10.「高級宿の、お風呂にて――裸の付き合いは『距離を縮める』って言うけれど……」

 * * * * * *



 ――エレナは目の前で行われている『その光景』から、目が離せなかった。

 自ら『箱入り娘』と自称するほど性知識に乏しいエレナにとって、その光景はあまりに刺激的過ぎ――それ故に、ドキドキして目が離せない。


 そして、そんな二人の様子を見つめるエレナが、最初に思ったこと――それは『羨ましい』だった。


 期待、羨望、嫉妬、羞恥――そんな複雑な感情が入り混じった視線を、リゼに向けるエレナだったが……しばらくして、ハッと我に返る。

 

 ――っ……! 私は一体、何を考えて……!


 そして――ちょうど、その時だった。



「……これは、『大きい方』も触らないと分からないかも……」



 ――ビクンッ。

 トーヤがボソリと呟いたその言葉に、エレナは露骨に体を反応させる。


 ただでさえのぼせて赤くなっていたエレナの顔が、みるみるうちに火の出るような真っ赤な色へと染まっていくのだった……。


「……エレナ」

「っ……! わ、私もそれを、やるのかっ……?」

「やらないなら、私の『不戦勝』ってことになるけど……」


「むぅ……」


 リゼの言葉に、エレナはしばらく葛藤していたが――やがてゆっくりと手を伸ばすと、弱々しく僕の手を掴む。


「その……優しく、頼む……」


 そう言うエレナは、恐る恐るといった、上目遣いで……

 正直、すごく可愛い。

 こうなってくると、むしろ僕の方が緊張してしまう。


 …………。

 ――そう言えば、どうして僕はエレナの胸を触るなんて事になったんだっけ……


 …………。

 ……とりあえず、深く考えるのはよそう……。


「それでは、行きます……!」


 ――むにゅり。


「んっ……!」


 やはり恥ずかしいのだろうか、エレナは一瞬息を飲む。

 さっきまで、首まで湯船に浸かっていたからだろうか――手のひらに感じる肌の感触は、灼けるように熱い。


 ――むにゅ。むにゅ。

 ――これは……! 物凄い重量感。そして柔らかさっ……! 

 これは、ヤバい……


 そして僕は吟味するように、エレナの『たわわな双丘』の感触を確かめていく。


「ふぅ、ふぅっ……んっ……!」


 心無しかエレナの呼吸が荒くなっていく。

 エレナはしばらく羞恥に耐えるような、そんな表情を浮かべていたが……やがてのぼせてしまったのか、目つきもトロンとしていく。そして――


 ――ぷにゅ、ぷにゅっ。

 僕の背中に、もう一つのが押しつけられたのだった。

 こ、この感触は……!


「……終わるまで、離さないって言ったでしょ」


 振り返るまでもなく――リゼが後ろから、ギュッと抱きついてきたのだった。

 リゼの呼吸に合わせて、リゼの体は小さく上下運動していく。

 そしてその度に、が擦れて気持ち良くなってしまう……!


 ――っ……! これは、明らかに『反則』だ……!


 心を乱せば、リゼの思う壺……とにかくっ、手元にだけ集中しなければっ……。

 そして僕は無心となって、エレナを『モミモミ』するのだった……。



  ◇



 そして、しばらくして――

 僕はリゼとエレナ、二人の前で、ゆっくりと口を開く。


「……整いました」

「…………!」


 まるで待ってましたと言わんばかりに、一人、息を飲むリゼ。

 正直この結論を出すのに、かなり悩んだ部分はある。しかし……その分、納得のいく答えが出せたハズだ。

 ……そして僕は、『結論』を発表する。


「――『一夜で激しく燃え上がりたい』のはエレナ、『ずっと触っていたい』のはリゼだと思います……!」


「つまり……私の勝ちってことね」

「いや……私の方も負けてないぞっ……!? とっ、トーヤが、私のことを……『激しく燃え上がりたい』って……!」


 ――リゼとエレナ、反応はそれぞれだ。

 『安定感』のリゼ、『爆発力』のエレナ――正直、甲乙つけ難いというか……自分の中で順序なんて、つけられないというのが正直な所だった。

 だから、こういった結論になったのだけれども……

 どうやらリゼは僕の『答え』に満足してくれたようで、本当に良かった……。


 こうして、ホッとする僕の一方で――

 リゼはエレナに向けて、悪戯っぽく言う。


「へぇ……エレナはトーヤ君と、『激しく燃え上がりたい』んだ?」

「っ……! そっ、それは、そのっ……!」


 リゼの指摘に、慌てたように取り繕うエレナ。

 ……ひょっとして、リゼって結構Sっ気があるのだろうか……?

 リゼは尚も、エレナ弄りを続ける。


「エレナが相手なら、私は構わないけれど……『する』時は、私に教えてね?」

「わわわ私は、そのっ、今すぐ『そういうこと』をするつもりはないぞっ!? もっと色々段階を踏んでから――」

「ふぅん……段階を踏んで、それからトーヤ君と『何』をするの?」

「そそそっ、それはっ……!」


 恥ずかしそうに顔を赤らめて、モゴモゴと口を動かすエレナだったが……

 ――そこで、僕が助け舟を出すのだった。


「はいはい、リゼも、あまりエレナを虐めないであげて下さいね」


 僕の言葉に、エレナはパッと顔を明るくする。

 一方で――リゼは僕に近づくと、なじるように言うのだった。


「トーヤ君も……トーヤ君ばかり私たちの体を触るなんてずるいわ。――私にも、触らせて?」

「わわっ、リゼさん!?」

「トーヤ君の体、たくましくて、凄い好き……」


 勢い良く、ギュッとリゼに抱きしめられる僕。そして、そのまま後ろへ押し倒されるのだが……。

 ――むにゅ。

 何やら背中に、柔らかい感触が……。まさか、これって……!


「っ〜〜〜〜!」


 後ろでエレナが、言葉にならない叫びを上げる。

 そして僕は二人の女の子に挟まれながら、揉みくちゃにされるのだった……。

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