でござる。そのくせ光に寄せられる修正もあったり」
「ただ気を付けろよ、中には逆に元気になる魔物もいる」
「ヴォルマインの方にあるという火山帯エリアの噴火口やマグマ付近に住むという昆虫系モンスターですね! 住む環境によって、その場所の特性を取得するという説があるのですが、私自身は見た事がないんですよ。何時か見てみたいんですよね――」
水を得た魚の様にトワちゃんはランランと輝く瞳をオレやシュネーに向けて、猛烈な勢いで説明を始め、それに気付いた他の面々が少しだけ遠ざかっていく。
ボウガさんに詰め寄られた時に見捨てた事の仕返しだ、きっとそうに違いない。
流石は親子だな、こういう部分は似ていると思う。
『ほら、なんか向こうに砂塵が見えるよ!』
「むぅ~。なんですか人が盛り上がってきたところで邪魔するなんて」
「いや、そもそもの目的はコフさんに会う事にあるからね。目的を見失わないで」
ぷっくりと頬を膨らましているトワちゃんに、シュネーが慌てて言い聞かせる様に言う。すぐにオレも顔を上下に振って心の中で『そうそう』と叫ぶ。
「あ~、そう言えばそうでしたね」
トワちゃんの近くでは絶対にモンスター関連の話しを迂闊にしてはいけない。
シュネーと目があった時、お互いに何も言わずとも心の言葉が分かってしまう。
そう心に誓うオレとシュネーだった。
「誰だ⁉ 全くこんな所に我が愛馬達の好物を置いて」
一番前の走っている一際大きな馬が一頭。
その背には少し小柄な男が一人乗っている。
現実では在り得ない様な太い筋肉質な足は、オレの体格くらいある。
『大きいね』
「予想以上のデカさにビックリだよね」
シュネーと一緒に口を半開きにして、お馬さんを眺める。
もっと普通の馬だと思っていたのに、二回りも大きいとは思わなかったよ。
子供と言われていた魔物の子達が、現実で見る馬の大きさだ。
「解体屋のお仕事だよ。パパから話くらいは聞いてるんでしょう? 今はレースさんと何時もの口喧嘩中だから、私が案内してきたの」
「そうなのか、それは悪かった。すぐにこの子達を小屋に戻してくるよ。コフだ、よろしく。皆も聞いたな! 今日はここまで! 小山で駆け足っ!」
そう叫んで手綱を軽く引っ張って小屋の方角を指さす。
「GO!」と一言だけ言う。
コフさんの声に従って、一斉に馬達が走り去っていった。
「カッコイイな~」
誰よりも羨ましそうにティフォが呟いた。
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