第35話一八二六年、青田買い二

 優主な家臣を集めるために、若党鉄砲隊以外に祐筆や小姓の役目を設けた。

 藩校を整え、藩費で教育する制度も整えた。

 まあ、諸藩の極貧藩士は、俺が画策しなくても、採用試験試合に応募し、既に家臣となっていた者もいた。


 予想通りというべきか、家禄に余裕のある者は召し抱える事ができなかった。

 家禄に余裕がなくても、薩摩藩の者は召し抱える事ができなかった。

 だが家督を継ぐ事のできない部屋住みは、いずれ家臣に召し抱える事ができるかもしれないので、今後も注意深く見守らせることにした。


 面白かったのは、長州藩士の大半は、既に召し抱えていたり、改めて召し抱える事ができた事だ。

 忠誠心が低いのか、長州藩士は油断ならないというのは本当の事のようだ。

 特に医師関係は喜んで臣従してくれたが、それは俺の医療での実績だろう。

 だが残念ながら、高杉晋作の実父高杉小忠太は召し抱えることができなかった。

 大嫌いな井上馨の実父井上光亨はどうでもいいのだけれどね。

 広沢真臣は四男だから、実父の柏村安利には引き続き手の者を接触させる。


 土佐藩で召し抱えられたのは岡田以蔵の父親だけだった。

 後藤象二郎と板垣退助の実父は、余裕のある上士のだから難しいと思っていたが、郷士でも豊かな坂本龍馬の実家と、白札郷士で多少は余裕のある武市瑞山の実父を召し抱えられなかったのは、少し残念だ。


 横井小楠は次男であったので、熊本藩の藩校、時習館で学んでいるのを召し出したが、なかなか優秀な男で将来が愉しみだ。


 清河八郎の実父で庄内郷士の齋藤豪寿は、既に若党隊に仕官していた。

 平野国臣の実父で福岡藩の足軽だった平野吉郎右衛門は、若党鉄砲組の組長となり、九九人の配下を率いていた。

 江藤新平の実父江藤胤光も、若党鉄砲隊で九人の配下を率いていた。


 佐久間象山の父佐久間一学国善は、松代藩で五両五人扶持の微禄藩士だが、卜伝流剣術の達人で、藩主の側右筆を務めるほど信頼されているので、スカウトする事はできなかった。


 武田斐三郎の実父武田敬忠を召し抱える事はできなかったが、武田斐三郎は次男で、将来は母の実家で漢方を学ぶ事が分かっていたので、引き続き手の者に接触させ、生まれたら幼いうちに小姓に取立てよう。


 幕臣の長男は、俺がスカウトすると陪臣に格が下がるので、実家の家禄以上で召し抱えなければいけないので、次男以下の部屋住みが生まれたらスカウトさせるつもりで、生まれて育ったら手の者に接触させる予定だ。

 四男の山岡鉄舟と次男の榎本武揚は、何としても家臣に迎えたい。

 長男の大久保一翁と勝海舟は諦めた。

 特に勝海舟は扱い難そうなので、俺には手に余るかもしれないから。

 これだけの明治維新志士の親を召し抱えたら、歴史を大きく変えられると思う。


「スカウト出来た者」

「長州藩士」

杉百合之助常道:吉田松陰の実父で石高二十六石の極貧武士

吉田大助   :吉田松陰の叔父で養父・松下村塾師匠

久坂良迪   :久坂玄瑞の実父で萩藩医

山縣三郎有稔 :山縣有朋の実父、最下層の武士

吉田清内   :吉田稔麿の実父で十三組中間

入江嘉伝次  :入江九一の実父で足軽

佐世彦七   :前原一誠の実父で大組四十七石

村田孝益   :大村益次郎の実父で村医

和田昌景   :木戸孝允の実父で藩医

「土佐藩」

岡田義平   :岡田以蔵の実父で二十石六斗四升五合の郷士

「庄内藩士」

齋藤豪寿   :清河八郎の実父で郷士

「福岡藩士」

平野吉郎右衛門:平野国臣の実父で足軽

       :門弟千人の神道夢想流杖術の遣い手

「佐賀藩士」

江藤胤光   :江藤新平の実父で下級武士の手明槍

「大洲藩士」

武田敬忠   :武田斐三郎の実父で妻の実家は漢方医

「その他」

伴林光平   :西本願寺の学寮で勉学中

頼山陽    :頼三樹三郎に実父で儒学者

小森正造   :田中河内介の実父で医師

小林直輔   :大鳥圭介の実父で医師


「今後も様子を見る部屋住み」

「長州藩士」

柏村安利   :広沢真臣の実父

「熊本藩士」

横井時直   :横井小楠の実父で家禄百五十石

「松代藩士」

佐久間一学国善:佐久間象山の実父で五両五人扶持の微禄だが

       :藩主の側右筆を務め卜伝流剣術の達人

「幕臣」

小野朝右衛門高福:山岡鉄舟の実父で六百石

榎本武規   :榎本武揚の実父で西丸御徒目付

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