第122話 ダンジョン攻略18日目
目が覚めると、アヌビスもすぐに寝てしまったようで闇の壁すら張られていないようだ。一応布団の上で寝ているのが見える。アヌビスもすっかり大人の顔になったので、無防備な寝顔を見るとドキリとする。その横には弥生とイルナも寝ている。弥生とイルナは一応パジャマに着替えたようだで、寝相良く寝ている為、肩までしか見えないが。あんまり寝顔を見るのも悪いと思ってさっさと顔を洗いに行くことにする。
改めて鏡を見るが、結構髭が伸びているのと、スーツがしわになっているのに気づいた。
レ「あーあ、こりゃ新しいのに着替えたほうがいいか。」
俺は寝癖を直し、ひげをそる。そして、朝飯はどうなるんだ? と考えたあたりで誰かが起きる気配がした。
ヤ「源さん? おはようございます。」
寝起きの弥生は初めて見るが、少し眠そうな顔で目をこすっている。パジャマ姿が新鮮かつ妖艶に見える。
レ「ああ、おはよう。今日の朝飯はどうする?」
ヤ「うーん、みんなが起きてから決めましょうか。」
弥生は歯磨きをはじめたので、俺は着替えに部屋に戻る。
イ「……エッチ。」
またこのパターンか。わざとやっていないか? イルナが丁度メイド服に着替えている途中で、相変わらず着替えを止めて隠す様子も無い。
レ「おはよう、イルナ。アヌビスもそろそろ起こしてくれ。」
イ「……わかった。」
俺の無反応ぶりにちょっぴり残念そうな顔をするイルナだが、着替え途中でアヌビスを起こしに行った。まあ、俺が着替え終わる頃にはイルナも着替え終わっているだろう。
俺は予備のスーツに着替えると、こっそりドアの隙間から大部屋を見る。弥生がすでに着替え終わっていて、イルナも着替え終わったようだし、アヌビスも起きた様だ。
レ「おはよう、アヌビス。」
ア「おはようなのじゃ。うーん、すっかり寝てしまったようじゃの。」
伸びをしているアヌビスを見ると、服は神装備なのでシワも汚れも無い。うらやましい。
レ「みんな、何か食いたいものはあるか?」
ア「ホットケーキ!」
ヤ「なんだかんだでお米が食べたいです。」
イ「……なんでもいい。」
とりあえず、飯自体が用意できるのかどうかケルベロちゃんにコールしてみる。
ケ「おはようございますワン。疲れは取れましたかワン?」
レ「ああ、俺は一応元気だぞ。みんなも見た感じいつも通りだ。」
ケ「それはよかったですワン。それで、朝食ですかワン?」
レ「ああ、ホットケーキと、焼き魚定食2つに、イルナは……。」
イ「おでん。」
よくわからんが、いきなりおでんが食いたくなったようだ。まあいいけど。
レ「おでんだそうだ。」
ケ「分かりましたワン。」
すると、すぐにケルベロちゃんが部屋に来て、テーブルの上に並べていく。転移が出来ないため、相変わらず徒歩ではあるが、素早さが高いため転移とほとんど変わらんな。
いつもと違ってケルベロちゃんは配膳の後は戻らないようだ。ジッと食べている姿を見られるのもなんか落ち着かないんだが。
レ「ケルベロちゃん、どうしたんだ?」
ケ「本当に大丈夫そうでよかったです、ワン。それで、今日もダンジョンに行くのかワン?」
レ「逆に聞くが、ダンジョンへ行ってもいいのか?」
ケ「ちょっと待つワン。」
ケルベロちゃんはそう言うと、目をつぶる。
ケ「千里眼で見た様子では、カイザーもべリアスも居ないワン。ただ、ウロボロスだけは戻ってきているようですワン。」
レ「それなら、ダンジョン攻略に丁度いいんじゃないか?」
ケルベロちゃんも少し考えている。カイザーが居たら当然無理と判断するし、べリアスが居ても危険が高いため無理と判断しただろう。ただ、目標であるウロボロスは、居場所が分かるうちに対処したいところだ。ケルベロちゃんにとっても放置できる案件ではないだろうし。
ケ「危険があれば即転移するという条件でどうですかワン?」
レ「ひとまずそれで行こうか。べリアス、カイザーが来たら即逃げるぞ! みんなもそれでいいか?
