第86話一八二九年、幕府の黒字収支と松前藩の収支

「上様、以前より申し上げていた、幕府勝手向きの黒字化を成し遂げていただこうと思います」


「そうは申すが巫覡殿。

 松前家への協力金と合力米があっては、絶対に赤字になるではないか」


「ですので、前年を最後に、協力金と合力米を辞退いたします」


「なに、本当か」


「はい、言動不一致はいけませんので。

 それに、最初の数年をご支援していただけをお陰で、蝦夷地の開拓が進み、元薩摩藩士と元野非人が自給自足できるようになりました。

 年貢を取るまでにはあと数年必要ですが、食べていくだけなら可能となりました。

 全て上様のお陰でございます」


 全部真っ赤な嘘である。

 俺は徳川家慶のお陰だとは全く思っていないし、本当は初年度から、元薩摩藩士と元野非人は利益を出してくれている。

 大きな視点で考えれば、彼らが伐採してくれた材木があるからこそ、フリゲート艦が安価に建造できているのだし、莫大な交易利益も上げられるのだ。


「一八二八年の松前松平家収支と軍事力」


備蓄金 :△二千五百五十一万八千九百四十四両


協力金 :五十五万両

合力米 :五十五万石

二朱銀益:六百万両

北前船 :△百七十四万両(百七十四隻は船団を組み清国や東南アジア)

北前船 :△十六万八百両(自家以外の四百二隻運上金)

快速丸 :△九十万両(四五隻)

迅速丸 :△百八十万両(四五隻)

商場運上:△六万両

試合興行:△十八万両

小計  :△千百九十四万八百両


藩士扶持:▲十一万五千七百七十六両(一万八千兵)

旧薩摩藩:▲三十一万八千(五万兵)

野非人 :▲五十五万両

食費役費:▲二十四万八千両

鉄砲部品:▲一万両(六千丁)

小銃生産:▲五万両(ドライゼ銃六千丁)

(鉄砲部品:六千丁分一万二千両)

玉薬代 :▲五万両

鉄銅鉛代:▲百万両

鍛冶職 :▲二万両(日本刀、槍、鏃)

練炭  :▲五千両

豆炭  :▲五千両

七輪  :▲一万両

陶磁器 :▲二万両

艦艇修理:▲一万七千四百両(百七十四隻)

快速丸 :▲七千五百両(五十トン十五隻×五百両)

迅速丸 :▲一万五千両(百トン十五隻×千両)

三十六門フリゲート艦:▲二万千両(三百五十トン六艦×三千五百両)

五十二門フリゲート艦:▲二万両(一艦×二万両)

小計  :▲二百四十八万二千六百七十六両


総計  :△九百四十五万八千百二十四両


「現有戦力」

反射高炉:高須藩・独立四炉を四基

反射高炉:江戸韮山二炉一基を二基

反射高炉:松前藩函館二炉一基を六基

反射高炉:松前藩福山館二炉一基を六基

反射高炉:松前藩小樽二炉一基を八基

反射高炉:松前藩室蘭二炉一基を六基

反射高炉:松前藩釧路二炉一基を二基

反射高炉:松前藩網走二炉一基を二基

反射高炉:松前藩石狩二炉一基を二基

三十六門フリゲート艦:三五〇トン=一四艦

五十二門フリゲート艦:一五七六トン=一艦

快速丸 :五十トン=四五隻

迅速丸 :百トン=四五隻

合の子船:百七十四隻

火縄銃 :一万二千丁

後装火縄銃:三千丁

ドライゼ銃二万三千丁

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