第166話 3日目?-5

ラヴィ様とケルベロちゃんの情報交換も終わり、ラヴィ様は早々に他の神たちと共に忙しく動き回ることになったようだ。ケルベロちゃんはビジネスホテルへ一旦戻ることになったらしく、俺達を連れてビジネスホテル前に転移する。結界は継続的に張られているようで、例外はあるだろうが、基本的には女神ランクⅠ以下の者は直接ビジネスホテルの中へ転移することは出来ない。少し時間が経って俺も少し落ち着いたようだ。急いで何とかしないと……という焦りは収まっている。自分の手に余る事態だというのも感じているが。




ニ「私の部屋はダーリンと一緒にして欲しいのですよ。」


レ「おい、その呼び名は止めろ。語尾が『だっちゃ』になっても知らんぞ。」


ニ「よくわかりませんが、分かりました旦那様!」


レ「俺はまだ旦那になった覚えはない!」


ケ「どちらにしろ、嫌でもニーナと護衛先であるあなた方を分けるわけにはいかないですワン。」


ヤ「えー、ワルキューレさんみたいに隣の部屋でもいいんじゃないですか?」




弥生が同室になる事に抗議する。しかし、ケルベロちゃんもすでに出た命令に逆らえないのか、却下する。弥生が自分で見張るという事で、とりあえず以前の部屋をそのまま使うことになった。ニーナの部屋は以前のワルキューレの位置だ。




ニ「わざわざ私に部屋を与えなくも、旦那様と同じ小部屋でいいのですよ。」


ヤ「よくありません! あなたの部屋は、こ・こ・で・す・か・ら・ね!」




部屋のおさらいをすると、入口からすぐの部屋が大部屋、その右が小部屋2つで、うち一つがイルナの部屋。その北側に弥生の使っている小部屋がある。大部屋の北側が俺の使っている小部屋で、大部屋から左に行くと洗面所、さらに北奥にトイレ、西側が脱衣所、風呂となっている。ニーナの部屋は大部屋の東側の小部屋だ。基本的には大部屋を通らなければ俺のところへ来れないが、寝るときは、闇の壁で区切ってはあるが、大部屋で全員寝るのであまり部屋の位置にこだわる必要は無いかもしれない。


以前は大部屋を3つに区切り、右側半分をアヌビス、イルナ、弥生が、左下をワルキューレが、左上を俺が使用していた。なお、闇の壁は完全に区切っている訳では無く、目隠しのためのついたての役目だけなので、人が通れる隙間は開けてある。じゃないと、夜にトイレに行けないからな。


その辺をニーナに説明してやる。




ニ「分かりました。それじゃあ、東側で弥生さん、イルナさん、アヌビスさんが寝て、西側で私と旦那様が寝るのですね。」


ヤ「ちゃんと話を聞いていましたか? あなたの場所は洗面所前の4分の1の部分だけです!」


ニ「大丈夫なのですよ。私にはワルキューレのように区切らなくても、隠すようなプライベートは無いのですよ。すでにすべて旦那様に見られているのですよ。」




半ドラゴンの姿か。巨大化するにあたってプロポーションも良くなっていたが、さすがに何メートルもある姿と一緒に寝たいとは思わない。寝返りだけで踏み潰されそうだ。




ヤ「いいえ。何があろうと区切ります! 頼みましたよ、アヌビスちゃん。」


ア「分かったのじゃ。しっかりと隙間なく囲むのじゃ。」


イ「……アヌビス様、それだとトイレに行けない……。」


ア「そうかの? それじゃあ、場所を入れ替えるのじゃ。」


レ「その場合、俺がトイレに行けなくなるわ!」




あーだこーだと押し問答した末、結局当初のままの位置に落ち着いた。ただ、ニーナだけ四方八方すべて闇の壁に囲まれるという形で。まあ、どうせニーナが壊そうと思えば、あっさりと壊れるだろうから気分的なものだな。