」
ヤ「それでいいと思います。どうせここに居てもやることも無いですし。」
ア「頑張るのじゃ!」
イ「……倒す。」
皆もやる気があるようで、気合を入れている。今更レベル上げに行く場所も無いし、何かあったら八岐大蛇と融合すれば何とかなると思う。俺たちは食べ終わった食器をケルベロちゃんに片付けてもらうと、荷物を持って準備を完了する。
俺達はビジネスホテルの前に出ると、もう一度忘れ物が無いか確認する。大丈夫そうだ。
ケ「今日はあたち自身が着いて行きますワン。ラヴィ様とはまだ連絡が付かないワン。」
いきなり不穏な事を言うが、まあ、今それを言っても俺達にはどうしようもないのでこのまま行く事にする。
ケ「それでは行きますワン、転移!」
ウ「お前たち、また来たのか。馬鹿なやつらだ。」
レ「……いきなりかよ!」
目の前に、昨日と同じ人間の姿のウロボロスが居る。そして、転移魔法で大量のモンスターが召喚された。これにはケルベロちゃんは手を出さないようで、俺たちに戦いをゆだねるようだ。昨日と同様、このモンスター達は弥生とアヌビスの鑑定が効かないが、イルナや俺ですら1発で倒せる程度のモンスターだ。
ウ「……やはり、雑魚共ではダメか。」
レ「やっとお前が戦うのか?」
ウ「まさか。そろそろ気が付かないのか?」
レ「何がだ?」
ロ「やっと会えたわね?」
ウロボロスの後ろから、急に敵が現れる。ゲッあの姿は見たことがあるぞ。
レ「ロ、ロキエル!? どこに居たんだ!」
ロ「ふふっ、そこの犬女神にすら見破れない透明化で隠れていたのよ。」
ケ「まさか、罠か!」
ロ「そうよ、それにお前たちが雑魚と戦っている間に、転移無効の結界を張らせてもらったわ。」
ケ「転移! 無理か!!」
ケルベロちゃんは一瞬で戦闘態勢に入る。しかし、ロキエルは女神でいえばランクⅡで、ケルベロちゃんでも歯が立たない。
ロ「さらに、こっちは転移可能なのよね。」
ロキエルが転移魔方陣を発動させるが、それを邪魔できる様な戦力は無い。悠々と完成された魔方陣から、カイザーが現れる。
ロ「これだけじゃないわよ?」
もう一人、見た事のない悪魔が召喚された。見た目は小学生くらいの女の子だ。
ウ「私まで来る必要があったのかしら?」
ロ「いいじゃないウリエル。どうせ暇だったんでしょ?」
ウ「暇じゃないわよ! ……少しだけ、暇だったわ。」
ウリエルと呼ばれた悪魔は、ちょっとだけバツの悪そうな顔をする。
ケ「ウリエルだと!?」
ウ「そうよ、何よ犬みたいなガキ。」
あーあ、ケルベロちゃんにガキって言ったらどうなっても知らんぞ。と思ったが、ケルベロちゃんは意外に冷静で、反論する様子も無い。それどころか、顔色が悪い。
ケ「最悪だ、女神ランクⅡ相当が二人に、女神ランクⅠ相当が一人、終わりだ。」
すでに語尾にワンとつける余裕すらないケルベロちゃんが、諦めたように尻尾を垂らしている。えっ、あの小学生みたいなのもロキエルと同等なの!?
カ「はぁ、この程度のやつらにここまでする必要があるのか?」
ロ「一応、念には念を入れてね? 万が一、ラヴィが来たらよろしくね。」
カ「ラヴィ……ウサギの女神か? よかろう。それまで傍観する。」
カイザーはそう言うと、地面に腰を下ろす。一番強いやつが戦わないと言うのは助かるが、それでも勝ち目がないと言うのは分かる。
ウ「ねね、せっかくだし私がやっていい?」
ロ「そうねぇ、そこの男以外ならやっていいわよ。」
ウ「じゃあ、さっそくやろうか。バキューム!」
ウリエルがそう言った瞬間、呼吸が出来なくなる。これは……空気が無くなった!?
ヤ「……!?」
イ「……。」
ア「……!」
ケ「こいつ、一帯を真空にしやがった!」
神には効かないようで、向こうの悪魔たちとケルベロちゃんは平然としているが、それ以外の人間は呼吸が出来ない。アヌビスも復元体なので人間寄りだ。まさか、こんな魔法があったなんて……。ケルベロちゃんはウリエルにダメもとで攻撃しようとするが、ロキエルが立ちふさがる。
ロ「邪魔しちゃダメよ?」
ロキエルは水の球をケルベロちゃんに当てる。ケルベロに16691000ダメージ。さすがに1発では死なないようだが、衝撃によってケルベロちゃんは吹き飛ばされる。
ロ「って、ウリエル、待ちなさい! 男も苦しんでいるじゃない!?」
ウ「あっ、ごっめーん。範囲魔法だから入っちゃってた。解除。」
レ「げほっ、はぁ、はぁ。」
ヤ「ふぅ、はぁ、し、死ぬかと思いました。」
俺達はやっと呼吸できた。真空によって涙も蒸発したのか、目が乾燥して涙が出てくる。もう少し遅かったら死んでいたかもしれない。
ア「蘇生!」
アヌビスは蘇生によって俺たちの体を治してくれた。
レ「助かった、サンキューアヌビス。」
ウ「ちぇ、邪魔しないでしょ。闇の剣!」
ウリエルから放たれた闇の剣は、アヌビスの腹部に当たる。アヌビスに20995100ダメージ。アヌビスはコアになった。
レ「アヌビス!」
ヤ「アヌビスちゃん!」
イ「アヌビス様!」
イルナは慌ててアヌビスのコアを拾うと、憑依する。
イ「つ、強すぎるのじゃ!」
ウ「そろそろワンちゃんも死んで? 闇の剣。」
ウリエルは両手に闇の剣を作り出すと、ケルベロちゃんに投げつける。ケルベロに28691000ダメージ×2。ケルベロはコアになった。
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