第98話 ラヴィ作成キメラ

皆「ごちそうさまでした。」





塩だけで味付けされた鍋でも、魚の出汁が出ていて旨かった。これからずっと鍋でもいいかもしれない。いや、さすがに飽きるか。そもそも、いつまでここに居なければならないんだろうな。確実なのは10階をクリアしてメィルに元の世界に戻してもらう事だが、そんなにうまいこと行くのだろうか?





俺は食後の眠い頭でそう考えていると、思ったより時間が経っていたようで、ラヴィから「そろそろ行きますよ。」と言われてしまった





今回は6階への階段手前からだ。運良くモンスターは居ないようだ。ユウを先頭に階段を上っていく。未来では6階から確か廊下が少し広くなって天井が飛行できるように高くなっていたはずだ。





レ「ふむ。5階と変わらないな。」


ラ「作られたばかりのダンジョンなので、すべての階層は一律一緒になっていますよ。あ、マップは違いますけどね。」


レ「だとすれば、ドラ……なんでもない。」





この広さでドラゴンが入るのか? と聞こうとしたが、それを知っているとまた疑われるので聞くのを止めた。未来でもまだドラゴンは見ていないので、もしかしたら小さいのかもしれない……わけないか。ドラゴンだもんな。





通路に並んだ石像は、俺が持っているガーゴイルよりも作りが雑だ。俺のガーゴイルが一流の彫刻師が掘った物だとすれば、ここにあるのはまるで学生が一生懸命に作りましたっていうレベルの物だ。ガーゴイルと言うよりシーサーか?





俺は像の頭にポンと手を乗せる。すると、像は動き出し噛みつこうとしてきた。それをサッと手を引いて回避する。





ラ「不用意に何でも触れないほうがいいですよ?」





ラヴィはドヤ顔で言ってくるが、わざと触ったに決まっているんだが。





レ「ユウ。」


ユ「分かりました。」





ユウは不死者用にと用意した棍棒で像を殴る。こういう固そうなものには剣は向かないよな。





ユ「……壊れた?」





殴られた像は首部分が取れて動きを止めたが、消える様子はない。その代わり、他の像も動き出し始めた。偽物の像が無いのか、すべての像が動き出しているようだ。





ラ「ガーゴイルは、石像に動きを埋め込んだもので、モンスターとはまた違うのです。ちなみに、設計は私が行いました!」





ラヴィが胸を張って威張る。だからドヤ顔だったのか。でも、下手だと言わなくてよかったな。


また、ここのガーゴイルは石像に羽が無いので飛べないのだろう。どちらかと言うと狛犬かこれ。





レ「攻撃力特化型零ゾンビ、行け。」





俺は物量には物量と、10体の零ゾンビを作成した。





ラ「何ですかその変なのは! 噛みついたら増えそうで嫌ですね。」





俺のゾンビに感染能力なぞ無いわ。でも、この時代にもゾンビは居るのかもしれないな?


石っぽいくせにゾンビの攻撃であっさりとガーゴイルが壊れていく。壊れるたびにラヴィが「あぁっ」と少し悲しい顔をするので俺が攻撃しなくてよかったと思う。ユウが攻撃した時は特に顔色を変えていなかったはずだが……。





10分ほどして、通路は石の破片だらけになってしまった。





ラ「……この階は要改善ですね。」


レ「少なくとも、下の階と同様に消えるようにした方がいいだろうな。」





それに、ラヴィが作ったのなら有限だろうし、蘇生できるのか? と思っていたらさっそくラヴィが時空間魔法でガーゴイルを直していた。一応、今すぐ動くようにはしていないようで、ただのオブジェクトになった。





少し進むと、次はキメラが出てきた。もしかして、これもラヴィが作ったのか? キメラと言うよりもヌエじゃないかこれ。猿っぽい頭に蛇の尻尾、胴体は虎か?





レ「このモンスターは……?」


ラ「はい! 私が作りました!」





やっぱりか。このキメラも飛べないようだが、蛇の尻尾から毒液を飛ばしてきた。





レ「おっと。盾があって助かるな。」





そして、俺の後ろからユウがキメラに近づき尻尾を切る。すると、キメラは猿の口から火を吐いてきた。その火はユウに当たったが、ダメージは無いようだ。





レ「ほぅ、魔法まで使えるのか。」


ラ「そうですよ、いろいろ考えて作りました!」





いろいろ考えた結果、未来では飛行させるのだろうが、今は飛行が無くて助かる。俺もガーゴイルと融合すれば戦えるが、楽に戦える方がいいに決まっている。未来のためにも少し苦戦しておくか!


俺はユウにアイコンタクトを送ると、ユウも分かったようで、火魔法でダメージは受けていないはずだが、まるで重傷を負ったかのようによろめいて膝をつく。





ラ「ああ! ユウ様、大丈夫ですか! 蘇生!」





ラヴィは鑑定が無いのでユウにダメージが無いことに気が付かない。ただ、ラヴィはユウに対してサポートしすぎだと思う。ユウもさすがにそのまま倒れるわけにもいかず、張り付けたような笑顔で「助かりました。」とスッと立ち上がる。それを勘違いしたラヴィが「それほどでもないです。」と照れた顔で言っているのが微妙に腹が立つ。


俺は苦戦作戦をやめて、スラタンでキメラに切りつけた。作られたモンスターだからか、ガーゴイルと同じく血が出ないので俺にとってはやりやすい。ついでにガーゴイルと融合して火の玉で燃やし尽くしてやった。





ラ「うぅ、作り直しですか……。」





俺がやりすぎてしまったのか、時空間魔法で直されることも無くキメラの作り直しがラヴィの中で決まったようだ。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る