第63話 閑話 ロキエル
ロ「さて、ルバートの痕跡を追って転移したんだけれど、丁度誰かが居てよかったわ。」
私は、魔界に戻ると、人間をその辺に放置した。そして、アイテムボックスからイスを出して座った。
レ「え?」
人間は、地面に座ったまま、無表情で聞き返してきた。状況が判断できていないのかしら?仕方ないわね。
ロ「私の仲間のルバートを知らないかしら? なかなか魔界へ帰ってこないから迎えに行ったのだけれど。ああ、名前を言われても誰か分からないのね? 見なさい、姿は私と同じような感じよ。」
私はそう言うと、しまっていた角と羽を出して見せる。調子に乗って少しポーズまで取ってしまったわ。
レ「え?」
私の姿を見ても何の反応も示さない。知ってて誤魔化しているのなら、演技がうまいわね。表情からは何も読み取れないし、感情が無いのかしら?
ロ「もう、本当に知らないの? 今なら、正直に話せばさっきの場所に帰してあげるわよ?」
鞭ばかりでは人間は言う事を聞かないと聞いたことがある。馬もニンジンをぶら下げれば走るように。人間には助かる道を示すのが効果的よね。
レ「え?」
帰れるという一番のエサをぶら下げても折れないなんて、信用していないのかしら?
ロ「強情ね、あなたの体に恐怖を刻んであげましょうか?」
エサでダメなら、やっぱり鞭しか無いわね。私は脅しの為に右手に犬女神を吹き飛ばしたのと同じ水の球を作り出す。
ロ「どう? 低ランクの女神なら1発で倒せるほどの水球よ? 話す気になったかしら?」
レ「え?」
情報を話すまでは危害を加えられないと思っているのかしら? じわじわといたぶる方法も無い事は無いけど、私の力じゃ何をしても1発で殺してしまいそうね。
ロ「・・・これは脅しじゃないわよ? 安心しなさい、これで死んでも直ぐに蘇生してあげるから。話すまで永遠に殺し続けることも出来るのよ?」
実際、私のMPなら蘇生に使うMPよりもMPの自動回復量の方が多い。痛みは無いかもしれないけど、蘇生されないかもしれないという恐怖は感じるわよね?
レ「え?」
私のこめかみに血管がビキリと音を立てて浮かび上がった。馬鹿にされすぎて、もう、我慢の限界が近いわ。殺したい気持ちを抑えて、当たらないように掌をずらすと、水球を近くの地面に撃ちこむ。ぶつかった地面が吹き飛び、大きなクレーターが出来た。
ロ「ね? あなたもこうなりたくは無いでしょう? さあ、話してくれるわよね?」
レ「え?」
ロ「もういいわ、一回死になさい!」
私は我慢の限界を迎え、水球を撃ちこむと、人間の全身が水球に覆われて一瞬見失ってしまった。攻撃特化型零ゾンビに18000000ダメージ。
ロ「さて、蘇生をしようかしら・・? あれ、コアが見当たらないわ?」
私はキョロキョロと辺りを探す。コアのまま逃げられる訳も無いし。
ロ「吹き飛ばしてしまったのかしら?」
私はせっかくの情報源を無くしたのかと思い、真剣に高速で飛行して辺りを探すが、コアは見つからなかった。
ロ「まさか、コアを残さないタイプの人間だったとか・・? ちっ、もう一度他の奴を捕まえるか。多少手がかかりそうだけど、この際、犬女神でもいいわ。」
私は腹ただしく思ったが、終わったことに後悔はしない。もう一度やり直せばいいだけだ。私はビジネスホテルに転移をする、が、転移できない。
ロ「なんで?! さっきは出来たのに! まさか、対処された? それなら、さっきの犬女神より上位の女神が結界を張ったという事ね。これは一旦、ルバートは諦めましょう。」
私はルバートに大した未練が無かったので、あっさりと諦めた。
★
メ「ぶべっ、なにこれ!?」
メィルは、ビジネスホテルで零を驚かそうと、壁を透過しようとしたがぶつかった。
メ「変な壁、えいっ」
メィルは壁を殴ったが壊れない。
メ「こうなったら、火魔法!・・・これもダメか。」
メィルは壁をゲシゲシ蹴っている。
ケ「・・・何をしている?」
メ「あ、ケルベロ様。見てください、この壁変なんですよ、通れなくなっています!」
ケルベロちゃんは無言でメィルの鳩尾にパンチを撃ちこむ。クリティカル発生、メィルに8909700ダメージ中、スキル効果により999ダメージ。状態異常:振動状態になりました。
メ「げふぅ、き、急に何をするん、ですか、ケルベロ様!」
ケ「このドアホ! その結界はラヴィ様にわざわざ張っていただいたものだぞ!」
メ「えぇ!? 知りませんでした!」
ケ「普通に入口に行けば案内が書いてある! はぁ、こっちに来い。」
メィルはフロントの奥でケルベロちゃんにこってりと怒られた。
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