せいとかいるいじろく#9

「そう言えば、さやちゃんにお土産を持って来ていたのを忘れていた」

 海パイセンはここから話が切り替わっていることに気付いているのではないかと思ってしまうほど唐突にそう言いました。

「このロゴは……ユグドラシルの『』ですね」

「やっぱり、さやちゃんは知っていたか」

「もっちのろんですよ~ むしろパイセンがこのお店を知っていたことに驚きです」

「俺も美沙に誘われて初めて行ったからな」

 パイセンは完全に回想に入る準備が整っていました。では、ご要望にお応えして回想スタート!




 これはまだパイセンが生徒会長と呼ばれていた頃。

「あれ? こんな所で奇遇だね」

「よう、買い物か?」

「うん、茶葉を買いに」

 毎日のように顔を合わせているというのに、普段と出会う場所が異なるだけでパイセンと美沙先輩は妙によそよそしい態度になっていました。

「じゃ、じゃあ俺はこれで」

 恥ずかしいことにパイセンはそう告げて美沙先輩の前を立ち去ろうとしました。ですが、そんな事は神様とさやちゃんが許す訳ありません。

「グ~」

 聞き間違いとは思えないほどはっきりと鳴った腹の音は美沙先輩のお腹から発せられました。

「美沙、腹減っているのか?」

「うん、ごめん」

 さやちゃんならパイセンのお腹を鳴らせるところなのに、美沙先輩のお腹を鳴らして美沙先輩を辱めた神様には怒りがこみ上げてきますが、パイセンの足を止めさせたのはグッチョブでした。

「昼飯まだなら一緒にどうだ?」

「良いの?」

 上目づかいでそう尋ねる美沙先輩に『やっぱりだめ』なんて選択を出来る勇気がパイセンにあるはずもなく、

「もちろん」

 そう答えました。

「何を食べようか?」

 パイセンはありきたりかつ返答に困る質問を美沙先輩に投げかけました。

「ちょっと行ってみたいと思っていたお店があるんだけど、良いかな?」

 返答に困る質問をサラリと答えた美沙先輩がそう言ってパイセンを連れて行ったのが冒頭に名前が出てきたピッツァ屋さんの『』でした。




 回想終了。

「ピッツァはあの時に初めて食べたがなかなか美味かった」

「パイセンがそこまで評価するお店のピッツァですか~ 期待値があがりますね」

「じゃあ、ちょっと切り分けてくるよ。台所借りるな」

「どうぞご自由に~」

 パイセンが席を離れてしまったので今回の類似録はここまでにしましょう。今回聞きたかった美沙先輩との未公開話も想像していなかった形で聞けたのでさやちゃん的にOKです。


 それでは最後にいつもの行きますよ。ほら、皆さん集まって。せ~の。ばっは~。

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