【オンライン】30:喧嘩とコツ、ファーマ―という存在。




「さぁさぁ、張り切って木を切ろうか」


 鉞を担いだシュネーに、斧を担ぐオレのティフォ。

 セーフティーエリアに馬達を繋いで休ませている。

 荷台は荷台でちゃんと収納ができるスペースエリアがあった。


 ――こういう所はゲームだな~っと思う。


 荷台がミニチュアの模型になるのだ。

 その場所に置くというシュールな光景は面白かった。


 いろんな人が荷台や馬車で此処へ来て放置していったら、確かに邪魔だろうな。


『スキルとか無いけど、ちゃんと取れるの? 原木ってさ』


 採取に必要な道具は荷台に沢山積んであった。


 ――えぇ、嫌に沢山積んでありました。


「やってれば、覚えるわよ」

「覚えるまでは、木くずやらのゴミが生産されるだろうがな」

「ケリアんも採取するの?」

「するわよ~、何かと物入りだからね。自分でも金策してかないとなのよ」

『原木? お金になるの?』


「この辺りの原木じゃあ小遣い程度かしらね。ちょっとした小道具を作りたいのよ、前の仲間達の所からは流石に無償で貸してくれたりはしないでしょうし……これから色んな物を創っていきたいじゃない」


 この際だから自分の物を作る事にしたらしい。


 それは良いのだが、ケリアさんが「創りたい」と言った時の目がオレとティフォを一瞬だけど鋭く見つめていたきがする。


「さぁ~それじゃあ皆で、レッツ採取だ~~‼」


 シュネーが鉞を高く上げて、高らかに声を上げる。


 各自がお互いを視界で把握できる位置で採取することになった。


 オレ達はそれぞれ一本一本の木を調べると、その木が採取できるかどうかの目印が付いて採取が出来そうだということが分かる。


 採取が出来そうだと分かった木には、採取装備の斧を装備している状態ならば採取を開始するか、しないか、そういう選択肢がウィンドウ画面で問われ、そのまま採取を開始すると、木の表面にアタックポイントの場所が光って現れた。


 斧を力任せに振ると上手く当たらない。

 慎重に今度は力が足りないせいでアタックポイントを上手に削る事が出来ない。


 アタックポイントを削り終わると、今度はその場所から一本の光の線が出て、そこからノコギリでまっすぐに切っていくという作業になる。


 何度か失敗してアタックポイントからズレた歪な形になると、《木くず》と《原木(最低品質)》というアイテムが手に入った。


 出現したアタックポイントの場所を上手く削って、きちんと切ると《原木(良質)》が手に入るということらしい。


 ケリアさんが上手に取れた~っと、言ってキャピキャピしながら見せてくれた。

 運動神経の良いティフォでも上手く採取は出来ない様子だ。


 しばらく続けて、ティフォが取れたのは《原木のような物》と《木くず》が二ダース。まさにゴミくず量産である。


 セーフティーエリアで簡単なキャンプを作って休む。

 大き目の石を集めて、さっきの採取で取った木くずと木の枝で火を起こす。

 原木をイベントリから取り出し、椅子代わりに転がして座っている。


 ――ゲームならではの便利さがリアルに欲しくなる。

 そんなイベントリ機能だ。休憩がてら、オレとティフォで話し合いをしているとアタックポイントの違いがあった。


 光ってる範囲と線の太さが違う、オレの方がやはり広いらしい。


 ティフォは本当にピンポイントで一定以上の連続ヒットさせないとダメらしい。

 オレが取れたアイテムは《原木》の低品質が二十くらいで、三十本。


 いつの間にかオレとシュネーのスキル枠には【採取術Lv1】が追加されていた。


 ギアという項目の部分に、オレは【樹木伐採Lv1】というのが追加で、シュネーには【木材加工Lv1】と違うギアの取得になっている、シュネーは主にオレやティフォが倒した木の余計な枝の部分を切り落としていたからだと思う。


 ティフォはというと、スキルの取得は出来なかった様子だ。


「普通はリアル時間で一日くらい採取をしてないとスキルの取得は出来ないんだけどね。採取系統スキルの取得率もファーマーなら倍の速度で覚えられるのかしらね」


「ケリアんは一日かかったの?」


「えぇ、掛かったわ。約一日くらいずっと籠って採取してたわ、それでやっとスキルを覚えたのよ、未だにレベルは5もいってないのよね。まぁ、今まで採取は人任せにしてたって言うのもあるんだけどね」


 少し間をおいて、ちょっと物思いにふけいる様な笑顔で微かな声で、

「やっぱこういうのも楽しいわね」

 と、誰に言う訳でもなく、火を見つめ呟くように言う。


 ゆっくりしてもう一度採取に行こうとした時に、ティフォの歩みが急に止まる。


「すまん、ちょっと待ってくれ」

 オレ達三人は互いに首を傾げてティフォを見る。


『どうしたの?』

「どうしたのさ?」


 オレとシュネーの声が重なって尋ねた。


「あぁ、ダチからテルがきた」


 耳に手を添え、何かを聞いている様子だ。

 オレ達に相手の声は聞こえない。


「なぁに? リアルなフレさん?」


「あぁ、学校の友達。ちょうどこの森に居るらしい……相手もまさか俺にテルが届くとは思ってなかったんだろうな、かなり驚いてるよ」


「その子はソロなの? なら一緒に遊ぶのも良いんじゃない?」

「あ~~、どうすっかな」


 チラッとオレの方をティフォが見て、悩んでいる。


「スノーとシュネー、どうする?」



 そうティフォが聞いてくる。




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