第90話 ダンジョン攻略16日目

朝起きた時、まだ闇の壁が張ってあった。時計を見ると6時30分で、いつもの弥生なら起きている時間だ。




レ「アヌビス?起きてるか?」


ア「起きてるのじゃ。闇の壁を解除!」


ヤ「ちょっと!待ってください!あっ・・・。」




ちょうどパジャマの上着を脱いだ弥生が目に入った。白のブラジャーだった。俺はそっと布団の中へ潜り込んだ。アヌビスは珍しくすでに着替え終わっていた。




ヤ「源さんに見られちゃったじゃないですか!」


ア「下着くらいなんじゃ。我なんて風呂も一緒に入っていたのじゃ。」


ヤ「アヌビスちゃんは良くても、私は良くありません!」


ア「そんなに嫌なら自分の部屋で着替えればよかろうに。」


ヤ「つい癖で・・・。いつもなら大丈夫だったのに!」




その後結構な時間言い合いが続いたようだが、いくら言い聞かせても理解しないアヌビスに疲れたのか、弥生が折れた。




ヤ「もういいです! 今度からは気を付けてくださいね!」




そう締めくくった声が聞こえたので、「もういいか?」と布団越しに聞いたが、まだ着替えてなかったようで「もう少し待ってください!」と言われた。




ヤ「イルナちゃんも早く着替えてください!」


イ「・・・おはよう。」




イルナも今起きたようで、ついでに着替えさせられたようだ。




ア「さっそく朝食を食べるのじゃ!ホットケーキ!」




アヌビスはさっそく腹ペコアピールをする。


俺はまだ起きたばかりで食欲もないため、アヌビスのホットケーキだけ注文した。ホットケーキを持ってきてくれたケルベロちゃんに聞いてみる。




レ「ワルキューレはどうしたんだ?」


ケ「ワルキューレは別室で寝ています、ワン。護衛はきちんとあたちがしていますワン。」




どうやらワルキューレは寝落ちしたらしいな。着替えに戻ってきた気配がないからな。


俺はストレッチと歯磨きをして大部屋に戻ってきた。弥生もきちんと身だしなみを整えたようだ。イルナはまだ眠いのかいつも通りなのかボーッとしている。アヌビスは食べ終わったようで、俺と入れ替わりに歯磨きをしにいった。




レ「朝食を頼むか?」




俺は弥生とイルナに聞く。




ヤ「そうですね。私は朝カレーにします!」


イ「・・・納豆ご飯。」




俺はカレーと聞いて食いたくなったので、カレー2つと納豆ご飯を注文した。イルナの世界にも納豆ってあるんだな。またケルベロちゃんが食事を配膳していってくれる。




イ「・・・納豆が違う、ヒキワリがいい。」




イルナがそう注文をつけると、ケルベロちゃんは一瞬で入れ替えた。俺達は食事を終えると、ダンジョンへ向かうことにした。




ヤ「今日はドラゴン退治ですか? それとも、ステータスを上げますか?」




結局ドラゴンのステータスは見られなかったが、一旦ステータスを上げるのもありだろう。しかし、ドラゴンを見てみたいな・・・。




レ「アヌビスはどっちがいいと思う?」




すでにアヌビスにとってはドラゴンすら倒せそうな強さになっているが。ステータス的には装備込みならアラクネを一人で倒せる。実際はクモの巣に引っかかって倒せなかったが。




ア「先にステータスを見てから決めれば良いのじゃ。まあ、最終階じゃないからそうそう今までと変わるとは思えないのじゃ。」


レ「イルナは?」


イ「・・・どっちでもいい。」




どちらかと言えばステータスを上げたい弥生、とりあえず9階を見ておきたいアヌビス、どっちでもいいイルナと、結局俺の判断に任せられることになってしまった。




レ「俺もせっかくだからドラゴンを見てみたい。」




そう言うわけで、一旦9階に行くことになった。そして、さあ行くぞと思ったところでワルキューレが転移してきた。




ワ「私を忘れるな!」


レ「結局、今日は俺達と一緒なのか?」


ワ「うむ。そうなるな。」




ワルキューレは連勤が続いた後に有休が取れたサラリーマンみたいな顔をしている。俺達の護衛を休暇だと思ってもらっても困るが。


ダンジョンに着くと、ラヴィ様がいたので聞いてみる。




レ「ラヴィ様、ダンジョンへ入っても大丈夫ですか?」


ラ「まだ結界が張られてないからダメですよ。とりあえず、明日にしたらどうかしら?」




俺は後ろを見るとワルキューレがガッツポーズをしていた。




ラ「ただし、ワルキューレは借りるわね。」




ラヴィ様がそう言うと、ワルキューレは絶望した顔をした。ワルキューレの周りがまるで闇魔法を使ったかのように真っ暗になっている。




ラ「離れなさい!」




ラヴィ様がそう言った時、その黒い部分からワルキューレが飛びずさるが、黒い範囲が広がっていく。


その黒いものに俺は吸い込まれるような感覚がして意識を失った。

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