ア「とりあえず、食べられるうちに食べるのじゃ! ホットケーキ!」


ニ「ほっとけーきってなんなのです?」




ニーナも食にはうといらしく、しかし甘い物は好きというのでホットケーキにした。昼食には遅く、夕食には早い、3時のおやつの時間か。俺も緊張が解けて空腹感が強まった。心配で飯が喉を通らないという事にはなっていないので、俺は薄情なのかと少しがっかりした。しかし、ここで食わなくても何かが好転する訳では無いので、気を取り直してご飯にする。ただ、がっつり食いたいとも思わなかったので、ラーメンだけでいいや。弥生も、食うときは食うという感じで、カルビ丼を食っている。イルナは、責任を取るという事でマグロ丼になった。




ニ「甘くておいしいのですよ!」


ア「そうじゃろ? 我はずっとホットケーキだけで生きていけるのじゃ。おぬしもそうかの?」


ニ「いえ、私はそこまでではないのですよ。」




アヌビスは裏切られたと感じたのか「ガーン」と言う顔をしている。しかし、好きなものが一緒という事で、アヌビスはいろいろなトッピングをホットケーキに施す。ニーナは、ホイップクリームを乗せたホットケーキが気に入ったようだ。




それから、ニーナからいろいろな話を聞いた。サンガ様が天の川銀河の担当神であった事、ジルフィール様が太陽系の担当女神であった事、ケルベロちゃんが意外にも地球の事を知っていた事。まあ、これはよく考えれば俺達が言った物を用意できる時点で、そう言われればそうか、ぐらいに思う。地球付近の神達の事をよく知っているみたいだし。




太陽系以外の星には、それなりの数の女神が居るそうだ。ただ、知的生命体と言えるほどの生命体はおらず、地球だけが特別視されているらしいな。まあ、ドラゴンの星の知的生命体であるドラゴンや、アヌビスの星の文明を見ると、地球の文明は進んでいる方なのだろう。ビルや乗り物を作るのが正解なのか、自然と調和して生活するドラゴンのどちらが正解なのかは俺には分からないが。


そうしているうちに夕食の時間になる。アヌビスは相変わらずホットケーキだが。




ニ「他に何かおすすめはあるのですか?」




ニーナも地球の食べ物には興味津々なようだ。あれから4時間ほど経ったのでそれなりに腹も減っている。




レ「肉か、魚とどっちが好きだ? どっちでもないパスタとかもあるが。」


ニ「旦那様のおすすめがあれば、それがいいのですよ。」




ドラゴンか。ドラゴンと言えば肉か、雑食なイメージがあるな。まあ、ニーナの姿を見ればお子様ランチが似合いそうだが、その件はもうやったし。まあ、似たようなところでカレーにでもするか、超激辛の。俺もカレーは好きなので、2日連続の6食くらいは食えるくらいだ。それ以上はさすがに飽きる。


弥生はマグロの刺身とマグロの炙り焼きを。イルナはハンバーグを注文する。俺はこっそりとケルベロちゃんに超激辛カレーと普通のカレーを注文した。ケルベロちゃんもニヤリと意図を理解したようだ。




ケ「お待たせしましたワン。」




待たせるというほど待たずに運ばれてくる。ニーナの話でほぼ確信に変わったが、これはやはり地球から取り寄せたものなのだろうか。ニーナの前には、どう見ても辛く見える赤いカレーが。俺の前には普通の黄色のカレーが置かれる。




ニ「旦那様のと少し色が違いますね?」


レ「味が違うんだ。どっちが好きかは好みかな?」


ニ「いただきまーす。」




俺は内心笑いを堪えて、ニーナが一口目を食べるのを見る。パクリと食べたニーナは、全く顔色を変えない。




ニ「おいしいのですよ!」




あれ、おかしいな? 古典的な口から火を噴くというのをリアルにやるのを期待していたくらいなのに。俺はニーナが辛さに強いという結果を残念に思いつつ、自分のカレーを一口食う。




レ「超辛え!!」


ケ「ゲラゲラゲラ、かかりやがったぜ!」




ケルベロちゃんめ、やりやがったな! 色だけ辛そうな普通のカレーをニーナに、見た目が普通だけど超激辛カレーを俺の前に置きやがった。やばい、辛すぎて唇が熱いし、喉がひりひりするし、飯テロだ!




ニ「そんなに辛いのですか?」




ニーナは俺の様子をよそに、カレーを一口パクリと食う。




ニ「ほどほどに辛くておいしいのですよ!」




くっ、やはりドラゴン、辛さにも耐性があるとは……。それを確認し、俺の意識は遠くなった。

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