第102話 帰還
ラヴィに連れられて、カウンターの奥にある部屋へ向かう。部屋の入口には、何か紋様のようなもので枠が彫られている重要そうな扉がある。
ユ「素晴らしい装飾の扉ですね。ここへ入るのですか?」
ユウがラヴィに尋ねる。俺も同じことを思ったが、さっきの事があるので話しかけにくかったから丁度いい。
ラ「はい、こちらは神界へ行ける選ばれた人だけが入れる部屋です。メィル様の許可が無ければどんな神様でも入れない場所となっています。今は私が許可をもらっているので、私が開けますね。」
ラヴィが扉の横にあるプレートに触れる。まるで静脈認証みたいだな・・・。
それが終わると、さらに本人かどうか確かめるためだろうか、ラヴィが光に包まれる。一瞬服が透けたように見えたが、気のせいか? くっ、もっと動体視力を鍛えておけばよかった!
ラ「認証が終わりました。さあ、入って下さい。」
一旦認証が終われば誰でも入れるようだ。俺達はラヴィに続いて部屋に入る。
部屋の中は真っ白なドーム状で、壁の材質が何か分からない。この白さは石灰のようだが、まさか石灰ではないだろうな・・・。
レ「ここは何だ?」
明らかに他の作りと違う部屋に困惑する。まさか、ここが神界? そう問おうとしたら、ラヴィは何やら部屋の真ん中にある魔法陣で祈りの様な物を捧げているようにみえる。
ラ「ちょっと黙っててください。魔法陣を起動させるには私には負担が大きいので、集中が乱れると・・・あっ、乱れました。」
ラヴィがそう言った瞬間、真っ暗な水中に転移した。
レ「ごぼっ!」
ラ「ああ、ここは深海ですね。」
ラヴィはどうやって水中で話しているのか分からないし、平気そうだし、俺はもう水圧で潰れて死にそうだし・・。
俺は気が付くと、さっきの真っ白の部屋にびしょぬれで戻ってきていた。
ラ「すみません、ちょっとした手違いで死なせてしまって。」
大して悪いと思っていなさそうな感じの謝罪を受けた。そして俺は死んでいたらしい。服を着たままだから、ペチャンコで・・って考えたくない。
レ「おまっ! 死なせてって・・。」
ラ「蘇生したからいいじゃないですか。」
俺のセリフは途中で遮られる。それに、深海へ転移したのは俺だけの様で、ユウもアヌビスも濡れていない。もしかして、わざとじゃないか? そう思って怒りのままラヴィを睨みつけようと思ったら、いつの間にかヴェリーヌが居た。
レ「えっ、ヴェリーヌ・・様?」
そう問いかけたが、ヴェリーヌからの返事はない。また、ラヴィの目は光を失い、無表情だ。
ヴェ「神界への道が開けるのをずっと待っていた。」
ヴェリーヌは右手を地面につける。すると、ヴェリーヌの前に転移陣が現れる。一目で神だと分かるような男が現れた。ヴェリーヌ以上の神々しさと、まるで一流の彫刻家が、生涯をかけて理想の男性像を掘ったかの様な美形だ。
ベ「これが神界へ通じる魔法陣か?」
ヴェ「その通りです、ベルゼブブ様。」
ヴェリーヌが様付けするような格上がここに・・? 何しにいるんだ? 絶対に俺達を見届ける為にいるわけではない事は分かる。
ベ「こういう機会でもないと、神界へは行けないからな。」
ヴェ「今回はラヴィが担当となったので運が良かったようです。情報を得ることが楽だった上に怪しまれずに動くことが出来ました。ついでに、いくつかダンジョン内に時空間の抜け道を作っておきました。」
ヴェリーヌの話で、未来でちょくちょく悪魔が現れたのは、ヴェリーヌの細工だったと分かった。
2人は、まるで俺が居ないかのようにふるまう。確かに、ヴェリーヌの実力を考えれば、人間の立ち話を細菌が聞いている様なもので、目にすら入らないだろうな。しかし、ベルゼブブと呼ばれた神にはそうは映らなかったようだ。
ベ「それで、こやつらは?」
ヴェ「コレらですか? このダンジョンのテストに呼ばれただけの人間の様ですよ。」
ヴェリーヌにもコレ扱いされた!? 俺は反論しようかどうか迷っていると、ベルゼブブが俺に近づいてくる。俺は何故か逃げ出したく感じたため、一歩下がる。
ベ「怖がらなくても良い。何か、変な雰囲気を感じたものでな?」
ユ「どうかしましたか?」
ア「それ以上近づくでない!」
さらに近づいてくるベルゼブブに危険を感じたのか、アヌビスとユウが立ちはだかる。しかし、ベルゼブブがフッと息を吹きかけただけでユウとアヌビスは消滅した。
レ「な、なにを・・?」
俺はさらに下がろうとしたが、すでに後ろは壁だった。
ベ「まあいい、人間が何をしようが我らには関係ないか。」
ベルゼブブは気が変わったのか、さっさと魔法陣の方へ向かうと起動させた。ベルゼブブの姿が魔法陣に消え、続いてヴェリーヌの姿も消える。
レ「待て!」
俺は自分でも何を考えて行動しているのかわからなくなったが、このままいかせてはいけない事だけはわかった。俺が魔法陣へ足を踏み入れ、光に包まれる。光が収まると、追いかけるように手を伸ばした右手にフニョンと柔らかい感触があった。俺はそれを揉む。
ヤ「な、ななな、なにをするんですか!!!」
クリティカル発生、零に5069ダメージ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます